棘上筋の機能評価方法の一つに“エンプティカン検査(Empty Can Test)”があげられます。
本記事ではこの検査の目的、検査方法、診断学的有用性について解説します。
エンプティカン検査とは?
エンプティカン検査(Empty Can Test)は、肩甲帯~肩関節の検査法の一つで、棘上筋の機能評価に用いられます。
この検査法の目的としてはは、棘上筋の断裂や損傷を調べるために行われます。
ジョブ検査(Jobe’s test)とも呼ばれる場合があります。
エンプティカン検査の検査方法
エンプティカン検査の方法ですが、次のようになります。
- 立位になり検査肢位をとる
- 上肢の遠位部に下方への力を加え、抵抗する
- 上肢の反応によって診断する
以下に詳しく解説します。
1.立位になり検査肢位をとる
被験者は立位姿勢になります。
そのまま検査肢位である…
- 肩関節肩甲骨面上90度拳上位・30度水平内転位・最大内旋位
- 肘関節伸展位
- 前腕最大回内位(母指を下に向ける)
…にします。
2.上肢の遠位部に下方への力を加え、抵抗する
検者は正面に立ち上肢の遠位部に下方への力を加えます。
被験者はそれに抵抗します。
その際、両側同時に力を加えますが、これは左右差を評価するためになります。
3.上肢の反応によって診断する
下方への力に対して…
- 「ガクッ」と力が抜ける場合:回旋筋腱板(特に棘上筋の全層)損傷
- ゆっくりと下に落ちてくる場合:棘上筋の部分損傷
…の可能性があります。
また、肩関節前外側面に痛みを訴える場合はインピンジメントの可能性があります。
エンプティカン検査の診断学的有用性
著者 | 信頼性 | 感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 |
---|---|---|---|---|---|
Villafance JH,et al(2015) | NR | 76 | 90 | 9.5 | 0.26 |
Micheroli R,et al(2015) | Kappa=0.36 | 81 | 55 | 1.80 | 0.35 |
Lasbleiz S,et al(2014) 棘上筋腱炎・痛み | NR | 100 | 12.1 | 1.14 | 0 |
棘上筋腱炎・筋力低下 | NR | 33.3 | 33.3 | 0.5 | 2 |
棘上筋全層損傷・痛み | NR | 90.5 | 11.1 | 1.02 | 0.86 |
棘上筋全層損傷・筋力低下 | NR | 80.9 | 61.1 | 2.08 | 0.31 |
Yuen CK,et al(2012) 棘上筋腱損傷 | NR | 43 | 71 | 1.5 | 0.8 |
回旋筋腱板全層損傷 | NR | 39 | 74 | 1.51 | 0.82 |
Alqunaee M,et al(2012) 筋力低下 | NR | 69 | 62 | 1.81 | 0.5 |
Ostor AJ,et al(2004) | Kappa=0.44-0.49 | NR | NR | NA | NA |
*NR:報告なし NA:該当なし
棘上筋は肩関節の安定にも働く筋だから、しっかりと評価する必要があるだろうね!
他の検査とも併用して包括的に評価する必要があるでしょうね!