肩関節不安定性への徒手的な検査方法のひとつとして“Relocation test”があげられます。
今回は、このRelocation testの目的や方法、診断学的有用性について解説します。
Relocation test（Fowler’s test）とは？
Relocation test（Fowler’s test）とは、肩甲上腕関節の前方不安定性の評価…の徒手検査法の一つになります。
Relocation test（Fowler’s test）の目的
Relocation testの目的としては…
肩関節の前方不安定性の評価
痛みの軽減の確認
インピンジメントの診断
…があげられます。
それぞれ解説します。
肩関節の前方不安定性の評価
Relocation test（Fowler’s test）は、肩関節が前方に不安定であるかを評価するために使用されます。
このテストでは、患者を仰向けにさせ、肩関節を90度に屈曲させた状態で外旋させます。
肩関節が前方に不安定な場合、この動作で痛みや違和感が現れることが多く、これが不安定性を示すサインとなります。
痛みがある状態で肩に後方から圧力を加えると痛みが軽減するため、不安定性が確認できます。
このテストは、スポーツなどで肩を酷使する人々に特に有用です。
痛みの軽減の確認
Relocation testは、肩関節の不安定性による痛みを特定する目的でも使用されます。
患者が肩の外旋動作を行った際に、肩の前方部分に痛みや不安感が生じる場合、肩関節の前方不安定性が疑われます。
このとき、上腕骨頭に対して後方から圧力を加えると、痛みや不安感が軽減する場合があります。
この現象は、前方に不安定な肩関節が一時的に安定することにより痛みが緩和されるためです。
痛みの軽減が確認された場合、不安定性の評価として重要な情報が得られます。
インピンジメントの診断
Relocation testは、肩関節のインピンジメント（挟み込み）症候群の診断にも役立つことがあります。
インピンジメント症候群は、肩の構造的な問題により、肩甲骨と上腕骨の間で筋肉や腱が挟み込まれる状態を指します。
テスト中に肩を外旋させた際に痛みが生じ、後方からの圧力によってその痛みが緩和される場合、インピンジメントが原因である可能性があります。
このテストは、肩の動きが制限され、特に上方挙上動作が困難な場合に、診断の一助となります。
Relocation testの検査方法
ここではRelocation testの検査方法について解説します。
検査の流れとしては次の通りになります。
- 肩関節90度外転位、肘関節90度屈曲位にする
- 検者は手関節を把持して肘を支える
- ゆっくりと肩関節を90度まで外旋させる
- 上腕骨頭に対し手掌で前方から後方へ力を加える
- 痛みや不安感が減少するかどうか確認する
以下に詳しく解説します。
1.肩関節90度外転位、肘関節90度屈曲位にする
被験者は背臥位の姿勢になります。
そして、肩関節90度外転位、肘関節90度屈曲位の肢位になります。
2.検者は手関節を把持して肘を支える
検者は被験者の手関節を把持して肘を支えるようにします。
この段階でも被験者に痛みや不安感がないかどうか確認します。
3.ゆっくりと肩関節を90度まで外旋させる
ゆっくりと肩関節を外旋させます。
被験者が不安感や痛みを訴えたら外旋をやめます。
4.上腕骨頭に対し手掌で前方から後方へ力を加える
被験者が不安感や痛みを訴えその位置で上腕骨頭に対し手掌で前方から後方へ力を加え、不安感が消失するか確認します。
5.痛みや不安感が減少するかどうか確認する
痛みや不安感が減少または消失すれば陽性となります。
Relocation testの診断学的有用性
Relocation testにおける診断学的有用性については次の通りになります。
| 著者 | 信頼性 | 感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 |
|---|---|---|---|---|---|
| van Kampen DA,et al（2013） | NR | 96.7 | 78 | 4.36 | 0.04 |
| Farber AJ,et al（2006） 痛み | NR | 30 | 90 | 3.02 | 0.77 |
| 不安感 | NR | 81 | 92 | 10.35 | 0.2 |
| Lo lk,et al（2004） 痛み | NR | 40.00 | 42.65 | 0.7 | 1.41 |
| 不安感 | NR | 31.49 | 100.00 | ∞ | 0.69 |
| 痛みまたは不安感 | NR | 45.83 | 54.35 | 1.00 | 1.00 |