世界の作業療法の定義からみえる“作業”の重要性【日本、アメリカ、カナダの違い】

講座

作業療法の定義をきちんと知ることは、作業療法の可能性を広げるためには大前提として必要なことって思っています。
今回はこの作業療法の定義について世界の作業療法から“作業”について考えてみます。

定義を知ることの重要性

そもそもなぜ“定義”についてしっかりと理解する必要があるのでしょうか?

そもそも”定義”には…
ある概念内容・語義や処理手続をはっきりと定めること。それを述べたもの。
…という説明があります。

たしかにこれは理解できます。

なぜ定義が必要?

ではいったいなぜ定義が必要なのでしょうか?

これは端的に言えば…
その物事における矛盾を生じないようにするため
…という目的があるからになります。

作業療法の定義が定まっていなければ、10人いたら10通りの“作業療法”になってしまい、その母数が増えれば増えるほど異なる部分が大きくなり、結果として破たんしてしまう。
そういったことを防ぐため…と解釈しています。

“定義づけ”も実は”作業”

実は、”物事を定義することも一つの作業”としてみなされます。

円滑なコミュニケーションを図るため、ある言葉の正確な意味や用法について共通認識を抱くために行われる作業

こういう意味もあるようです。
つまり、作業療法士は自分の生業である作業療法の定義をしっかりと理解することが重要になってくるってことです。

各国の作業療法の定義について

では本題。
各国の作業療法の定義についてです。

日本作業療法士協会(JAOT)

日本の作業療法士協会では、次のように定義しています。

作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.
作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.

2018年に国内の作業療法の定義が改訂されて、改めて作業療法士が活躍できる領域が広がったような印象を受けます。

世界作業療法士連盟(WFOT)

世界作業療法士連盟(WFOT)では2012年に次のように定義しています。

Occupational therapy is a client-centred health profession concerned with promoting health and well being through occupation.
作業療法は、健康の促進と作業を通した幸福に関わるクライアント中心の医療専門職である。

The primary goal of occupational therapy is to enable people to participate in the activities of everyday life.
作業療法の主な目的は、人々が日常生活の活動に参加できるようにすることである。

Occupational therapists achieve this outcome by working with people and communities to enhance their ability to engage in the occupations they want to, need to, or are expected to do, or by modifying the occupation or the environment to better support their occupational engagement.
作業療法士は人々や地域社会と協力して、意欲のある作業、必要な作業、あるいは期待されている作業に従事する能力を向上させるか、作業や環境を変更しすることで支援する。

支援内容に“クライアントの能力を向上させること”だけでなく、“作業や環境を変更すること”という代替的アプローチによる支援をしっかりと定義としているのが理解しやすいですね!

米国作業療法士協会(AOTA)

米国作業療法士協会(AOTA)ではどのように定義しているのでしょうか?

Occupational therapy is the only profession that helps people across the lifespan to do the things they want and need to do through the therapeutic use of daily activities (occupations)
作業療法は、生涯にわたる人々が日常の活動(作業)を治療的に使用することを通して、彼らが望み、必要性が高い活動を支援する唯一の職業である

Occupational therapy practitioners enable people of all ages to live life to its fullest by helping them promote health, and prevent—or live better with—injury, illness, or disability.
作業療法施術者は、健康を増進し、けが、病気、または障害を有することを予防し、よりよい生活を送ること支援することによって、すべての年齢の人々がよりよい人生を送ることを可能にする

Common occupational therapy interventions include helping children with disabilities to participate fully in school and social situations, helping people recovering from injury to regain skills, and providing supports for older adults experiencing physical and cognitive changes. Occupational therapy services typically include:
一般的な作業療法の介入には、「障害のある子供が学校や社会の状況に完全に参加できるように支援すること」、「スキルを取り戻すために怪我から回復することへの支援」、「身体的および認知的変化を経験する高齢者に対する支援」などが含まれる

Occupational therapy practitioners have a holistic perspective, in which the focus is on adapting the environment and/or task to fit the person, and the person is an integral part of the therapy team. It is an evidence-based practice deeply rooted in science.
作業療法施術者は俯瞰的な視点を持っており、その中で焦点は環境や課題を人に合うように適応させることにあり、治療チームの不可欠的要素である。それは科学に深く根ざした証拠に基づく実践である

AOTAの公式サイトより引用しています。
“予防”というワードが入っていることが、非常に先駆的な印象を受けます。

カナダ作業療法士協会(CAOT)

カナダ作業療法士協会(CAOT)ではどうでしょうか?

作業療法は作業とクライアント中心の視点、クライアントが有意味であるとした作業遂行目標を達成すえうために、作業療法士とクライアントとが協業する。

CAOTの公式サイトからはうまく見つからなかったため、手元にあった基礎作業学のテキストより抜粋。
COPMを生んだカナダですから、“クライアント中心”を前に出している印象を受けます。

まとめ

今回は作業療法の定義について世界の作業療法の視点から解説しました。

言い回し、文言はもちろんそれぞれ違いますが、共通するのって…

  • 作業療法の治療的手段はやっぱり“作業”
  • 作業療法の目的はクライアントの日常生活に必要だったり、求める作業を可能にすること

…なんだろうなって思いました。
結局、作業療法士は、
『”作業”に始まり”作業”に終わる』
ってことでしょうね。

生活は様々な”作業”の積み重ね、連携で成立しているって考え方だよね!
作業療法士はこの”作業”を理解し、上手に利用する必要があるでしょうね!

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