JST版活動能力指標 – 高齢者が自立し活動的な生活能力を評価する指標

検査

高齢者のAPDLやIADL、社会参加を評価する方法の一つに『老研式活動能力指標』があります。
現在でも広く使われている指標ではありますが…最近の「アクティブシニア」といった活動的な高齢者の生活スタイルにまで網羅できているかというと少し難しいという指摘もされています。

そこで今回は『現代版老研式活動能力指標』とでも言える『JST版活動能力指標』について解説します。

JST版活動能力指標について

国立長寿医療研究センター研究所の鈴木隆雄氏と、東京都健康長寿センター研究所のスタッフ、そして福島県立医科大学の岩佐一氏によってつくられた指標です。

目的

老研式活動能力指標は現代でも広く使われている標準的な指標であるものの、発表されたのが1986年と30年近く前のもののため、携帯電話やメールといった現代では普通のツールの使用や、振り込め詐欺といった現代社会的な問題には対応しきれていない“古い指標”である点が指摘されていました。
またライフスタイルの多様化と健康寿命の長寿化といった点からも新しい指標が求められるようになったことから、JST版活動能力指標がつくられたようです。

つまり老研式活動能力指標を基盤にした、現代と近い将来の日本の「一人暮らし高齢者が自立し活動的に暮らす」ための能力を測定する指標…ということになります!

老研式活動能力指標との違い

老研式活動能力指標自体はLawtonが提唱した「生命維持、知覚、認知、身体的自立、手段的自立、状況対応、社会的役割」という高齢者の生活機能についての7段階の階層モデルを基につくられています。
このうち「身体的自立、手段的自立、状況対応」を中心に作られていて、「社会的役割」までは含まれていませんでした。

採点方法

JST版活動能力指標は16の質問項目で構成されていて、それぞれは

  • 新機器利用
  • 情報収集
  • 生活マネジメント
  • 社会参加

…の4つの分類に分けられています。

それぞれの質問項目に対して「はい(1点)」「いいえ(0点)」のどちらかを配点していき、合計16点満点とされています。
もちろん得点が高いほど各領域の活動能力が高く、積極的に活動していると判断されます。

JST版活動能力指標における4つの分類

JST版活動能力指標においての4つの分類については以下の通りです。

新機器利用

生活を送る上で必要な新しい機器を使いこなす能力についての質問になります。

  • 携帯電話を使うことができますか?
  • ATMを使うことができますか?
  • ビデオやDVDプレイヤーの操作ができますか?
  • 携帯電話やパソコンのメールができますか?

情報収集

よりよい生活を送るため自ら情報収集し活用する能力についての質問になります。

  • 外国のニュースや出来事に関心がありますか?
  • 健康に関する情報の信ぴょう性について判断できますか?
  • 美術品、映画、音楽を鑑賞することがありますか?
  • 教育、教養番組を視聴していますか?

生活マネジメント

自分や家族、周辺の人々の生活を見渡し、管理する能力についての質問になります。

  • 詐欺、ひったくり、空き巣等の被害にあわないように対策をしていますか?
  • 生活のなかでちょっとした工夫をすることがありますか?
  • 病人の看病ができますか?
  • 孫や家族、知人の世話をしていますか?

社会参加

地域の活動に参加し、地域での役割を果たす能力についての質問になります。

  • 地域のお祭りや行事などに参加していますか?
  • 町内会・自治体で活動していますか?
  • 自治体やグループ活動の世話役や役職を引き受けることができますか?
  • 奉仕活動やボランティア活動をしていますか?

全国標準値

JST版活動能力指標の合計点と4つの分類それぞれの標準値については以下の通りになります。

全体 65~74歳男性 65~74歳女性 75~84歳男性 75~84歳男性
JST版活動能力指標合計 9.7(4.2) 11.0(3.9) 10.6(3.8) 8.9(4.4) 7.7(4.2)
新機器利用 2.3(1.5) 2.9(1.3) 2.6(1.3) 2.0(1.5) 1.4(1.4)
情報収集 2.9(1.3) 3.1(1.2) 3.1(1.2) 2.8(1.3) 2.5(1.5)
生活マネジメント 2.8(1.2) 3.0(1.2) 3.1(1.1) 2.5(1.3) 2.5(1.3)
社会参加 1.7(1.6) 2.0(1.6) 1.8(1.5) 1.6(1.6) 1.2(1.4)

*( )内は標準値

老研式活動能力指標の代わりに使用できる?

しかし、こうなると「もう“老研式活動能力指標”は古いからすべての調査は“JST版活動能力指標”で行おう!」となってしまうのは早合点です。
公式でも、“JST版活動能力指標”のみで使用することは薦めておらず、“老研式活動能力指標”と併用することで対象者の生活能力を幅広く評価することができると述べています。

ライフスタイルの多様化によって、高齢者の生活能力の評価の方法も変化していくからね!
ただし昔も今も変わらない“基本的な項目”は抑えつつ、時代に合わせた評価項目を追加していく…という感覚が必要なのかもしれませんね!

参考

関連文献

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