ADOS-2 – 自閉スペクトラム障害への評価方法・項目や注意点などについて

検査

自閉スペクトラム障害(ASD)の評価に広く用いられるADOS-2は、多様な言語や文化的背景を持つ個人に対するその適用性と有効性についての研究が行われています。
本記事ではADOS-2の目的や方法などについて解説します。


ADOS-2とは?

Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition (ADOS-2) は、自閉スペクトラム障害(ASD)を評価するための半構造化された、標準化された観察評価ツールです1)
これは、子供、青少年、および大人のASDを評価するために使用され、コミュニケーション、社会的相互作用、遊び、制限された繰り返し行動を評価します。

ADOS-2は、臨床および研究設定で使用され、ASDの観察評価の「ゴールドスタンダード」と見なされています。
しかしすべてのセラピストや医療従事者が扱えるわけではありません。
これには適切な資格を持つ専門家が管理する必要があり、管理者はテスト発行者または独立したトレーナーによる臨床トレーニングを受けている必要があります。

目的

ADOS-2の目的としては…

  • ASDの特徴の評価
  • 臨床および研究設定での使用
  • 年齢や発達レベルにわたる評価
  • 診断のための補助ツール

…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。

ASDの特徴の評価

ADOS-2は、コミュニケーション、社会的相互作用、遊び、および繰り返し行動や限定された興味などの領域におけるASDの特徴を評価するために設計されています。

臨床および研究設定での使用

ADOS-2は、臨床および研究の両方の設定で広く使用されています。
このツールは、ASDの診断を支援し、関連する行動特性を特定するために使われます。

年齢や発達レベルにわたる評価

ADOS-2は、幼児から成人に至るまで、さまざまな年齢や発達レベルの人々に適用することができます。

診断のための補助ツール

ADOS-2は、ASDの診断において重要な役割を果たしますが、その結果は、医療専門家による総合的な臨床評価の一部として使用されるべきです。

対象

ADOS-2は、月齢12カ月以上の自閉スペクトラム障害(ASD)の診断が疑われる方を対象としています。

所要時間

おおよそ40~60分になります。

項目

ADOS-2の検査項目は、ASDの診断において重要な行動特性を評価するために設計されています。
主要な検査項目としては…

  • コミュニケーション
  • 社会的相互作用
  • 遊び/想像力
  • 限定された興味と繰り返し行動
  • その他の行動特性

…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。

コミュニケーション

言語能力と非言語的コミュニケーションのスキルを評価します。
これには、言葉の使用、身振り、表情、目の接触などが含まれます。

社会的相互作用

他者との社会的な関わり方を評価します。
共感、共有注意、対人関係のスキルなどが観察されます。

遊び/想像力

遊びのスキルや想像力の使用を評価します。
特に小さな子どもにおいて、創造的な遊びや対象物への関心がどのように表れるかを見ます。

限定された興味と繰り返し行動

特定の興味や行動、繰り返し行動や儀式的行動などを評価します。

その他の行動特性

ASDに関連する可能性のあるその他の行動を観察します。

ADOS-2は、これらの領域を評価するために様々なタスクや活動を含んでおり、被験者の年齢、発達水準、言語能力に合わせて調整されます。
これにより、個々の被験者に合わせた包括的な評価が可能になります。

ADOS-2の検査は、通常、訓練を受けた専門家によって行われ、その結果は、個人の全体的な臨床評価の一部として解釈されます。

方法

ADOS-2の方法は、以下のステップで構成されています。

  • モジュールの選択
  • 半構造化された評価
  • 観察とインタラクション
  • 行動コーディング
  • 評価結果の解釈

以下にそれぞれ解説します。

モジュールの選択

ADOS-2は、被験者の年齢、言語能力、および発達水準に応じて異なるモジュールを提供しています。
被験者に最も適したモジュールを選択することが重要です。

半構造化された評価

ADOS-2は半構造化された観察ツールで、専門家が一連の計画された社会的、コミュニケーション、遊びに関連する活動を通じて被験者の行動を評価します。

観察とインタラクション

評価中、専門家は被験者と直接対話し、特定の課題や活動を通じてASDの特徴的な行動を観察します。

行動コーディング

ADOS-2は、コミュニケーション、社会的相互作用、遊び、および限定された興味と繰り返し行動に関連する特定の行動をコーディングします。

評価結果の解釈

観察結果は、ADOS-2の指標に従って解釈され、ASDの特徴の有無や程度を評価します。
評価は、全体的な臨床的文脈において解釈されるべきです。

ADOS-2は、ASDの診断において重要なツールですが、その結果は総合的な臨床評価の一部として用いられるべきであり、単独で診断を下すためのものではありません。
専門家はADOS-2を使用するための特別なトレーニングを受ける必要があります。

限界

ADOS-2は、その精度について研究されており、一部の研究では、特定の集団や状況での使用におけるその限界が指摘されています。
例えば、臨床設定での予測精度の評価では、全体的な感度が92%、特異性が57%であることが報告されています2)

また、異なる文化や言語コミュニティでのADOS-2の適用性や有効性に関する研究も行われています3)

注意点

ADOS-2は、ASDの診断において重要な役割を果たすツールですが、その結果の解釈には慎重である必要があります。
特に、ASD以外の精神疾患を持つ大人の中での偽陽性率が高いことが示されており、社会的コミュニケーションの困難がASDに特有でない場合、特に臨床的に複雑な設定での使用には注意が必要です4)

最近は大人の発達障害も話題になっているからこそ、ADOS-2を利用できるセラピストの需要は高まるかもしれないね!
きちんと利用するためにも、専門の研修を受けたうえで利用する必要がありますね!

研修について

ADOS-2 日本語版の関連ワークショップ・研修会は金子書房が定期的に主催して行っています。
導入を検討しているセラピストは参加することをおすすめします。

金子書房 心理検査ワークショップ情報

参考

1)Mccrimmon, A., & Rostad, K. (2014). Test Review: Autism Diagnostic Observation Schedule, Second Edition (ADOS-2) Manual (Part II): Toddler Module. Journal of Psychoeducational Assessment, 32, 88 – 92. https://doi.org/10.1177/0734282913490916.

2)Adamou, M., Jones, S., & Wetherhill, S. (2021). Predicting diagnostic outcome in adult autism spectrum disorder using the autism diagnostic observation schedule, second edition. BMC Psychiatry, 21. https://doi.org/10.1186/s12888-020-03028-7.

3)Brøndbo, P. H., & Høyland, A. L. (2018). Måleegenskaper ved den norske versjonen av Autism Diagnostic Observation Schedule, Second Edition (ADOS-2). https://doi.org/10.21337/0059

4)Maddox, B., Brodkin, E., Calkins, M., Shea, K., Mullan, K., Hostager, J., Mandell, D., & Miller, J. (2017). The Accuracy of the ADOS-2 in Identifying Autism among Adults with Complex Psychiatric Conditions. Journal of Autism and Developmental Disorders, 47, 2703-2709. https://doi.org/10.1007/s10803-017-3188-z.

関連文献

タイトルとURLをコピーしました