運動負荷試験の一つである”トレッドミル法”。
本記事ではこのトレッドミル法の定義や目的、方法、そして注意点について解説します。
トレッドミル法とは?
トレッドミル法は、心臓の負荷を評価し、心電図や血圧を監視しながらトレッドミル(歩行ベルト)上で運動する運動負荷検査の一種です。
“トレッドミル”は日本語で『無限走行盤』と訳され、歩行(走行)ベルトの回転スピードを上げたり傾斜を変更することによって負荷量を調整できるのが特徴です
トレッドミル法の目的
“トレッドミル法”は、トレッドミル上で歩行することにより、運動中の心拍応答や心電図を観察し、対象者の運動強度の評価を行う検査です。
心臓に負荷をかけることで、運動耐容能や全身持久力、有酸素能力の評価ができます。
また、安静時には分からない狭心症や不整脈などの診断も可能になります。
トレッドミル法の方法
トレッドミル法の方法としては、次のような流れになります。
- 準備
- 装置の取り付け
- 初期設定
- 運動開始
- 負荷の調整
- モニタリング
- 中止基準の判断
- 運動終了と回復期
- 評価と診断
以下にそれぞれ解説します。
準備
患者の健康状態を評価し、運動負荷検査の適切さを判断します。過去の病歴や既知のリスク要因を確認します。
医師または専門家がトレッドミル法の手順とリスクについて説明し、患者に同意を得ます。
装置の取り付け
患者はトレッドミルの上に立ち、心電図モニターや血圧計などの必要な装置を体に取り付けます。
初期設定
トレッドミルの速度や傾斜を最初に設定します。
これは患者の基本的な能力に合わせて決定されます。
運動開始
トレッドミルが動き始め、歩行(走行)ベルトの速度がゆっくりと上昇します。
患者は歩行または走行を始めます。
医師や看護師は患者の症状、心電図、血圧などのパラメータを監視します。
負荷の調整
トレッドミルの速度や傾斜を徐々に上昇させて負荷を増加させます。
これにより心臓への負荷が増加します。
モニタリング
運動中、患者の心拍数、心電図、血圧、症状の変化をモニタリングします。
心電図モニターには心臓のリズムや異常が表示され、それを評価します。
中止基準の判断
患者が運動中に胸痛、息切れ、めまい、不快感などの症状を感じた場合、または心電図に異常が見られた場合、検査を中止します。
安全が最優先です。
運動終了と回復期
医師の判断に基づき、運動を終了します。
トレッドミルが停止し、患者は安静になります。
回復期間中、心拍数や血圧の回復をモニタリングし、症状が安定していることを確認します。
評価と診断
患者のデータとモニタリング結果をもとに、医師は運動耐容能や心臓の応答を評価し、必要に応じて診断や治療方針を決定します。
トレッドミル法の種類
トレッドミルによる運動負荷試験では、速度や傾斜を漸増させて調整し、3分ごとに運動強度を漸増させる”多段改漸増法”を用いることが一般的です。
またこの多段改漸増法には…
- Bruce法
- Naughton法
…などがあります。
Bruce法
Bruce法は、負荷量を急激に増加させる方法で、一定の体力を持つ症例に適しています。
負荷開始直後の心拍数や血圧反応が大きくなる可能性があります。
Naughton法
Naughton法は、歩行速度を一定に保ちながら傾斜を漸増させる方法です。
そのため、低体力の高齢者などに向いています。
しかし、心拍数や血圧反応が緩徐であり、十分な負荷量が得られないという問題があるとされています。
トレッドミル法の注意点
トレッドミル法は有用な検査手法ですが、安全性を確保するためにはいくつかの注意点があります。
ここでは…
- 医師の指導
- 初回評価
- 心電図モニタリング
- 症状の監視
- 運動中止基準
- リスク評価
- 負荷調整
- 必要な設備
- 回復期の監視
- 緊急時の対応
- 患者教育
…という項目で解説します。
医師の指導
トレッドミル法は医療的な検査であり、医師の指導のもとで行うことが重要です。
医師は患者の健康状態やリスク要因を考慮して、適切な検査プロトコルを設定します。
初回評価
事前に患者の病歴や既知の心臓疾患、薬物治療などを詳しく確認し、運動負荷検査の適切さを判断します。
これによって検査の安全性が確保されます。
心電図モニタリング
心電図を常にモニタリングし、心拍数やリズムの変化を追跡します。
異常が見られた場合は運動を中止することが必要です。
症状の監視
患者が運動中に胸痛、息切れ、めまい、不快感などの症状を感じた場合は、直ちに医師や看護師に報告し、運動を中止します。
運動中止基準
事前に設定された運動中止の基準を明確に患者に説明し、患者も自分自身で異常を感じた場合に運動を中止することを理解させます。
リスク評価
高齢者や基礎体力の低い患者、心臓疾患の既往がある場合など、リスク要因を考慮して運動負荷を設定します。
負荷調整
負荷を徐々に増加させることで心臓への負担を調整します。
急激な負荷増加は避けるようにします。
必要な設備
心電図モニターや血圧計などの必要な設備が正しく機能していることを確認します。
回復期の監視
運動後の回復期間もモニタリングし、心拍数や血圧の回復が安定していることを確認します。
緊急時の対応
緊急の場合に備えて、医師や看護師が適切な応急処置を行える体制を整えます。
患者教育
患者に検査の流れや異常の報告方法、運動中の注意事項などを十分に理解させます。
トレッドミル法は適切なケアと監視のもとで行えば、心臓の状態を正確に評価するための有効なツールです。
しかし、患者の安全性を最優先に考え、適切なプロトコルと設備を整えることが重要です。