浮腫の分類 – 全身性浮腫と局所性浮腫について

浮腫を理解するには、発生機序による分類だけでなくその原因そのものから理解することも必要になります。
そこで本記事では、浮腫の分類を原因疾患から解説します。

浮腫の分類

浮腫は主に…

  • 全身性浮腫
  • 局所性浮腫

…の2つに分けられます。
それぞれ解説します。

全身性浮腫

全身性浮腫とは、全身(特に足首や足の甲、手首など)に浮腫が生じる状態のことを指します。
浮腫は、皮下に余分な水分が溜まっている状態で、通常は静脈やリンパ管に戻りますが、何らかの原因で静脈やリンパ管に回収されずに皮下組織に貯留することで生じます。

この全身性浮腫はさらに次のように分類されます。

腎性浮腫
腎性浮腫とは、腎臓の機能が低下することによって、体内に余分な水分がたまっている状態を指します。

急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群や腎不全といった腎臓病の症状として代表的なものとされています。

心性浮腫
心性浮腫とは、心臓の機能が低下することによって、体内に余分な水分がたまっている状態を指します。
心臓弁膜症、心筋梗塞、心筋症、心膜炎などによって起こることがあります。
心音や肺音の聴診が重要であり、胸部X線写真、心電図、心エコー検査なども診断に役立ちます。

肝性浮腫
肝性浮腫とは、肝臓の機能が低下することによって、体内に余分な水分がたまっている状態を指します。
肝硬変、Budd-Chiari症候群などが代表的といえます。
また、特徴的な症状としては腹水が伴うことが多くあります。
肝機能検査(GOT、GPTなど)、肝炎ウイルス検査、α-フェト蛋白などの腫瘍マーカー、腹部エコー検査などを行います。

内分泌性浮腫
内分泌性浮腫とは、内分泌系の疾患によって引き起こされる浮腫のことを指します。
non-pitting edema(凹まない浮腫)が当てはまり特徴といえます。
主に甲状腺機能低下症、Cushing症候群、更年期性浮腫などがあげられます。
甲状腺機能検査により確定診断を行います。

栄養障害性浮腫
栄養障害性浮腫とは、栄養不良によって引き起こされる浮腫のことを指します。
これには、ビタミンB不足による脚気、吸収不良症候群や悪性腫瘍などで見られます。
栄養面における生活上での特徴としては、アルコールの摂取過多や炭水化物に偏った食生活が原因となっていることが多いようです。

薬剤性浮腫
薬剤性浮腫とは、医薬品の副作用によって引き起こされる浮腫のことを指します。
原因としては、非ステロイド系消炎鎮痛剤、Ca拮抗薬、漢方薬、ホルモン剤(ACTH,副腎皮質ステロイド剤、エストロゲンなど)があげられます。
また、カルシウム拮抗薬(例:ニフェジピン)は高血圧や冠動脈疾患によく使用される薬剤ですが、これも原因の場合があります。
仁丹や漢方薬には甘草が多く含まれており、浮腫を引き起こす可能性があります。

局所性浮腫

局所性浮腫とは、全身性浮腫とは異なり、特定の場所だけに浮腫が現れた状態のことです。
この局所性浮腫は、その原因によってさらに次のように分類されます。

静脈性浮腫
静脈性浮腫とは、静脈の流れが妨げられて体内の余分な水分や物質が組織に滞留し、結果として生じる浮腫です。
静脈の流れが阻害されることにより、血液がうまく組織から排出されずに溜まってしまいます。
この状態によって、浮腫が発生することがあります。
主に、静脈血栓症、上大静脈症候群、静脈瘤などがあげられます。

リンパ性浮腫
リンパ節が腫れたり、フィラリア感染などによってリンパの流れが阻害されることで生じる浮腫です。
リンパ系は体内の余分な液体や老廃物を排出する役割を果たしており、リンパの流れが滞ると組織に液体がたまって浮腫が生じます。
リンパ管炎、リンパ節郭清術後、悪性腫瘍転移などが原因としてあげられます。

炎症性浮腫
炎症性浮腫は、感染症やアレルギー反応、やけどなどといった炎症によって血管の透過性が亢進し、組織に血管外液や免疫細胞が滲出することで生じる浮腫です。
皮下組織感染症、血管炎(膠原病)、アレルギーや蕁麻疹などが主な原因になります。

血管神経性浮腫
血管神経性浮腫は、神経系の障害によって血管の調節機能が失われることで生じます。
この神経の傷害により、血管が異常に拡張したり、血流の制御が困難になったりするため、浮腫が発生することがあります。
Quinckeの浮腫や遺伝性血管神経性浮腫などがあげられます。

内分泌性浮腫
内分泌性浮腫とは、内分泌系の疾患によって引き起こされる浮腫のことを指します。
甲状腺機能亢進症などで多くみられます。

体位性浮腫
体位性浮腫とは、体位によって浮腫が現れる状態を指します。
例えば、足を上げると浮腫が改善する場合は、体位性浮腫の可能性があります。
長期臥床の状態でも頻繁にみられます。

浮腫は全身性、局所性に大別され、さらにそれぞれ細かく分類されるってことは、リハビリセラピストも知っておく必要があるね!
そうすれば、その浮腫の種類から背景に潜んでいる疾患を掘り下げていくことも可能になるでしょうからね!

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