棘上筋損傷や回旋筋腱板損傷の徒手的評価として“フルカンテスト(Full can test)”があげられます。
今回は、この検査方法や診断学的有用性について解説します。
フルカンテストの目的について
冒頭でも触れたように、フルカンテストの目的としては…
- 棘上筋の損傷
- 回旋筋腱板の損傷
…に対して行われる徒手的評価となります。
フルカンテストの検査方法
ここでは、フルカンテストの検査方法について解説します。
大まかな流れとしては次のようになります。
- 被験者を立位にする
- 検査肢位(肩関節肩甲骨面上90度拳上位・30度水平内転位・45度外旋位・肘関節伸展位)にする
- 上肢の遠位部に下方への力を加え、被験者はそれに抵抗する
- 痛みの訴えや筋力低下について確認できたら陽性とする
以下に詳しく解説します。
1.被験者を立位にする
まず、被験者を立位姿勢にします。
2.検査肢位にする
被験者を検査肢位である…
- 肩関節肩甲骨面上90度拳上位
- 肩関節30度水平内転位
- 肩関節45度外旋位
- 肘関節伸展位
…にします。
3.上肢の遠位部に下方への力を加え、被験者はそれに抵抗する
検者は被験者の正面に立ち、上肢の遠位部に下方への力を加え、被験者はそれに抵抗します。
4.痛みの訴えや筋力低下について確認できたら陽性とする
その際、痛みの訴えや筋力低下について確認できたら陽性とします。
フルカンテストの診断学的有用性
著者 | 信頼性 | 感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 |
---|---|---|---|---|---|
Lasbleiz S,et al(2014) 棘上筋腱炎・痛み | NR | 50 | 27.3 | 0.69 | 1.83 |
棘上筋腱炎・筋力低下 | NR | 33.3 | 45.5 | 0.61 | 1.47 |
棘上筋全層損傷・痛み | NR | 85.7 | 50 | 1.71 | 0.29 |
棘上筋全層損傷・筋力低下 | NR | 66.7 | 66.7 | 2 | 0.5 |
Kim E,et(2006) | |||||
回旋筋腱板全層損傷・痛み | NR | 55.5 | 77.8 | 2.50 | 0.57 |
回旋筋腱板全層損傷・筋力低下 | NR | 59.9 | 81 | 3.15 | 0.50 |
回旋筋腱板全層損傷・痛みまたは筋力低下 | NR | 73.7 | 68.3 | 2.32 | 0.39 |
回旋筋腱板全層損傷・痛みかつ筋力低下 | NR | 41.6 | 90.5 | 4.38 | 0.65 |
なんらかの回旋筋腱板損傷・痛み | NR | 71.2 | 67.9 | 2.22 | 0.42 |
なんらかの回旋筋腱板損傷・筋力低下 | NR | 77.3 | 67.9 | 2.41 | 0.33 |
なんらかの回旋筋腱板損傷・痛みまたは筋力低下 | NR | 89.4 | 53.7 | 1.93 | |
なんらかの回旋筋腱板損傷・痛みかつ筋力低下 | NR | 59.1 | 82.1 | 3.30 | 0.50 |
同じ回旋筋鍵板でも後部損傷の評価であるホーンブローワーテスト との違いを把握する必要があるだろうね!
肩関節は複雑ですから、徒手的検査のバリエーションを知っておく必要がありますね!