かなひろいテストは前頭前野機能の障害を推測できる? – MMSEとの関係について

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認知症のスクリーニングとして使われる”かなひろいテスト”。
しかしこの検査は前頭前野機能の検査としても有用という意見もあります。

本記事ではこのかなひろいテストと前頭前野の関係性をMMSEとの相関性から考察した研究より解説します。

かなひろいテストとMMSE下位項目

一般的にMMSEは認知症スクリーニングに使用されますが、前頭前野機能の検出力が低いとされています。
それに対して、大杉らはMini-Mental State Examination(MMSE)の下位項目が前頭前野領域機能の評価におけるかなひろいテストにどの程度影響を与えるか…について2012年に調査報告しています。1)
これは2009年1月から8月までにAクリニックに通院した高齢者1017名を対象に、MMSEの11の下位項目とかなひろいテストの正答数を分析による報告です。

分析の結果、かなひろいテストに有意な影響を与えたMMSE下位項目(標準偏回帰係数)は…

  • 計算(0.30)
  • 遅延再生(0.18)
  • 口頭指示(0.15)
  • 場所の見当識(0.11)
  • 遅延再生(0.18)

…の5項目だったようです(すべてP<0.01)。 これらの結果から、MMSEの下位項目を詳細に検討することで前頭前野機能の障害を推測できる可能性が示唆されています。 ではそれぞれ少し解説します。

計算 (標準偏回帰係数:0.30)

この項目は計算能力を測定し、係数が0.30と最も高いことから、計算能力がかなひろいテストの成績に最も大きく影響していることが示されています。
つまり計算能力が高いほど、かなひろいテストの成績が良くなる傾向があるということが言えます。

遅延再生 (標準偏回帰係数:0.18)

遅延再生は記憶力を試す項目で、特に情報を記憶し、時間が経過した後にそれを再生する能力を測定します。
標準偏回帰係数が0.18であることは、記憶力がかなひろいテストの成績に中程度の影響を与えることを示しています。

口頭指示 (標準偏回帰係数:0.15)

口頭での指示にどれだけ従えるかを評価するこの項目は、かなひろいテストに中程度の影響を与えることが示されています。
つまり指示理解能力がテストの成績に影響することが分かります。

場所の見当識 (標準偏回帰係数:0.11)

この項目は、個人が自分がいる場所をどの程度正確に把握できるかを評価します。
標準偏回帰係数が0.11であることは、この能力がかなひろいテストの成績に小さながらも統計的に有意な影響を与えることを意味します。

図形模写 (標準偏回帰係数:0.09)

図形を観察し、それを正確に模写する能力を測定するこの項目は、かなひろいテストの成績に比較的小さいが有意な影響を与えています。

これらの結果は、これらの特定の認知機能がかなひろいテストの成績にどのように影響を与えるかを示しており、特に計算能力の影響が顕著であることが明らかになりました。
また、これらの項目のP値が0.01未満であることは、その統計的有意性を強調しています。

この研究結果からかなひろいテストは前頭前野の評価ツールとしても有用ということが示唆されるね!
特に認知処理速度や実行機能、注意力などを反省する可能性があるといえますね!

参考

1)MMSE下位項目とかなひろいテストとの関係

かなひろいテスト - 方法・解釈・カットオフ値などのマニュアルとして
早期認知症のスクリーニング検査の一つに“かなひろいテスト”があります。今回はこの目的や方法、採点方法、カットオフ値について解説します。
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