CARS2は自閉スペクトラム症の診断支援ツールで、評価者が対象者の行動特性を評定し、適切な支援を計画するための指針を提供します。
本記事ではCARSこの目的や特徴、検査方法について解説します。
CARS２日本語版とは？
CARS2（小児自閉症評定尺度 第2版）は、2歳以上の子供を対象とした自閉スペクトラム症（ASD）の診断および重症度評価のためのツールです。
この評定尺度は、子供の行動観察と保護者からの情報を組み合わせて、ASDの診断に必要な重要な情報を提供します。
CARS2は、特別な用具を必要とせずに、他の心理検査と並行して短時間（約20分程度）で行うことが可能です。
目的
CARS2の目的は、自閉スペクトラム症（ASD）の診断評価、重症度の測定、介入計画の立案、および保護者への報告をサポートすることです。
ここでは特に…
- 自閉スペクトラム症（ASD）の診断評価
- 重症度の測定
- 介入計画の立案
- 保護者への報告
…について解説します。
自閉スペクトラム症（ASD）の診断評価
CARS2は、行動観察と保護者からの情報を基にASDの診断を支援します。
この評価ツールは、対象者の特定の行動や特徴を評定し、ASDの存在およびその特性を明らかにするために設計されています。
評定により得られる得点は、専門家がASDの診断に必要な重要な情報を集約し、精度の高い診断を下すための基盤となります。
重症度の測定
CARS2は、ASDの重症度を測定する機能を持ち、軽度から中度、中度から重度のASDを区別するのに有効です。
この評定尺度は、ASDのスペクトラム内での個々の位置を特定し、個別のニーズに合わせた支援や介入の計画を立てる際の参考になります。
重症度の測定によって、対象者に最適な教育的、治療的介入を提供するための指針が得られます。
介入計画の立案
CARS2を用いることで、個々の評定結果を基に、対象者に最適化された介入計画を立案することが可能になります。
各項目の評定から得られる情報は、対象者の強みと課題を明らかにし、個別のニーズに応じた支援を設計する際の貴重な情報源となります。
介入計画は、教育や療育、社会的スキルの向上を目指す際に、具体的かつ個別化されたガイドラインを提供します。
保護者への報告
CARS2は、保護者に対して子供のASDの診断や重症度、そして個別の特性についてわかりやすく伝えるための枠組みを提供します。
各項目の評定結果は、観察や面接、その他の資料に基づいた包括的な情報を総合することで、子供の行動や理解の特性を保護者に明確に示すことができます。
この透明性と情報提供は、保護者が子供の状態を理解し、適切な支援や介入を求める際の基盤となります。
特徴
では、このCARS2の特徴とはなにがあげられるでしょうか？
ここでは…
- 広範囲の年齢に対応
- 高い信頼性と妥当性
- 利用の容易さ
…について解説します。
広範囲の年齢に対応
CARS2は、幅広い年齢層に対応しており、幼児期から成人に至るまでの自閉スペクトラム症の特徴を評価することができます。
このツールは年齢に応じた評価を可能にし、生涯にわたる支援のニーズを把握する上で重要な役割を果たします。
年齢に応じた適応性は、対象者の発達段階に合わせた正確な診断と介入の計画をサポートします。
高い信頼性と妥当性
CARS2は、その信頼性と妥当性が広く認められており、ASDの診断におけるゴールドスタンダードの一つとされています。
このツールは、多くの研究でその有効性が検証されており、ASDの評価における信頼できる手段として専門家に利用されています。
信頼性と妥当性の高さは、診断と介入計画の精度を向上させる上で不可欠です。
利用の容易さ
CARS2は、専門家が容易に使用できるように設計されています。
評価は短時間で完了することが多く、特別な訓練を受けた専門家ならば迅速に結果を解釈することができます。
この利便性は、忙しい臨床環境でも効率的にASDの評価を行うことを可能にし、早期発見と早期介入へとつながります。
利用の容易さは、広範な環境でのCARS2の適用を促進し、多くの個人に対するアクセスを改善します。
方法
CARS2の評価方法としては…
- 評定用紙の選択
- 情報収集
- 評定とスコアリング
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
評定用紙の選択
CARS2を用いた評価過程の初めに、評価者は対象者の年齢、知能指数（IQ）、および意思伝達の流暢さを考慮して、標準版または高機能版の評定用紙を選択します。
この選択プロセスは、対象者の特性や能力に最も適したツールを用いることで、より正確な評価を行うために不可欠です。
標準版は一般的に広範囲の機能レベルを持つ個人に使用され、高機能版は通常のまたは平均以上の知能を持ち、言語的表現が流暢な個人向けに設計されています。
保護者やケアギバーから提供される情報も評価の過程で重要であり、保護者用質問紙を通じて得られたデータは、最適な評定用紙の選択を助ける貴重な資源となります。
情報収集
評価の次の段階では、対象者の行動を直接観察し、保護者やケアギバーからの聴き取りを通じて評価に必要な情報を収集します。
このプロセスは、対象者の日常生活での振る舞い、コミュニケーションのスタイル、社会的相互作用の特性など、ASDの典型的な特徴に関する深い理解を得るために重要です。
保護者用質問紙を使用した面接もまた、対象者の行動や発達の歴史についての重要な情報を提供します。
この段階では、評価者は対象者の強みと課題領域の両方を包括的に評価し、その情報をもとにCARS2の各項目に対する評定のための基礎を築きます。
評定とスコアリング
CARS2の評定過程では、評価者は収集した情報をもとに各項目に対してスコアを割り当てます。
各版（標準版と高機能版）には15項目が含まれており、これらの項目はASDの核心的な特徴をカバーしています。
評定後、得られたスコアは合計され、対象者がASDスペクトラム上のどの位置にあるかを示す結果が得られます。
このスコアリングプロセスは、対象者の行動の特徴がASDの診断基準にどの程度一致するかを定量的に評価し、その結果を解釈するために不可欠です。
スコアリングの結果は、個々のニーズに合わせた支援や介入計画の策定に役立つ重要な情報を提供します。