作業療法士がクライアントに対して面接を行う場合、いくつかの注意点があります。
それの場面が机に対峙した状態で行うものでも、クライアントの病室のベッド上でROMエクササイズを行いながらのものでも同じことです。
今回はこの面接におけるセラピスト側の注意点について解説します!
面接を行う上での注意点について
その対象のクライアントの疾患や障害によって多少の違いはあっても、面接を行う上でのいくつかの注意点には共通するものが多くあります。
- 目をそらさない
- 面接中の記録は最小限
- 傾聴の姿勢が基本
- パーソナルスペースに注意
- 先入観を無くす
- 機械的に進行しない
いかにそれぞれ解説します。
目をそらさない
“目は口ほどモノを言う”とはよく言ったもので、面接をするうえでクライアントはOTの目の動き、輝き、まばたきといったものを非常によくみています。
この目に現れる動きによって非常にこちら側の感情やその話に対しての興味の有無をクライアントが感じ取ってしまいます。
適切なラポールを築くうえでも、視線は合わせて面接をする必要があります。
面接中の記録は最小限
“目をそらさない”に通じるものですが、面接での会話やクライアントの状態について記録をするのに精いっぱいになってしまう…。
その結果…情報収集しメモも取ることができたが、関係性が破たんしてしまった…なんて事態を招きかねません。
真面目なセラピストほど「どうしても面接で得た内容を100%覚えているor記録していないといけない…」という強迫観念にも似た状態で面接をしてしまいがちです。
経験則になりますが、何もメモを取らず、クライアントの視線や表情に意識を向けながら相手の会話の内容を吟味する…。
そして面接終了後に自分の中にしっかりと残っている「印象」や「気づき」というものが、案外重要項目だったりします!
それでも最小限のメモや記録を取る必要がある場合は、事前にメモを取ることを伝えておくと関係性の破たんの予防策になるでしょうね!
傾聴の姿勢が基本
「このクライアントの課題を、自分がなんとか解決してあげなくては!」という想いが強すぎるセラピストほど…
「それは○○なんですよ!」
「その方法よりはこうしたほうがいいですね!!」
…と会話を途切れさせ、傾聴の姿勢が崩れてしまいクライアントの心が離れて行ってしまうように感じます。
面接の目的は「情報収集」と「関係性の構築」になります。
つまり、“解決のためのアドバイスを提示する場面”ではないということです。
ただ逆にこの「傾聴の姿勢」を意識しすぎるために、無駄に
「うんうん、そうなんですね…」
…とうなずき、
「それで、あなたはどう感じましたか?」
…といったセリフを多く使っている人もちらほらみられます(大抵“コーチング”を聞きかじりしだしたセラピストにこの傾向がみられます。笑)
クライアントの言うことをしっかりと聞き、理解していることを示すための「需要反応」。
そして、語られた内容や感情の一部をセラピスト側がもう一度繰り返すといった「内容の再構築」や「感情の反射」といったものは『傾聴のためのテクニック』でしかありません。
なによりも相手への、相手の会話内容への『興味』を持つことが最優先であり、傾聴における最重要項目なんだと思います!
パーソナルスペースに注意
パーソナルスペースとは、“他人に近付かれると不快に感じる空間”のことで、パーソナルエリアとも呼ばれているものです。
良好かつ親密な関係性が築けてないうちに、このパーソナルスペースが近すぎてしまってはクライアントから不快に感じられてしまいます。
かといって離れすぎてしまっても面接を行う上では適切ともいえません。
具体的に何cmということは明確にはできませんが、面接をするうえでクライアントの表情変化や視線の変化が分かる程度の距離は必要でしょうね!
先入観を無くす
クライアントの性別や年齢、文化的、社会的な背景や価値観、教育的、宗教的背景といったものは、面接をするOTと大きく異なる場合がほとんどです。
「高齢の女性だから○○のはずだ」
「××という職業に就いていたからこんな性格なんだ!」
という根拠なしでの先入観は、どうしても面接においての情報収集やこちらの微妙な反応にバイアスがかかってしまいます。
できるかぎりフラットな状態で面接を行うことが重要とも言えます!
機械的に進行しない
セラピストとの面接を必要としているクライアントは、ほとんどの場合不安を強く感じている状態です。
そういう状態で…
「では一つ目の質問ですが…」
「次に○○についてですが…」
…と言ったような、機械的、事務的な面接進行を行うと非常に心理的な距離を生んでしまいます。
面接は“関係性を構築する”という目的もある点を考えると、クライアントが一つの質問に対しての話題に熱中してしまい、セラピスト側が準備していた質問項目を時間内にすべて処理しきれないような状態になっても臨機応変に対応する必要があります。
セラピスト側が心理的に焦ってしまったりするとすぐにクライアントはその変化を感じ取ってしまうので、時間的にも場所・状況的にも、OTの心理的にも余裕をもって面接に臨む必要があります。
まとめ
今回は面接におけるセラピスト側の注意点について解説しました。
その場面がどんな場面であっても、クライアントとの面接を行う機会は非常に多くあります。
今回ご紹介した6つの注意点を意識するだけでも、面接においての情報収集が、良好な関係性を構築した状態で行うことができるはずです!