拘縮の原因は多岐にわたり、それぞれのケースで異なる生理学的、病理学的メカニズムが関与しています。
本記事ではこの拘縮の原因について解説します。
拘縮の原因
拘縮の原因として…
- 構造的変化
- 非骨組織の変化
- 繰り返しの出血
- 繰り返しの注射による筋肉の線維化
- 遺伝的要因
- 関節の不動
- 炎症と筋肉の変化
- スポーツによる繰り返しの張力
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
構造的変化
関節周囲の軟部組織(筋肉、靭帯、腱)の構造的変化が、関節の動きを制限し拘縮を引き起こすことがあります1)。
これらの組織は通常、関節の動きをサポートし、調整する役割を果たしています。
しかし、怪我、炎症、運動不足などによる損傷や変性が生じると、関節の可動範囲が制限され、動きが硬くなることがあります。
非骨組織の変化
筋肉、靭帯、腱などの非骨組織の構造変化は、関節の可動性の喪失と拘縮の主要な原因の一つです2)。
これらの組織の健康は、適切な関節の機能と密接に関連しています。
慢性的なストレス、炎症、あるいは加齢による変性などがこれらの組織の弾力性や機能を低下させ、結果として関節の動きが制限されることがあります。
繰り返しの出血
慢性の関節内出血は、関節周囲の組織に線維芽細胞の増殖や線維化を促し、進行性関節症のリスクを高めることがあります3)。
特に血友病などの出血傾向がある状態では、関節内に繰り返し出血が生じることがあり、これが長期的な関節機能の低下や拘縮につながる可能性があります。
繰り返しの注射による筋肉の線維化
成人において、同じ部位への繰り返し注射は筋肉の線維化を引き起こす可能性があります4)。
筋肉の線維化は、筋肉組織内に瘢痕組織が形成されることで、筋肉の伸縮性が低下し、その結果として関節の可動範囲が制限される可能性があります。
遺伝的要因
環境的要因と同様に、遺伝的要因も関節拘縮の発生に影響を与える可能性があります5)。
特定の遺伝的傾向や疾患が、関節や周囲の組織の発達に影響を及ぼし、拘縮のリスクを高めることがあります。
関節の不動
関節の不動はリハビリの臨床でみられる拘縮の主要な原因の一つになります。
長期間にわたる不動や不活動は、関節包の線維化や筋肉の萎縮を引き起こし、関節の可動範囲を制限します6)。
これは特に、外傷後の回復期や手術後の固定期間によく見られる問題です。
炎症と筋肉の変化
炎症に伴う筋肉の変化が関節拘縮の形成に寄与することが示唆されています7)。
炎症は、関節周囲の組織に影響を及ぼし、筋肉の硬直や関節の動きの悪化を招くことがあります。
スポーツによる繰り返しの張力
投げるスポーツ選手に見られる関節拘縮は、組織にかかる繰り返しの張力に対する反応と考えられています8)。
この繰り返しの負荷は、関節や周囲の組織に慢性的なストレスを与え、時間の経過とともに拘縮を引き起こす可能性があります。
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関連文献
参考
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- 2)Clark-Jones, A. (1965). The general practitioner. Physiotherapy, 51 11, 354-5 . https://doi.org/10.3138/9781442652927-004.
- 3)Sohail, M., & Warraich, W. (2008). Lengthening of Hamstring Tendons in Knee Flexion Contractures. , 171-174. https://doi.org/10.1007/978-88-470-0854-0_23.
- 4)Oh, I., Smith, J., Spencer, G., Frankel, V., & Mack, R. (1977). Fibrous contracture of muscles following intramuscular injections in adults. Clinical orthopaedics and related research, 127, 214-9 . https://doi.org/10.1097/00003086-197709000-00033.
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- 6)Chimoto, E., Hagiwara, Y., Ando, A., & Itoi, E. (2007). Progression of an arthrogenic motion restriction after immobilization in a rat experimental knee model. Upsala Journal of Medical Sciences, 112, 347 – 355. https://doi.org/10.3109/2000-1967-207.
- 7)Kaneguchi, A., Ozawa, J., Moriyama, H., & Yamaoka, K. (2017). Nociception contributes to the formation of myogenic contracture in the early phase of adjuvant‐induced arthritis in a rat knee. Journal of Orthopaedic Research, 35. https://doi.org/10.1002/jor.23412.
- 8)Dashottar, A., & Borstad, J. (2012). Posterior Glenohumeral Joint Capsule Contracture. Shoulder & Elbow, 4, 230 – 236. https://doi.org/10.1111/j.1758-5740.2012.00180.x.