呼吸障害の基本的な評価 – リハビリ場面でもできる視診・触診について

リハビリの現場でも多くみられる呼吸障害。
本記事では呼吸障害の基本的な評価で、特に視診・触診について解説します。

呼吸障害の視診・触診について

リハビリの現場でも役立つ視診・触診のポイントとしてここでは…

  • 表情
  • 呼吸数
  • 呼吸の深さ
  • 呼吸リズム
  • 呼吸のパターン
  • 呼吸補助筋
  • 胸郭の柔軟性
  • 脊柱の柔軟性
  • ばち状指
  • チアノーゼ
  • 経静脈怒張
  • 腹部膨満
  • 四肢の浮腫

…について解説します。

呼吸困難の表情

患者の表情や苦痛の有無を注意深く観察します。
苦しそうな表情や息切れを示す行動がある場合、呼吸障害が疑われます。

呼吸数

また患者の呼吸数を数えることも重要です。
正常な成人の場合、通常は1分間に12〜20回の呼吸があります。
この呼吸数が24/分以上の呼吸数が非常に速い場合は”頻呼吸”。
逆に11/分以下の呼吸数が非常に遅い場合は”低呼吸(徐呼吸)”となります。

呼吸の深さ

呼吸の深さも重要な情報です。
深い呼吸(過換気)や浅い呼吸(低換気)が見られる場合、呼吸障害が疑われます。

吸気と呼気の比率(I/E比)は1:2で、吸気の延長は上気道の狭窄、呼気の延長は慢性閉塞性肺疾患における末梢気道の閉塞で生じ、1:4程度にもなります。

呼吸リズム

呼吸のリズムを観察する必要もあります。
規則的なリズムがあるか、または不規則な呼吸パターンが見られるかを注意深く確認します。
例えば、チェーン・ストークス呼吸(徐々に深くなり、徐々に浅くなる)やビオー呼吸(不規則な深さとリズム)などは、特定の呼吸障害の指標となる場合があります。

呼吸のパターン

優位呼吸パターンは上部・下部胸式、腹式呼吸など、どの呼吸様式が優位であるかをみます。
触診により肺の各部位(上葉・右中葉・左舌区・下葉)、横隔膜の動きを安静呼吸時と深呼吸時で調べ、吸気・呼気において左右対称に動くか、可動範囲、動きのタイミングなどを評価すします。
病変があればその部分の動きは減少します。

呼吸補助筋

呼吸が困難な場合、患者が呼吸補助筋を使用しているかどうかを観察します。
肩の筋肉の緊張や腹筋の使用は、呼吸困難のサインとなる場合があります。

呼吸補助金は吸気筋として胸鎖乳突筋、斜角筋群、僧帽筋など、呼気筋として腹筋群があげられ、その使用の有無は視診だけでなく触診するとわかりやすいです。

胸郭の柔軟性

呼吸障害の視診において、胸郭の柔軟性を診るためには以下のポイントに注意する必要があります。

胸郭の運動範囲
患者の呼吸に合わせて胸郭がどの程度運動しているかを観察します。
正常な場合、呼吸によって胸郭は上下や前後にわずかに動きます。
呼吸が浅く制限されている場合や、胸郭の運動範囲が制限されている場合は、呼吸障害の指標となる可能性があります。

胸郭の対称性
胸郭の両側が対称的に運動しているかを観察します。
片側の胸郭が他の側と比べて制限されている場合、または片側の胸郭の動きが異常な場合は、特定の疾患や障害が原因である可能性があります。

胸郭の硬さや拘縮
胸郭が硬くなっている場合や拘縮している場合も注意が必要です。
硬い胸郭や拘縮は、肺の適切な膨張を妨げることがあり、呼吸障害の原因となる可能性があります。

胸郭の変形
胸郭に異常な変形があるかどうかを観察します。
例えば、漏斗胸や鶏胸などの胸郭の変形は、呼吸機能に影響を与えることがあります。

これらのポイントを視診することにより、胸郭の柔軟性や動きに異常があるかどうかを評価することができます。

脊柱の柔軟性

呼吸障害の視診では、脊柱の柔軟性を診ることも必要です。
以下にそのポイントについて簡単にですが解説します。

脊柱の動き
患者の呼吸に合わせて脊柱がどの程度運動しているかを観察します。
正常な場合、呼吸によって胸椎や腰椎がわずかに動きます。
脊柱の動きが制限されている場合や異常な動きがある場合は、呼吸障害の原因となる可能性があります。

前屈や後屈の柔軟性
患者が前屈や後屈などの脊柱の動きを行う際の柔軟性を観察します。
脊柱が硬く、動きが制限されている場合は、胸郭や腹部の適切な拡張を妨げる可能性があります。

横隔膜と脊柱の連動
横隔膜は呼吸に重要な役割を果たす筋肉であり、脊柱と密接に関連しています。
患者の呼吸時に横隔膜と脊柱の動きが連動しているかを観察します。
脊柱の動きと横隔膜の適切な協調がなされているかどうかを確認します。

脊柱の変形や異常
脊柱に異常な変形があるかどうかを観察します。
例えば、脊椎側彎症や胸椎圧迫骨折などの脊柱の変形は、呼吸機能に影響を与えることがあります。

これらのポイントを視診することにより、脊柱の柔軟性や動きに異常があるかどうかを評価することができます。

ばち状指

“ばち状指”とは、呼吸器疾患患者にみられる身体所見で、手指が太鼓のばち状に変形した状態であることを指します。
正常な指は、爪と軟部組織の角度が約160度であるのに対し、ばち状指の場合、この角度が180度以上になってくるため、太鼓のばちのような形状になります。

チアノーゼ

“チアノーゼ”とは、皮膚や粘膜が青紫色に変色する症状のことを指します。
呼吸器疾患によるチアノーゼでは、肺でのガス交換に問題がある肺胞換気障害があげられます。

経静脈怒張

静脈が膨れる”経静脈怒張”も呼吸障害でみられることがあります。
頸静脈怒張は、右房圧上昇を示唆する有用な所見であり、内頸静脈の拍動レベルの方がより正確な右房圧を反映します。

腹部膨満

“腹部膨満”とは、腹部が膨らんでいる状態を指します。
呼吸器疾患による腹部膨満では、肺胞換気障害によって、肺胞内の二酸化炭素がたまり、腹部が膨らむことがあります。

四肢の浮腫

呼吸器疾患による四肢の浮腫では、肺胞換気障害によって、肺胞内の二酸化炭素がたまり、血液中の酸素濃度が低下し、血管内の水分が体外に出にくくなることが原因となります。

毎日のちょっとした変化に気づくことがリハビリセラピストには求められるかもしれないね!
その気づきのためには、幅広い知識が必要になりますからね!

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