スターリングの法則(Starling’s Law)とは? -浸透圧・浮腫・心臓との関連や式について

用語

スターリングの法則は、毛細管と組織間の流体の動きを静水圧と膠質浸透圧の差によって説明する基本原理です。
この法則は、リンパ流や浮腫の理解に不可欠です。

本記事では、スターリングの法則について解説します。

スターリングの法則とは?

スターリングの法則(Starling’s Law)は、心臓の収縮力が、心室の拡張終了時の容積(心室の充填度)に依存するという心臓生理学の基本原理です。
具体的には、心室の拡張終了時の容積が増加すると、心臓の収縮力も増加し、それによって心室からの血液の排出量(心拍出量)が増加するという関係性があります。

この法則は、心臓が異なる循環条件下で血液の循環を最適化するための重要なメカニズムです。

特徴

スターリングの法則の特徴として、ここでは…

  • 一貫した相関関係について
  • カルシウムイオンへの感受性との関連
  • トロポニンCの役割との関連

…について解説します。

一貫した相関関係について

スターリングの法則において、心室の収縮力と心室内の拡張終了時の圧力との間には一貫した相関関係が存在します。
これは、心室がより多くの血液で拡張されると、その収縮力が増加し、結果として心拍出量が増加することを意味します。

SarnoffとBerglundによる1954年の研究では、これらの関係を実験的に確認し、心臓が異なる圧力の下で効率的に働くことを示しています。
この発見は、心臓が体の需要に応じて血液循環を調整する際の基本的なメカニズムを理解する上で重要です1)

カルシウムイオンへの感受性との関連

スターリングの法則は心室筋線維の長さとカルシウムイオンへの感受性の増加という細胞内メカニズムに基づいています。
心筋細胞は、筋線維の長さが増加すると、カルシウムイオンに対する感受性が高まり、それによって収縮力が増大します。
このメカニズムは、心筋の収縮力と充填量の関係を説明し、心臓が増加した負荷に応答してどのようにして収縮力を調整するかを示しています。
de Tombeらによる2010年の研究では、このプロセスに関与する分子機構が詳細に説明されています2)

トロポニンCの役割との関連

スターリングの法則の分子的基盤には、筋収縮タンパク質であるトロポニンCの役割が重要です。
トロポニンCは、筋収縮の調節において中心的な役割を果たし、心筋細胞の長さが伸びると収縮力を増大させる能力を持っています。
Babuらによる1988年の研究は、心筋の長さに応じて変化するトロポニンCの感受性が、スターリングの法則の根底にあることを示しています。
この発見は、心臓の長さ依存性の収縮力調節におけるトロポニンCの重要性を強調しています3)

スターリングの法則の式

スターリングの法則は式で表されます。

間質液貯留 = K[(Pc – Pf) – (πp – πIF)] – Qlymph

K: 毛細管の透過性
Pc: 毛細管内の静水圧
Pf: 組織間液の静水圧
πp: 血漿膠質浸透圧
πIF: 組織間液膠質浸透圧
σ: 浸透圧に対する反射係数
Qlymph: リンパ流

ブラジキニン、プロスタグランジンといった炎症性物質によって毛細血管透過性が増して、その結果浮腫を引き起こすんだ!
心不全や静脈閉塞などによる毛細血管内の静水圧上昇も浮腫の原因となりますからね!

血漿膠質浸透圧の式

ちなみに血漿膠質浸透圧は、次の式で表されます。

p (mmHg) = 5.54 × 血漿アルブミン濃度(g/dl) + 1.13 × 血漿グロブリン濃度(g/dl)

血漿アルブミン濃度の低下は、ネフローゼ症候群や肝硬変にみられる浮腫の原因とされています。

透過性の亢進は、蛋白質などの滲出により引き起こされ、この亢進が組織に血漿成分を引き込んで浮腫を引き起こすからね!
リンパ液のうっ滞も、リンパ節切除などにより引き起こされ、組織間液の浸透圧を亢進させることで浮腫の原因となりますよね!

参考

1)Sarnoff, S., & Berglund, E. (1954). Ventricular Function: I. Starling’s Law of the Heart Studied by Means of Simultaneous Right and Left Ventricular Function Curves in the Dog. Circulation, 9, 706–718. https://doi.org/10.1161/01.CIR.9.5.706.

2)Tombe, P., Mateja, R., Tachampa, K., mou, Y., Farman, G., & Irving, T. (2010). Myofilament length dependent activation.. Journal of molecular and cellular cardiology, 48 5, 851-8 . https://doi.org/10.1016/j.yjmcc.2009.12.017.

3)Babu, Á., Sonnenblick, E., & Gulati, J. (1988). Molecular basis for the influence of muscle length on myocardial performance.. Science, 240 4848, 74-6 . https://doi.org/10.1126/SCIENCE.3353709.

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