作業療法士としてリハビリテーション医療に関わっていると、非常に障害を持つ人の社会参加について考えさせられます。
その方法の一つに、eスポーツが選択肢としてあげられると思うんです。
今回はオリンピック種目にもなるかもしれないと今話題のe-スポーツを、作業療法士の視点で解説します。
eスポーツとは?
“eスポーツ”とは“エレクトロニック・スポーツ”の略で、複数のプレイヤーがコンピューターゲーム(ビデオゲーム)上でスポーツや競技として対戦する一つのゲームの分野といわれています。
海外の大会ではすでに高額な賞金がかけられるものものあり、年収1億円のプロゲーマーも現れています。
人口について
日本国内では360万人、世界の競技人口は1億3000万人以上とされています。
eスポーツが障害者の社会参加に成り得る理由
ではこのeスポーツが障害者の社会参加に成り得る理由について触れたいと思います。
結論から言えば…
- 移動障害の制限がない
- 選択肢が広い
- 年齢、体力、性別の差を問わない
- コミュニケーションがとりやすい
- コミュニティが築きやすい
…などがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。
移動障害の制限がない
eスポーツはオンラインにつないだビデオゲームによるものなので、操作画面と操作するデバイスさえあれば成立します。
そのため特に歩行といった移動手段は必要ありません。
さらにはその環境設定次第ではベッド上で寝たままでも行うことができるので、移動や姿勢保持の制限なく実施可能です。
選択肢が広い
最近発売されたNintendo Switchの“スプラトゥーン2”をはじめとしたビデオゲームソフトはどんどんオンラインゲームとしての役割も担ってきています。
すでに多くのタイトルがオンラインゲーム化しているので自分に合った、自分が楽しいと思えるソフトを活用できる選択肢が広いことになります。
年齢、体力、性別の差を問わない
障害の有無だけでなく、年齢、体力、性別の垣根もeスポーツの世界では超えていると思います。
極端に言えばその「実力」だけが問われる世界でもあるので、障害を持つ人の自己表現としてもかなりフラットな世界になっていると考えられます。
コミュニケーションがとりやすい
eスポーツ上でのコミュニケーションはチャットがメインになるためキーボード入力さえ可能ならコミュニケーションとして成立することができます。
コミュニティが築きやすい
eスポーツへの参加を軸に、自身のSNSやウェブサイトといったものを組み合わせることで十分自分のコミュニティを構築することができます。
しかもオンライン上のため、距離の制約もないことから世界規模でのコミュニティ構築の可能性も秘めていると言っても過言ではありません。
これはファミコン世代が慣れ親しんだ「スーパーマリオ」や「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」といった“仲の良い友人たち数人”と楽しむツールの規模をはるかに超えています。
障害者によるeスポーツの実例
では実際でどのような障害者の方がeスポーツで活躍しているのでしょうか?
数例ですが国内外合わせてご紹介します。
Brolylegs氏
人気格闘ゲームである『ストリートファイター』の大会で多くの成績を残しているプレイヤーです。
その操作方法は頬と舌でコントローラーを使用するのですが…動画を見る限り特にコントローラーにカスタマイズは加わってないようにみえます!!!
Kotwicz氏
Kotwicz氏は足でのみパッド操作を行うプレイヤーです。
Youtubeでの動画投稿やFacebookページの開設など、オンラインコミュニティを多く築いている印象を受けます。
市川脩 氏
脳性麻痺である市川氏は四肢と体幹障害を有していますが、趣味のゲームが攻してアメリカのラスベガスでのeスポーツ大会に招待されたこともあるとのこと。
操作方法は顎と頬を使ってのパッド操作のようですね!
参考記事:Open Session
今後の課題
e-スポーツの普及に伴うことで、障害を持つ人の社会参加、自己実現の機会が増えることは事実でしょうけど、その分様々な課題が顕在化してくると思います。
操作のための環境整備、他の社会参加資源とのバランスなど物理的、社会的な課題が見えてくるのかもしれません。
オリンピック競技に決定されるという点からも、それは障害の有無に関わらず広い範囲での課題とも言えます。
まとめ
障害を持つ人の社会参加、自己実現の一つの選択肢として“e-スポーツ”に注目して今回ご紹介してみました。
まだまだ未開拓な分野ではありますし、様々な課題もあるかもしれませんが、この資源とプラットフォームは非常に魅力的と感じています!