Trunk Control Test(TCT) – やりかた・採点やカットオフ・予後予測について

Trunk Control Test(TCT) - やりかた・採点やカットオフ・予後予測について 検査

“Trunk Control Test(TCT)は脳卒中患者の体幹制御能力を評価するための簡易的な臨床テストです。
本記事ではTrunk Control Test(TCT)について解説します。


Trunk Control Test(TCT)とは?

Trunk Control Test(TCT)は、脳卒中や神経疾患患者における体幹の制御能力を評価するための簡便な臨床検査です。
体幹は、姿勢の安定や運動の基盤となる重要な部位であり、特に脳卒中後のリハビリテーションにおいては、その機能回復が患者の日常生活動作(ADL)に大きな影響を与えます。
TCTは、ベッド上での簡単な動作を評価し、患者がどの程度体幹を制御できているかを測定します。
具体的には、仰向けから座位への移行や、座位での体幹の安定性などが評価対象となります。

このテストの結果は、患者のリハビリ進行度を判断するための指標としても用いられ、適切な治療計画の策定に役立ちます。

Trunk Control Test(TCT)は、脳卒中患者の体幹制御能力を簡単に評価できる臨床検査なんだ!
体幹の安定性は日常生活動作の回復に重要なため、TCTはリハビリ計画の指標として有用なんですね!

Trunk Control Testの日本語訳

Trunk Control Testは日本語で「体幹コントロールテスト」と訳されます。
このテストは、体幹の制御能力を測定し、特に脳卒中後の患者の機能回復を評価するのに役立ちます。
日本ではリハビリテーション分野で広く用いられ、患者の回復段階や治療計画の策定に重要な役割を果たしています。

患者の自立した動作能力を評価し、リハビリテーションの効果を定量的に把握するための重要なツールとされています。

Trunk Control Testの目的

TCT(Trunk Control Test)は、脳卒中などの神経疾患で片麻痺になった患者さんの体幹機能を評価するためのテストです。
体幹機能の評価を通じて、以下のような目的があります。

  • 予後予測
  • 治療計画の立案
  • 研究目的

それぞれ解説します。

予後予測

Trunk Control Test (TCT)の結果は、リハビリテーション後の予後を予測する上で非常に重要な役割を果たします。
特に、寝返りや起き上がりなどの体幹機能の回復度合いは、退院後の生活の質を左右する要因の一つです。
体幹機能が改善すれば、患者さんは日常生活における移動や動作の自立度が向上し、介助の必要性が軽減される可能性があります。
リハビリ専門職がTCTの結果を基に退院後の生活を予測することで、退院後の自宅環境や必要なサポートについての計画も立てやすくなります。

また、TCTのスコアはリハビリテーションの目標設定にも影響し、目標達成の指標としても活用されます。

治療計画の立案

TCTの結果を基に、各患者に最適な治療計画を立てることが可能です。
例えば、体幹の安定性が低い患者には、体幹強化を目的とした運動療法が中心となることが多く、そのための具体的なプログラムが組まれます。
TCTを定期的に実施し、改善具合を確認することで、治療法の有効性を評価しながら治療方針を適宜調整することができます。
治療計画は、患者の具体的なゴール(例えば「3ヶ月後に一人でベッドから起き上がる」)を設定し、その達成を目指すことが可能になります。

こうした個別目標は患者のモチベーション維持にも役立ちます。

研究目的

TCTは臨床研究においても利用されることが多く、体幹機能と他の身体機能との関連性を調べる研究のための有用な指標です。
特に、歩行能力やバランス能力との関連性を探る研究において、TCTの結果が重要なデータとなります。
TCTを使用した研究により、体幹機能が歩行能力や日常生活動作にどのように影響を与えるかが明らかになり、新しい治療法の開発にも繋がることがあります。

さらに、新たなリハビリ技術やアプローチの効果を評価するための客観的な指標としてもTCTは広く活用されています。

TCTは、脳卒中患者さんの体幹機能を評価する上で非常に有用な検査なんだ!
予後予測、治療計画の立案、研究など、様々な目的で活用されているんですね!

Trunk Control Testの方法

Trunk Control Testは、以下の4つの基本的な動作で構成されています。

  • 仰臥位から麻痺側への寝返り(T1)
  • 仰臥位から非麻痺側への寝返り(T2)
  • 仰臥位から座位への起き上がり(T3)
  • 座位でのバランス(T4)

以下にそれぞれ解説します。

仰臥位から麻痺側への寝返り (T1)

この項目では、患者が仰臥位から麻痺側へ寝返りを行う能力を評価します。
麻痺側への動作は、特に神経学的障害のある患者にとっては困難であり、この動作は体幹の柔軟性、筋力、そして動きのコーディネーションを必要とします。
このテストは、患者の体幹の動きの範囲と制御能力、さらには側方への重心移動能力を評価するのに役立ちます。

仰臥位から麻痺側への寝返り能力は、日常生活での寝返りやベッドからの起床などの活動に直接関連しています。

仰臥位から非麻痺側への寝返り (T2)

この項目は、患者が仰臥位から非麻痺側へ寝返りを行う能力を評価します。
非麻痺側への寝返りは、麻痺側への寝返りよりは容易である可能性がありますが、依然として体幹の筋力とコントロールを必要とします。
この動作は、麻痺側に比べて、非麻痺側の筋肉の使用により焦点を当てています。

非麻痺側への寝返り能力は、日常生活の中での寝返りや、バランスを取りながらの体位変換などの動作に重要です。

仰臥位から座位への起き上がり (T3)

この項目では、患者が仰臥位から座位に自力で起き上がる能力を評価します。
この動作は、腹部と背部の筋肉群を含む体幹の筋力と調整能力を試します。
起き上がり動作は、ベッドからの起床や、転倒からの立ち上がりなど、日常生活で頻繁に遭遇する状況で必要とされる基本的な動作です。

この項目は、特に脳卒中患者の自立性と日常生活動作(ADL)の能力に関連しています。

座位でのバランス (T4)

この項目は、患者の座位でのバランス能力を評価します。
座位でのバランスは、体幹の安定性と調整能力に関連しており、特に座位での活動や移動において重要です。
この評価では、患者が座位で上半身を動かす際の体幹の安定性を見ることになります。
体幹の安定性は、腕や手の機能的な使用、座位での作業、さらには転倒予防にも影響を与えます。
このテストは、患者が日常生活で遭遇する様々な状況において、座位での安定性とバランスをどの程度維持できるかを示します。

座位バランスは、腰椎および胸椎の筋肉の協調性と制御力を反映し、全体的な体幹制御能力の重要な指標です。

TCTはこれらの項目を通して、患者さんの体幹制御能力を包括的に評価する方法なんだ!
これらの動作は、日常生活での機能的な独立性に直接関連しているからね!

Trunk Control Testの採点

TCTでは上記の4項目に対して…

  • 0点:介助を必要とする
  • 12点:なんらかの手段を用いる(柵をつかむetc)
  • 25点:問題なく動作遂行可能

…という採点を行います。

各動作の得点を合計し、総得点は0点から100点の範囲になるんだ!
高い得点ほど体幹制御能力が優れていることを示しているんですね!

Trunk Control Testのカットオフ

Trunk Control Testにおける特定の「カットオフ」スコアは、患者の回復予後を評価する際に重要な指標となります。
しかしTCTの具体的なカットオフ値に関する情報については言及されていないようです。

しかし、一つの研究でModified Trunk Impairment Scale (mTIS)に言及されています。
Lee, An, Lee (2018)による研究では、mTISのModified Barthel Index分類のカットオフ値は10.5点以上であり、カーブの下の領域の精度は73%であると報告されています1)

これは、体幹制御を測定するmTISという関連する尺度にカットオフ値が定量化されていることを示唆していますが、TCTについては同じことが言えない可能性があります。

Trunk Control Testの予後予測

Trunk Control Testのスコアは、脳卒中患者の回復予後を予測するのに有効です。
高いスコアは通常、良好な機能回復と関連しており、患者が日常生活においてより自立する可能性が高いことを示唆します。
逆に、低いスコアは回復が困難であることや、さらなるリハビリテーションの必要性を示唆する場合があります。

以下、TCTと予後予測の関係について…

  • Quinzaños-Fresnedo et al. (2018)の研究
  • Duarte et al. (2002)の研究

…から解説します。

Quinzaños-Fresnedo et al. (2018)の研究

Quinzaños-Fresnedo et al. (2018)の研究では、脊髄損傷(SCI)患者における歩行と日常生活活動(ADL)の独立性に関するTCTの予後予測の妥当性を調査しました。
彼らは、基準時点で良好な体幹制御を持つ個体が、12ヶ月後に歩行やADLで独立している可能性が高いことを発見し、これはSCI患者における独立性と歩行の予後を予測するためにTCTが有用であることを示唆しています6)

Duarte et al. (2002)の研究

Duarte et al. (2002)の研究では、リハビリテーション入院時のTCTと、滞在期間、機能的独立性測定(FIM)、歩行速度、歩行距離、バランスなどの様々な成果との相関を評価しました。
TCTはこれらの成果と有意に相関しており、脳卒中リハビリテーションの成果の早期予測因子としての役割を示しています7)

Trunk Control Testの関連研究

ここではTrunk Control Testにおける…

  • 脳卒中
  • 脊髄損傷
  • 神経筋疾患
  • 脳性まひ

…の関連研究について解説します。

脳卒中

脳卒中患者では、Trunk Control Testのスコアはバランス、歩行、および機能的能力と有意に関連していることが示されています。
これは、体幹制御の評価が脳卒中リハビリテーションにおいて重要であることを示唆しています4)

脊髄損傷

脊髄損傷患者においても、Trunk Control Testは信頼性が高く、体幹制御の有効な評価方法であることが示されています。
このテストは、患者の機能的回復における重要な指標として使用されます5)

神経筋疾患

神経筋疾患患者における体幹制御能力の評価にもTrunk Control Testは有効であり、テストの信頼性と妥当性が確認されています 6)

脳性まひ

脳性麻痺を持つ子供たちにおいてTrunk Control Testは、歩行能力との関連性が確認されており、体幹制御が歩行評価およびリハビリテーションにおける重要な要素であることを示唆しています 7)

TCTは体幹のコントロール能力を評価するから、脳卒中患者の機能回復を見るのにとても役立つんだ!
体幹の安定性は歩行や日常生活動作に直結するから、このテストで患者の回復度を把握できるんですね!

関連文献

参考

  • 1)Lee, Y., An, S., & Lee, G. (2018). Clinical utility of the modified trunk impairment scale for stroke survivors. Disability and Rehabilitation, 40, 1200 – 1205. https://doi.org/10.1080/09638288.2017.1282990
  • 2)Quinzaños-Fresnedo, J., Fratini-Escobar, P., Almaguer-Benavides, K., Aguirre-Güemez, A., Barrera-Ortiz, A., Pérez-Zavala, R., & Villa-Romero, A. (2018). Prognostic validity of a clinical trunk control test for independence and walking in individuals with spinal cord injury. The Journal of Spinal Cord Medicine, 43, 331 – 338. https://doi.org/10.1080/10790268.2018.1518124.
  • 3)Duarte, E., Marco, E., Muniesa, J., Belmonte, R., Diaz, P., Tejero, M., & Escalada, F. (2002). Trunk control test as a functional predictor in stroke patients.. Journal of rehabilitation medicine, 34 6, 267-72 . https://doi.org/10.1080/165019702760390356.
  • 4)Verheyden, G., Vereeck, L., Truijen, S., Troch, M., Herregodts, I., Lafosse, C., Nieuwboer, A., & Weerdt, W. (2006). Trunk performance after stroke and the relationship with balance, gait and functional ability. Clinical Rehabilitation, 20, 451 – 458. https://doi.org/10.1191/0269215505cr955oa.
  • 5)Quinzaños J, Villa AR, Flores AA, Pérez R. Proposal and validation of a clinical trunk control test in individuals with spinal cord injury. Spinal Cord. 2014 Jun;52(6):449-54. doi: 10.1038/sc.2014.34. Epub 2014 Apr 8. PMID: 24710149.
  • 6)Demir, Y., & Yildirim, S. (2015). Reliability and validity of Trunk Control Test in patients with neuromuscular diseases. Physiotherapy Theory and Practice, 31, 39 – 44. https://doi.org/10.3109/09593985.2014.945673.
  • 7)Balzer, J., Marsico, P., Mitteregger, E., Linden, M., Mercer, T., & Hedel, H. (2018). Influence of trunk control and lower extremity impairments on gait capacity in children with cerebral palsy. Disability and Rehabilitation, 40, 3164 – 3170. https://doi.org/10.1080/09638288.2017.1380719.
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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
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