頚椎の神経根や椎間板の異常を評価する手技の一つである”ジャクソンテスト”。
本記事ではこの目的や方法、注意点などについて解説します。
ジャクソンテストとは?
ジャクソンテスト(Jackson’s test)は、神経学的な検査手法の一つで、頚椎の神経根や椎間板の異常を評価するために使用されます。
具体的には、患者が特定の動作や姿勢をとった際に生じる症状や痛みを観察し、これをもとに頚椎の問題を特定するのが目的です。
一般的には、頚椎の病態や損傷を確認するために行われるテストであり、椎間板ヘルニアや頚椎症などの疾患を診断する際に参考とされます。
患者は異なる動作や姿勢をとり、それによって引き起こされる症状や痛みの有無、程度を注意深く評価します。
ジャクソンテストは、他の検査と併用されることがあり、診断や治療の計画に重要な情報を提供することがあります。
ただし、このテストだけでなく、他の臨床的な情報や画像診断(MRIなど)なども組み合わせて総合的な評価が行われます。
目的
ジャクソンテストの目的は、主に頚椎(首の部分)の神経根や椎間板に関連する異常を評価することです。
この検査は、患者が特定の動作や姿勢をとった際に生じる症状や痛みを観察することを通じて、頚椎の問題を特定し、診断に寄与します。
以下に、ジャクソンテストの主な目的である…
- 頚椎の椎間板ヘルニアの評価
- 頚椎症の診断
- 神経根の異常の検出
- 治療計画の立案
…についてそれぞれ説明します。
頚椎の椎間板ヘルニアの評価
ジャクソンテストは、椎間板ヘルニアと呼ばれる状態を評価するのに役立ちます。
椎間板ヘルニアは、椎間板から脱出した組織が神経根を圧迫し、痛みや症状を引き起こす可能性があります。
頚椎症の診断
頚椎症は、頚椎の変性や損傷に関連する疾患の総称です。
ジャクソンテストは、特定の動作や姿勢によって引き起こされる痛みを通じて、頚椎症の可能性を評価します。
神経根の異常の検出
頚椎の神経根に圧迫や刺激が生じている場合、特定の動作や圧迫によって痛みや症状が誘発されることがあります。
ジャクソンテストは、これらの神経根の異常を検出するのに有用です。
治療計画の立案
ジャクソンテストの結果をもとに、セラピストは適切な治療計画を策定する際の重要な情報を得ることができます。
患者に適した治療法やリハビリテーションプログラムの選択に役立ちます。
方法
ジャクソンテストの一般的な方法としては…
- 立位or座位にする
- 頚椎の動作を指示する
- 圧迫テストを行う
- スパーリングテストを行う
- 検査結果を評価する
…となります。
以下にそれぞれ解説します。
立位or座位にする
患者は立位または座位になります。
初めに、患者の基本的な姿勢が観察されます。
頚椎の動作を指示する
セラピストは、患者に対して頚椎のさまざまな動作を行うよう指示します。
これには、首を前に倒したり、後ろに仰け反らせたり、横に傾けたりする動作が含まれます。
これにより、特定の動作で痛みや症状が引き起こされるかどうかが観察されます。
圧迫テストを行う
セラピストは患者の頭を押さえ、頚椎に圧力をかけます。
これによって、椎間板ヘルニアや神経根の圧迫によって生じる痛みや症状が引き起こされるかどうかが確認されます。
スパーリングテストを行う
スパーリングテストもジャクソンテストの一部として行われることがあります。
これは、患者が立位で片足で立ち、反対側の腕を上げる動作です。
この動作によって頚椎にかかる負担が増え、痛みや症状が誘発されることがあります。
検査結果を評価する
セラピストは患者の反応を注意深く観察し、特定の動作や圧迫によって引き起こされる症状や痛みの有無、程度を評価します。
これによって、椎間板ヘルニアや頚椎症などの疾患の可能性が示唆されることがあります。
ジャクソンテストの結果について
ジャクソンテストの結果は、患者の特定の動作や姿勢によって引き起こされる症状や痛みに基づいて評価されます。
これらの結果は、頚椎や神経根に関連する異常や問題を示唆するものであり、診断や治療計画の一部として用いられます。
一般的なジャクソンテストの結果には以下のようなパターンがあります。
陽性の所見
特定の動作や姿勢によって症状や痛みが引き起こされる場合、「陽性(+)の所見」と言います。
これは、頚椎や神経根に問題がある可能性があり、検査結果が臨床的に意味のあるものであることを示唆します。
陰性の所見
特定の動作や姿勢によって症状や痛みが引き起こされない場合、「陰性(-)の所見」と言います。
これは、特定の動作や姿勢が頚椎に対して問題を示さない可能性があることを示唆します。
注意が必要な所見
時には、検査結果が一般的な陽性または陰性の枠組みに当てはまらない場合があります。
この場合、「注意が必要な所見」とされ、検査結果が他の臨床情報と組み合わせて判断される必要があります。
診断や治療への貢献
ジャクソンテストの結果は、頚椎に関連する潜在的な問題や病態を特定するための手がかりとなります。
セラピストはこれらの結果を総合的に評価し、最終的な診断や治療計画の立案に利用します。
注意点
では、ジャクソンテストを行う上での注意点とはなにがあげられるでしょうか?
主なものとしては…
- 患者の詳細な病歴の把握すること
- 患者の協力を得ること
- 検査の適応と限界を理解すること
- 検査中の安全性に注意すること
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
患者の詳細な病歴の把握すること
患者の詳細な病歴や既往症について十分な情報を得ることが重要です。
これによって、特定の動作や姿勢が引き起こす症状や痛みの原因を理解しやすくなります。
患者の協力を得ること
患者は検査中にセラピストの指示に従い、正確な動作や姿勢をとる必要があります。
協力的で正確な情報を提供することが、検査の有効性を高めます。
検査の適応と限界を理解すること
ジャクソンテストには適応と限界があります。
すべての患者に対して適しているわけではなく、他の臨床情報と併用することが一般的です。
検査の結果は一つの要素であり、他の検査や臨床評価と合わせて総合的な判断が必要です。
検査中の安全性に注意すること
特に患者が不安定な状態や既知の重篤な症状を持っている場合には、検査の安全性を確保するために十分な注意が必要です。
必要に応じて追加のサポートやモニタリングが行われるべきです。
ジャクソンテストとスパーリングテストとの違いについて
ジャクソンテストとスパーリングテストは、ともに頚椎の検査手法であり、神経根や椎間板の異常を評価するために用いられますが、それぞれ異なるテストです。
以下に、両者の主な違いについて解説します。
項目 | ジャクソンテスト | スパーリングテスト |
---|---|---|
検査の目的 | 頚椎の動作や姿勢によって引き起こされる痛みや症状の評価 | 片足で立ち上がりながら反対側の腕を上げる動作によって引き起こされる痛みや症状の評価 |
主な目的 | 椎間板ヘルニアや頚椎症などの疾患の診断 | 椎間板ヘルニアや頚椎症によって頚椎にかかる負担が増え、これによって症状が誘発されるか評価 |
検査の手順 | 頚椎の動作や圧迫テストなど | 片足で立ち上がりながら反対側の腕を上げる動作 |
検査の対象 | 頚椎の動作や姿勢 | 片足で立ち上がりながら腕を上げる動作 |
引き起こされる症状 | 動作や圧迫によって引き起こされる痛みや症状 | 片足立ちと腕の上げ下げによって生じる痛み |