関節可動域測定(ROM-T) – 目的・方法・注意点・基本軸や移動軸・参考可動域角度について

関節可動域測定(ROM-T) - 目的・方法・注意点・基本軸や移動軸・参考可動域角度について 検査

身体障害領域のリハビリテーション医療の現場では、クライアントの関節可動域の角度についての評価を求められることが多くあります。
今回はこの関節可動域(ROM)測定の目的や方法、基本軸や移動軸、そして参考可動域角度などについて解説します。


関節可動域(ROM)とは

関節可動域(Range of motion:ROM)とは、四肢の関節が稼働できる範囲…の意味になります(そのままですが)。
身体機能に障害を持ち、運動能力の低下とともに関節の可動域(ROM)が制限されてしまいます。

ROM制限はADLの阻害因子になる

ROMが制限され、関節拘縮が生じることで日常生活活動(ADL)が障害されてしまいます。
高齢者の場合ですと外出機会や社会参加機会の減少、そして閉じこもりの原因になる場合もあります。

ROM制限の原因って?

では、ROMを制限してしまう原因とはどんなものがあげられるのでしょうか?
自動運動における運動域の制限が生じる主なものとしては…

  • 拘縮や強直
  • 筋力の低下
  • 運動時の痛みの存在
  • 表在、深部などの感覚障害
  • 意欲や指示理解力の低下

…といったものがあげられます。

ROMの目的とは?

ROMとは言ってもその目的は大きく2つに大別されます。

  • 関節可動域測定(ROM-T):被験者の関節可動域を測定する評価として
  • 関節可動域訓練(ROMex):制限が生じた関節の可動域を維持・拡大する治療として

ここでは評価としての関節可動域測定(ROM-T)について説明します。

ROM-T(ROMテスト・ROM測定)の目的

ROM測定の目的としては、以下の6点があげられます。

  • 関節運動の制限部位と運動について知る
  • 制限の程度について知る
  • 制限の原因、理由について知る
  • 治療計画立案の資料とする
  • 治療効果判定の資料とする
  • その他(クライアントの意欲付けの資料etc)

関節可動域測定(ROM-T)の実施手順について

ROM-Tにおける手順としては次のようになります。

  • 被験者への説明
  • 骨示評点、軸心の確認
  • 他動的に可動する
  • 角度を測定する
  • 記録用紙に記録する

以下にそれぞれ解説します。

被験者への説明

被験者に説明し、不安を取り除くとともに理解と協力を求めます。

骨示評点、軸心の確認

測定する際は、測定部分を露出し骨軸選定(固定軸、可動軸)の基準となる骨示評点および軸心の確認を行います。

他動的に可動する

被験者にはリラックスした状態を指示し、測定関節の近位部を検者の手で固定し、遠位部を安定した状態で保持、他動的にゆっくり可動します。

角度を測定する

運動開始位置と可動最終位置を確認し、固定軸と可動軸に角度系の軸を肢節の外側により当ててそれぞれの角度を測定します。

記録用紙に記録する

測定した角度を記録用紙に記入し記録します。
記録の方法として、ます被験者の氏名、検査者の氏名、計測日の記入から行います。
測定結果の記録では、始発肢位が0°にない場合はその旨を記録し、制限されている場合はマイナスで表示します。

測定角度の記録は一般には5°単位で表示されます。

また、可動域の制限で筋緊張の異常更新による場合は、痙性(spasticity)の“S”の表示、痛みによる場合は疼痛(pain)の“P”の表示で状態を記録します。
加えて浮腫や変形、拘縮や強直の存在などについても記録を行います。

測定時の注意について

関節可動域の測定時の注意としては、

  • 痛みの有無の確認とその種類
  • 炎症の有無

…などについては注意深く確認を行います。
加えて、被験者の体位の安定性を保持すること、不安や疲労感の減少に努める必要があります。

上肢のROM測定について

肩甲帯

運動方向 参考可動域角度
屈曲 20
伸展 20

基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:頭頂と肩峰を結ぶ線

運動方向 参考可動域角度
拳上 20
下制 10

基本軸:両側の肩峰を結ぶ線
移動軸:肩峰と胸骨上縁を結ぶ線

運動方向 参考可動域
屈曲(前方拳上) 180
伸展(後方拳上) 50
外転(側方拳上) 180
内転 0

基本軸:肩峰を通る床への垂直線
移動軸:上腕骨

運動方向 参考可動域角度
外旋 60
内旋 80

基本軸:肘を通る前額面への垂直線
移動軸:尺骨

運動方向 参考可動域角度
水平屈曲 135
水平伸展 30

基本軸:肩峰を通る矢状面への垂直線
移動軸:上腕骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲 145
伸展 5

基本軸:上腕骨
移動軸:橈骨

前腕

運動方向 参考可動域角度
回内 90
回外 90

基本軸:上腕骨
移動軸:手指を伸展した手掌面

運動方向 参考可動域角度
屈曲(掌屈) 90
伸展(背屈) 70

基本軸:橈骨
移動軸:第2中手骨

運動方向 参考可動域角度
橈屈 25
尺屈 55

基本軸:前腕の中央線
移動軸:第3中手骨

母指

運動方向 参考可動域角度
橈側外転 60
尺側内転 0
掌側外転 90
掌側内転 0

基本軸:示指(橈骨の延長上)
移動軸:母指

運動方向 参考可動域角度
屈曲(MCP) 60
伸展(MCP) 10

基本軸:第1中手骨
移動軸:第1基節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(IP) 80
伸展(IP) 10

基本軸:第1基節骨
移動軸:第1末節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(MCP) 90
伸展(MCP) 45

基本軸:第2~5中手骨
移動軸:第2~5基節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(PIP) 100
伸展(PIP) 0

基本軸:第2~5基節骨
移動軸:第2~5中節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(DIP) 80
伸展(DIP) 0

基本軸:第2~5中節骨
移動軸:第2~5末節骨

運動方向 参考可動域角度
外転  
内転  

基本軸:第3中節骨延長線
移動軸:第2~5指軸

下肢のROM測定

運動方向 参考可動域角度
屈曲 125
伸展 15

基本軸:体幹と並行な線
移動軸:大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)

運動方向 参考可動域角度
外転 45
内転 20

基本軸:両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線
移動軸:代替中央線(上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線)

運動方向 参考可動域角度
外旋 45
内線 45

基本軸:膝蓋骨より下ろした垂直線
移動軸:下腿中央線(膝蓋骨中心より足関節内外果中央を結ぶ線)

運動方向 参考可動域角度
屈曲 130
伸展 0

基本軸:大腿骨
移動軸:腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)

運動方向 参考可動域角度
屈曲(底屈) 45
伸展(背屈) 20

基本軸:腓骨への垂直線
移動軸:第5中足骨

足部

運動方向 参考可動域角度
外がえし 20
内がえし 30

基本軸:下腿軸への垂直線
移動軸:足底面

運動方向 参考可動域角度
外転 10
内転 20

基本軸:第1,第2中足骨の間の中央線
移動軸:第1,第2中足骨の間の中央線

母指(趾)

運動方向 参考可動域角度
屈曲(MTP) 35
伸展(MTP) 60

基本軸:第1中足骨
移動軸:第1基節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(IP) 60
伸展(IP) 0

基本軸:第1基節骨
移動軸:第1末節骨

足指

運動方向 参考可動域角度
屈曲(MTP) 35
伸展(MTP) 40

基本軸:第2~5中足骨
移動軸:第2~5基節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(PIP) 35
伸展(PIP) 0

基本軸:第2~5基節骨
移動軸:第2~5中節骨

運動方向 参考可動域角度
屈曲(DIP) 50
伸展(DIP) 0

基本軸:第2~5中節骨
移動軸:第2~5末節骨

頸部、体幹のROM測定について

頸部

運動方向 参考可動域角度
屈曲(前屈 )60
伸展(後屈 )50

基本軸:肩峰を通る床への垂直線
移動軸:外耳孔と頭頂を結ぶ線

運動方向 参考可動域角度
回旋 60

基本軸:両側の肩峰を結ぶ線への垂直線
移動軸:鼻梁と後頭結節を結ぶ線

運動方向 参考可動域角度
側屈 50

基本軸:第7頸椎棘突起と第1仙椎の棘突起を結ぶ線
移動軸:頭頂と第7頸椎棘突起を結ぶ線

胸腰部

運動方向 参考可動域角度
屈曲(前屈) 45
伸展(後屈) 30

基本軸:仙骨後面
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線

運動方向 参考可動域角度
回旋 40

基本軸:両側の後上腸骨棘を結ぶ線
移動軸:両側の肩峰を結ぶ線

運動方向 参考可動域角度
側屈 50

基本軸:ヤコビー線の中点にたてた垂直線
移動軸:第1胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線

関節構造と運動構成要素について

自動的な関節運動が滑らかに正常範囲で行われるには、

  • 関節の構築学的因子
  • 作用筋の収縮力
  • 拮抗筋の伸展性

…の3つを有していることが基本的な条件となります。

まとめ

今回は、関節可動域測定(ROM-T) の目的や注意点、方法について解説しました。

関節可動域測定は身体障害領域のリハビリテーションでも基本的な評価になります。
しっかりとその評価方法、測定する目的や意味を把握したうえで、臨床や現場で役立たせる必要があるでしょうね。

もしこの記事に修正点やご意見がございましたら、お手数ですがお問い合わせまでご連絡ください。 皆様の貴重なフィードバックをお待ちしております。
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