バレー徴候は上下肢の麻痺を診断する神経学的検査で、脳の病変を早期に発見するために重要です。
本記事では特徴や方法、やり方、陽性・陰性の判別について解説します。
バレー徴候(Barre’s Sign)とは?
バレー徴候(Barré sign)は、手足の軽い麻痺を発見するための神経学的検査で、特に上肢拳上試験として日本で広く用いられています。
この検査は、脳梗塞や脳出血など、特に錐体路障害の存在を評価するのに役立ちます。
上肢のバレー徴候 (Barre’s Sign)のやり方
まず上肢のバレー徴候の評価方法として、ここでは…
- 試験の手順
- 麻痺の徴候
- 錐体路障害と筋緊張
…について解説します。
試験の手順
腕の位置: 患者に両腕を前方に水平に持ち上げてもらいます。手のひらは上向きにし、腕は肩の高さまで上げます。
目の状態: 患者は目を閉じ、指示された腕の位置を保持します。
麻痺の徴候
第5指徴候: 麻痺がある場合、麻痺側の小指が離れることがあります。これは、手の筋肉の不均衡によって起こります。
上肢の動き: 麻痺があると、上肢が回内しながら下に落ちることがあります。これは、麻痺側の手のひらが内側に曲がりながら回る動きです。
錐体路障害と筋緊張
錐体路障害: 上肢の錐体路障害では、回内筋と屈筋の緊張がそれぞれ回外筋と伸筋の緊張よりも強くなります。
筋肉の不均衡: この筋肉の緊張の不均衡が、上述の徴候(第5指徴候や上肢の下降)を引き起こします。
下肢のバレー徴候 (Barre’s Leg Sign)のやり方
また、下肢のバレー徴候 の評価方法として、ここでも…
- 試験の手順
- 麻痺の徴候
- 錐体路障害と筋緊張
…について解説します。
試験の手順
患者の姿勢: 患者はベッドにうつ伏せになります。
膝の位置: 患者に両膝関節を直角に曲げて保持してもらいます。このとき、膝関節はベッドと接しないようにすることが重要です。
麻痺の徴候
下肢の動き: 麻痺がある場合、麻痺側の下肢は自然に下降したり、落下したりすることがあります。また、下肢が一時的に落下してから元に戻る動きを示すこともあります。
徴候の意味: これらの動きは、下肢の筋肉の緊張の不均衡によって起こります。特に麻痺側では、伸筋の緊張が屈筋よりも強くなる傾向があります。
錐体路障害と筋緊張
錐体路障害: 下肢の錐体路障害においては、通常、伸筋の緊張が屈筋よりも優位になります。
筋肉の不均衡: この緊張の不均衡が、下肢の自然な下降や落下などの徴候を引き起こす原因となります。
バレー徴候の陽性と陰性の判別について
バレー徴候は、神経学的疾患の診断において重要な手がかりとなる検査です。
ここではバレー徴候の…
- 陽性
- 陰性
…の判別についてのポイントを解説します。
バレー徴候の陽性
バレー徴候が陽性である場合、上肢では患者が両腕を水平に持ち上げた状態で目を閉じると、麻痺側の上肢が徐々に下降し、手のひらが内側に回転する現象が観察されます。
また、手の小指が離れる「第5指徴候」も確認されることがあります。
この現象は、錐体路障害により回内筋と屈筋の緊張が強くなり、回外筋や伸筋よりも優位に働くためです。
下肢では、患者がうつ伏せで膝を直角に曲げて保持する際に麻痺側の下肢が自然に下降または落下することが見られます。
これもまた錐体路障害によるもので、脳梗塞や脳出血などの神経学的疾患の存在を示唆し、早期の診断と治療の必要性を強調します。
バレー徴候の陰性
バレー徴候が陰性の場合、上肢では患者が両腕を水平に持ち上げ目を閉じても、麻痺側の上肢に特異的な下降や回内などの動きが見られないことを意味します。
これは、錐体路障害が存在しないか、影響が少ないことを示唆します。
同様に、下肢のバレー試験で陰性の場合、患者がうつ伏せで膝を曲げて保持した際、麻痺側の下肢が安定しており、自然に落下する現象が見られないことを指します。
陰性の結果は、神経学的な問題がないか、または他の要因によるものかもしれませんが、必ずしも疾患の有無を完全に否定するものではなく、さらなる検査が必要です。
バレー徴候が陽性の原因は?
バレー徴候が陽性となる主な原因は、脳や脊髄の錐体路と呼ばれる神経経路の障害にあります。
錐体路は脳の運動野からの指令を上肢や下肢に伝える重要な経路で、この経路が損傷を受けると適切な運動指令が伝達されなくなります。
具体的には、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が代表的な原因で、これにより錐体路がダメージを受け、体位の維持が困難になります。
また、脊髄損傷や多発性硬化症など、錐体路に影響を与える神経疾患もバレー徴候が陽性となる原因です。
これらの障害によって運動機能が低下し、特定の姿勢を保てなくなるため、バレー徴候が陽性として現れます。