AASP(青年・成人感覚プロファイル) – 特徴・方法・解釈・関連研究について

検査

青年や成人の感覚処理の傾向を評価するツールである”AASP(青年・成人感覚プロファイル)”。
本記事ではその特徴や方法、解釈や関連研究について解説します。


AASP青年・成人感覚プロファイルとは?

「AASP(青年・成人感覚プロファイル)」は、青年や成人の感覚処理の傾向(低登録、感覚探求、感覚過敏、感覚回避)を評価するために用いられる検査です。
この検査では、個人が日常生活における感覚情報(味覚・嗅覚、動き、視覚、触覚、活動レベル、聴覚)に関する質問に対し自分で回答し、検査者がスコアを集計します。

検査結果から、感覚処理の傾向を評価し、どのような支援が有効かを示すガイドラインが提供されます。

感覚処理の4つの傾向について

ここで、この”感覚処理の4つの傾向”について少し触れてみます。
この4つの傾向とは…

  • 低登録(Low Registration):高いしきい値を持ち、受動的な自己調整を示す。刺激に気づきにくい。
  • 感覚探求(Sensation Seeking):高いしきい値を持ち、積極的な自己調整を示す。新しい刺激や経験を求める。
  • 感覚過敏(Sensory Sensitivity):低いしきい値を持ち、受動的な自己調整を示す。刺激に対して過敏で、容易に気づく。
  • 感覚回避(Sensory Avoidance):低いしきい値を持ち、積極的な自己調整を示す。刺激を避ける傾向がある。

…になります。

これはDunnの感覚処理モデルという個人の感覚処理の違いを理解するための理論的枠組みで解説できるね!
検査結果の解釈のためにもこの4つについては把握しておく必要がありますね!

概要と評価方法

AASPは、上述したようにDunnの感覚処理モデルに基づいており、感覚刺激への反応傾向を4つの象限(低登録、感覚探求、感覚過敏、感覚回避)で評価します。
方法としては、評価対象者が自分で質問票に回答し、検査者がスコアを集計し解釈します。
実施時間としてはおおよそ10分~15分といわれています。

対象年齢

AASPの対象年齢は11歳~82歳とされています。

質問票の構成

質問票は、味覚・嗅覚、動き、視覚、触覚、活動レベル、聴覚の6つの感覚処理カテゴリーに分けられています。
全部で60問の項目があります。

評価の枠組み

4つの象限について、年齢群別のカットスコアを用いて5段階で評価されます。
各象限でのスコアが「高い」場合と「低い」場合についての支援ガイドラインが提供されています。

スコアの解釈

6つの感覚処理カテゴリー内またはカテゴリー間で、項目スコアがどのようにまとまっているかを検討するための「パターン別スコア表」が用意されています。

他者評定式との併用

他者評定式の「感覚プロファイル」と併用することで、保護者と子どものニーズに基づいた育児ストラテジーの特定などに活用できます。

利用分野

教育、医療、研究、福祉などの分野で、評価対象者の感覚処理傾向を考慮した支援計画を立案する際に有益な情報が提供されます。
これらの特徴は、AASPが感覚処理の理解と支援において重要なツールであることを示しています。

自己評価で行えること、比較的実施時間が短いことから臨床でも有用性は高いといえるね!
対象年齢も幅広いですからリハビリの多くの現場で使えそうですね!

AASPの関連研究

ここではAASPに関する研究について解説します。

強迫性障害を持つ成人の感覚処理

2009年のRiekeらによる、AASPを使用して強迫性障害(OCD)を持つ成人の感覚処理が一般人口とどのように異なるかを記述した研究です。
この研究によると、OCDを持つ成人は、感覚過敏性と感覚回避性が高く、感覚探索性が低いことを示しているとされています。
これは思春期/成人感覚プロファイル(AASP)の識別的妥当性を裏付けています1)

若年成人における感覚処理と脳白質の関係の解明

2021年のShiotsuらによる、若年成人を対象にAASPスコアと脳白質経路の神経接続性を調査し、感覚処理と脳の構造間の関係を示した研究です。
これによると帯状回束(CCG)と鉤状束 (UNC) は、若年成人の感覚処理レベルを決定する重要な白質微細構造であり、感覚の感度が向上し、白質の拡散率の増加に関連した感覚の回避が行われるとされています2)

青年期初期のレジャー参加における感覚処理の予測

2001年のChoiらによる研究です。
この研究では、青年期初期の子どもたちを対象にAASPを使用し、感覚処理がレジャー活動への参加に与える影響を調査しました。
これによって感覚探求と感覚過敏がレジャー参加に予測的であることが示されています3)

自閉症スペクトラム障害(ASD)の青年におけるバーチャルリアリティを用いた感覚処理評価

2021年のAnkitらによる研究です。
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ青年を対象に、バーチャルリアリティ(VR)を用いた感覚処理評価システムと、従来のアドレセント/アダルト感覚プロファイル(AASP)とを比較しました。
結果とpして、VRシステムを使用することで、ASDを持つ青年と典型的な発達をする青年の間の感覚処理の違いを、AASPよりも明確に識別できたことが示されました4)

ヘブライ語版AASPの妥当性検証

2012年のEngel-Yegerによる、イスラエル人における感覚処理困難をスクリーニングするために、ヘブライ語版AASPを用いた研究です。
この研究は、ヘブライ語版がイスラエルの典型的な青年と成人の感覚処理困難をプロファイリングするのに成功したことを示しています5)

これらの研究をみるとAASPは感覚処理を軸に脳機能や発達障害の研究にまで利用できるってこともわかるだろうね!
多くの言語に翻訳されているという点も検査ツールとしての有用性の高さが示されているんでしょうね!

参考

  • 1)Rieke, E., & Anderson, D. (2009). Adolescent/adult sensory profile and obsessive-compulsive disorder.. The American journal of occupational therapy : official publication of the American Occupational Therapy Association, 63 2, 138-45 . https://doi.org/10.5014/AJOT.63.2.138.
  • 2)Shiotsu, D., Jung, M., Habata, K., Kamiya, T., Omori, I., Okazawa, H., & Kosaka, H. (2021). Elucidation of the relationship between sensory processing and white matter using diffusion tensor imaging tractography in young adults. Scientific Reports, 11. https://doi.org/10.1038/s41598-021-91569-6.
  • 3)Choi, Y., & Jung, H. (2021). Sensory Processing as a Predictor of Leisure Participation in Early Adolescents. Children, 8. https://doi.org/10.3390/children8111005.
  • 4)Koirala, A., Yu, Z., Schiltz, H., Hecke, A., Armstrong, B., & Zheng, Z. (2021). A Preliminary Exploration of Virtual Reality-Based Visual and Touch Sensory Processing Assessment for Adolescents With Autism Spectrum Disorder. IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering, 29, 619-628. https://doi.org/10.1109/TNSRE.2021.3064148.

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