がん治療におけるSDMのメリット・デメリット

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SDM(Shared Decision Making、共同意思決定)は、がん治療において特に重要な役割を果たします。
本記事ではがん治療におけるSDMのメリット、デメリットについて解説します。


がん治療におけるSDMのメリット


まずはがん治療におけるSDMのメリットについて解説します。

患者中心の治療選択

共有意思決定(SDM)は、患者と医療提供者が等しく参加する意思決定過程であり、患者中心の治療を実現します。
このアプローチにより、患者は自身の価値観や優先事項に基づいて、治療オプションを選択する機会を持ちます。
これは、患者が自身の健康状態や治療に対する理解を深め、自らの選択に責任を持つことを促します。

患者が自分の治療に積極的に関与することで、自身の健康に対する自信と満足感が高まり、治療プロセス全体における患者のエンゲージメントが強化されます。

情報共有

SDMでは、医療専門職と患者が治療オプションに関する情報を開かれた環境で共有します。
これにより、患者は治療の利点と限界をより深く理解し、自身にとって最適な選択をすることが可能になります。
情報共有は、患者が医療専門職からの推奨事項だけでなく、治療の可能性、副作用、治療にかかる時間や費用についても学ぶ機会を提供します。

この過程を通じて、患者は自身の状況と治療オプションを総合的に評価し、より情報に基づいた意思決定を行うことができます。

満足度の向上

SDMを通じて、患者は治療選択プロセスに積極的に関与します。
これにより、治療に対する満足度が高まり、不安や後悔の感情が軽減されることが多くの研究で示されています。
患者が自身の選択に自信を持ち、治療計画における自身の役割を理解することで、治療結果に対する期待が現実的なものとなり、治療過程でのストレスや不安が軽減されます。

このように、患者の精神的な満足度が向上することは、治療への積極的な参加と治療成果の向上にも繋がります。

リスクと利益の理解

SDMは、治療のリスクと利益を患者に明確に伝えることを重視します。
患者は、治療オプションごとのリスクと利益を比較し、自身の価値観に最も合致する選択をすることができます。
この透明性は、患者が自身の治療に関する意思決定を行う上で不可欠であり、医療専門職と患者間の信頼関係を強化します。

リスクと利益の明確な理解は、患者が将来的な治療結果に対して現実的な期待を持つことを助け、不確実性を管理する上で重要な役割を果たします。

治療遵守の向上

患者が治療選択において主体的な役割を果たすことで、治療計画に対するコミットメントが高まり、治療遵守が向上します。
患者が治療プロセスを理解し、その選択を支持することで、治療計画の実施における障害が減少し、治療成果の向上に繋がります。
また、患者が治療計画に関して持つ疑問や懸念を医療専門職と共有する機会が増えることで、不明瞭な点を明確にし、治療への信頼感を強化することができます。

治療遵守の向上は、長期的な健康アウトカムにおいても肯定的な影響を与えます。

SDMは患者さんと医療専門職の間のパートナーシップを強化し、患者の自律性と満足度を高めることに貢献するんだ!
このプロセスを通じて、患者は自身の治療における選択肢をより深く理解し、その選択に対する責任と自信を持つことができますね!

がん治療におけるSDMのデメリット


では、がん治療におけるSDMのデメリットとはなにがあげられるでしょうか?

時間とリソースの要件

共有意思決定(SDM)は、医療提供者と患者が共同で治療選択を行うためには、十分な時間とリソースが必要です。
このプロセスには、選択肢の提示、情報の共有、患者の価値観の理解、そして最終的な選択に至るまでの議論が含まれます。
しかし、医療現場はしばしば時間とリソースが限られており、医療専門職は多忙を極めています。
このため、SDMを実践することが現実的な課題となり得ます。

時間の制約は、特に高い患者数を抱える施設や、緊急性の高い医療環境で顕著です。

患者の不確実性

SDMは、患者に治療オプションについての選択を促しますが、これにより患者は不確実性を感じ、不安やストレスを経験することがあります。
特に、複数の選択肢がある場合や、各治療オプションの結果に関する情報が限定的である場合、患者はどの選択が最適かを決定することに圧倒されることがあります。
また、患者は自身の選択に対する後悔を恐れ、そのために決定を避けることさえあります。

このような不確実性は、患者の精神的負担を増大させ、治療プロセス全体の効果を損なう可能性があります。

医療専門職のスキルと態度

SDMの成功は、医療専門職のスキルと態度に大きく依存します。
適切なコミュニケーション技術、患者の価値観を尊重し理解する能力、そして患者との効果的な情報共有は、SDMに不可欠です。
しかし、すべての医療専門職がこれらのスキルを持っているわけではなく、SDMに対する十分な訓練を受けていないこともあります。
また、医療専門職の中には、伝統的な医師主導の意思決定プロセスを好む者もおり、SDMへの抵抗感を持つことがあります。

これらの要因は、SDMの有効性を低下させ、患者と医療専門職の間の信頼関係の構築を妨げる可能性があります。

意思決定の遅延

SDMは、治療オプションについての詳細な議論と検討を必要とするため、治療決定までの時間が長くなることがあります。
これは、緊急性が高い状況や迅速な治療開始が求められる場合には特に問題となります。
意思決定の遅延は、患者の不安を増大させるだけでなく、病状の進行により治療選択肢が限定される可能性もあります。

SDMの過程で適切なバランスを見つけることは、医療専門職にとって重要な課題の一つです。

文化的・言語的側面

SDMを実施する上での大きな障害の一つが、患者の文化的背景や言語の違いです。
異なる文化的背景を持つ患者は、健康や病気に対する異なる観点を持ち、これがSDMの過程に影響を及ぼす可能性があります。
また、言語の障壁は、医療専門職と患者間の効果的なコミュニケーションを妨げ、情報の誤解を引き起こす可能性があります。

これらの文化的・言語的側面は、SDMの実施を複雑にし、患者が自身の治療選択について十分に理解し、参加することを難しくすることがあります。

SDMは理想的な意思決定プロセスを提供する一方で、実践には時間、リソース、適切なスキルが必要となり、これらが制約となる場合があるんだ!
特に、医療提供者と患者の間でのコミュニケーションの障壁や文化的な違いは、SDMの効果的な実施を複雑にする要因となることがあるんですね!

まとめ

共有意思決定(SDM)は、がん治療において重要な役割を果たしますが、その実践にはいくつかの課題も伴います。
まず、医療専門職は、患者とのコミュニケーション技術を向上させ、患者の価値観や優先事項を理解し尊重することが重要です。
これには、適切な訓練と継続的な教育が必要となります。
また、医療機関は、SDMを促進するために必要な時間とリソースを提供することで、医療専門職と患者の双方をサポートする体制を整えるべきです。

患者にとっては、治療選択における不確実性を理解し、自身の疑問や不安を積極的に医療専門職に伝えることが大切です。
患者と医療専門職は、治療選択におけるリスクと利益を共有し、適切な意思決定を行うためのパートナーシップを築く必要があります。
SDMのプロセスを円滑に進めるためには、互いのコミュニケーションと理解が鍵となります。

文化的・言語的な違いに対処するためには、医療機関は多言語の情報資料を提供し、通訳サービスを利用することで、全ての患者がSDMのプロセスに等しく参加できるようにすることが望ましいです。
これらの対策は、患者の満足度と治療遵守を向上させ、最終的には治療成果の改善に寄与します。
SDMを成功させるためには、患者と医療専門職の間の信頼関係の構築が不可欠であり、それには時間と共同の努力が必要です。

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