クロスオーバー内転検査(Cross-body adduction test) – 目的・方法・注意点について

クロスオーバー内転検査(Cross-body adduction test) - 目的・方法・注意点について 検査

クロスオーバー内転検査(Cross-body adduction test)は、肩関節の痛みを調べるための検査方法の一つです。
本記事ではその目的、方法などについて解説します。


クロスオーバー内転検査とは?

クロスオーバー内転検査(Cross-body adduction test)は、肩鎖関節の損傷や病変を評価するための徒手検査の一つです。
Cross Body Adduction testやScarf testとも呼ばれています。

この検査では、患者の肩を内転させ、腕を反対側の肩に近づけるようにします。
この動作で肩鎖関節に特定のストレスをかけ、痛みが肩上部に生じた場合は陽性とされます。

主に肩鎖関節炎や関節損傷の診断に用いられ、肩の動きを支える重要な部位の問題を特定するのに役立つんだ!
肩の痛みが続く場合、この検査を通じて適切な治療方針を立てることが可能なんですね!

検査方法

ここではクロスオーバー内転検査の検査方法について解説します。
検査の流れとしては次の通りになります。

  1. 被験者は立位で検査肢位になる
  2. 肩関節を最終域まで水平内転させる
  3. 水平内転方向に圧迫を加える
  4. 痛みの有無について確認する

以下に詳しく解説します。

1.被験者は立位で検査肢位になる

クロスオーバー内転検査の第一段階では、被験者が立った状態で検査に入ります。
リラックスした姿勢を取り、肩や体に余計な緊張が入らないようにします。
肩の自然な位置を保つことで、検査時に正確な評価が可能となります。
検査側の肩を意識的にリラックスさせ、自然な状態を保つことが重要です。

これにより、検査中に起こる肩鎖関節へのストレスを正確に評価することができます。

2.肩関節を最終域まで水平内転させる

次に、検査者は被験者の腕を持ち、肩関節を内転させていきます。
この動きは、腕を胸の前で交差させるような動作で、肩関節が水平になるまで進めます。
最終域まで動かすことで、肩鎖関節に特定の負荷がかかり、異常がある場合には痛みが出やすくなります。
このステップでは、肩関節の柔軟性や可動域も観察されます。

内転の最終段階で特に肩鎖関節に注目し、痛みや異常の兆候を確認します。

3.水平内転方向に圧迫を加える

水平内転の動きが完了した後、検査者は軽い圧力を内転方向に追加します。
具体的には、被験者の肘や上腕部分に手を置き、さらに内転させるように圧迫を加えます。
この圧力により、肩鎖関節にさらなるストレスがかかり、炎症や損傷がある場合、痛みが明確に現れることが期待されます。
内転と圧迫の組み合わせにより、肩鎖関節の異常をより正確に検出することが可能です。

圧迫を適切な強度で行うことが重要です。

4.痛みの有無について確認する

圧迫後、被験者に痛みがあるかどうかを確認します。肩鎖関節周辺に痛みが生じた場合、クロスオーバー内転検査は陽性となります。
痛みがある場合は、その部位や痛みの強さについて詳しく質問し、肩鎖関節に問題があるかどうかを見極めます。
被験者の主観的な痛みの表現も重要であり、痛みの強さが軽度か中等度、または強いかを評価します。

この段階での正確な痛みの把握は、診断の質を左右します。

クロスオーバー内転検査は、肩鎖関節の損傷を評価する上で簡便かつ有効な検査方法なんだ!
ただ、この検査だけでは診断が確定できない場合もあるから注意だろうね!

注意点

クロスオーバー内転検査は、肩鎖関節の損傷を評価する上で重要な検査ですが、正確な診断のためにはいくつかの注意点があります。
ここでは…

  • 適切な姿勢を確認する
  • 過剰な圧迫を避ける
  • 痛みの有無を慎重に確認する
  • 被験者の反応を観察する
  • 検査環境を整える

…について解説します。

適切な姿勢を確認する

クロスオーバー内転検査を正確に行うためには、被験者が正しい姿勢を取っていることが重要です。
立位でリラックスした状態が必要で、肩や首に余計な力が入らないように注意します。
姿勢が崩れていると、肩鎖関節以外の部位に負荷がかかり、正確な診断が難しくなります。
検査者は、検査前に被験者が自然な姿勢を保っているか確認し、適切な姿勢を促すことが求められます。

これにより、肩鎖関節に適切なストレスをかけることが可能となります。

過剰な圧迫を避ける

クロスオーバー内転検査では、過剰な圧力をかけないように注意が必要です。
適度な圧迫で十分に肩鎖関節の状態を評価できるため、無理に強い圧力を加える必要はありません。
過剰な圧迫は被験者に不必要な痛みを引き起こす可能性があり、診断結果を歪める恐れもあります。
適切な圧力を維持するためには、被験者の反応を注意深く観察しながら行うことが大切です。

これにより、被験者に過度の負担をかけずに検査が行えます。

痛みの有無を慎重に確認する

検査中に痛みが発生する場合、その部位や程度を正確に確認することが重要です。
特に肩鎖関節付近に痛みが生じた場合、クロスオーバー内転検査が陽性である可能性があります。
痛みの場所が肩鎖関節から離れている場合や、痛みが軽度であれば、他の要因が関与している可能性も考慮する必要があります。
被験者に痛みの強さや性質を具体的に尋ねることで、診断の精度が向上します。

痛みの確認は、検査の結果を適切に解釈するための重要なステップです。

被験者の反応を観察する

クロスオーバー内転検査を行う際、被験者の反応を観察することが不可欠です。
検査中や検査後に、被験者が痛みや不快感を訴える場合、すぐに検査を中止し、状態を再評価します。
強い痛みや異常な反応が見られた場合には、他の診断法や治療法を検討することが必要です。
反応を観察することで、検査が被験者に過度な負担をかけていないか確認できます。

安全かつ正確な検査を行うためには、常に被験者の反応に目を配ることが重要です。

検査環境を整える

クロスオーバー内転検査は、被験者がリラックスできる環境で行うことが望ましいです。
周囲が騒がしいと被験者が緊張し、肩や身体に余計な力が入り、正確な検査結果が得られにくくなります。
静かで落ち着いた環境を整え、被験者が安心して検査に臨めるように配慮します。
適切な検査環境は、被験者の緊張を和らげ、より信頼性の高い結果を得るために重要です。

また、検査前にリラックスできるような声かけや説明を行うと効果的です。

クロスオーバー内転検査は、肩鎖関節の損傷を評価する上で有用な検査だけど、注意点を守り、他の検査結果や患者さんの症状を総合的に判断することが重要なんだ!
また、検査中に生じる痛みの程度や部位を慎重に評価し、必要に応じて他の検査と併用することで、より正確な診断が可能となるんですね!

クロスオーバー内転検査の診断学的有用性

Cross-body adduction testにおける診断学的有用性については次の通りになります。

著者 信頼性 感度 特異度 陽性尤度比 陰性尤度比
Micheroli R,et al(2015) Kappa=0.40 38 96 9.50 0.65
Cadogan A,et al(2013) NR 64 26 0.86 1.39
van Riet RP(2011) NR 67 NR NA NA
Park HB,et al(2005) NR 22.5 82 1.25 2.67
Chronopoulos E,et al(2004) NR 77 79 3.67 0.29

NR:報告なし NA:該当なし

クロスオーバー内転検査は自分でも行える簡便な検査の一つだろうね!
肩のセルフチェックにも役立たせることができるのだろうね!

関連文献

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

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