MAS(Modified Ashworth scale ) – 痙縮・筋緊張の評価方法と注意点について

MAS(Modified Ashworth scale ) - 痙縮・筋緊張の評価方法と注意点について 検査

中枢性疾患における痙縮・筋緊張の評価方法で代表的なものとしてMAS(Modified Ashworth scale:修正アシュワーススケール)があげられます。
今回はこのMASの方法や注意点について解説します。


Modified Ashworth scale (MAS)とは?

Modified Ashworth Scale(MAS:修正アシュワーススケール)は、もともと1964年にAshworthらによって開発され、多発性硬化症に伴う痙縮の評価と抗痙性薬の効果判定に使用されていました。
このスケールはその後改修され、脳血管障害や頭部外傷、脊髄損傷、脳性麻痺など中枢神経系の障害を持つクライアント全般に対して適用されるようになりました。

痙縮は、上位運動ニューロンの障害によって、筋肉の緊張が意志に関わらず異常に高まり、四肢が固まったり伸ばしづらくなる症状だね!
現在、MASは理学療法のリハビリテーションの現場だけでなく、ボトックスなどの臨床試験にも広く利用されていますね!

MASの評価段階について

Modified Ashworth Scale(MAS)では痙縮のを以下の6つの段階に分類します。

  • 0: 筋緊張の亢進はない
  • 1: 軽度の筋緊張の亢進がある
  • 1+: 軽度だが明瞭な筋緊張の亢進がある
  • 2: 顕著な筋緊張の亢進がほぼ全可動域でみられる
  • 3: かなりの筋緊張の亢進がみられ、他動運動は難しい
  • 4: 患部が固まり他動屈曲・伸展が困難である

それぞれ解説します。

レベル0: 筋緊張の亢進はない

この段階では、筋肉に異常な緊張が見られません。
患者の筋肉が正常な状態を保っており、四肢を動かす際に抵抗感や硬さがありません。
この状態が理想的で、痙縮が存在しないことを示しています。

リハビリテーションの目標は、この状態を維持または達成することにあります。

レベル1: 軽度の筋緊張の亢進がある

患者の筋肉にわずかな緊張が存在し、特に運動の最終域で軽度の抵抗が感じられます。
この抵抗は、引っかかりとして感じられ、それがすぐに消失します。

この段階の痙縮は軽度であり、日常生活における影響は限定的ですが、注意深い観察が必要です。

レベル1+: 軽度だが明瞭な筋緊張の亢進がある

この段階では、筋肉の引っかかりがより明確で、可動域の半分以下でわずかな抵抗が持続します。
これは、筋肉の痙縮が少し進行している状態を示しており、療法や介入が求められる場合があります。

この軽度の痙縮が、特定の動作や活動において困難を引き起こす可能性があります。

レベル2: 顕著な筋緊張の亢進がほぼ全可動域でみられる

患者は筋肉全体にわたって顕著な緊張を示しますが、他動運動はまだ容易に行えます。
この段階の痙縮は、より積極的なリハビリテーション介入を必要とします。

患者の動作の自由度は制限される可能性があり、特に精密な動きを要求する活動においては顕著な困難が生じるかもしれません。

レベル3: かなりの筋緊張の亢進がみられ、他動運動は難しい

このレベルでは、筋肉の緊張が非常に高く、他動運動を行うことが難しくなります。
日常生活において顕著な支障を来すことが多く、患者は多くの基本的な動作も自力で行うことが困難です。

この段階の痙縮には、集中的な治療や管理が必要です。

レベル4: 患部が固まり他動屈曲・伸展が困難である

最も重度の痙縮の段階で、筋肉はほとんどまたは完全に固まっています。
他動運動は非常に困難で、この状態は患者の生活の質に深刻な影響を及ぼします。

このレベルの痙縮では、多職種の専門家チームによる総合的な介入が必要とされ、しばしば外科的な手段も検討されます。

中枢疾患で多くみられる症状の一つがこの“痙縮”だからね!
この痙縮の程度をしっかりと把握することが、適切な治療介入につながるってことを理解していないといけませんね!

MASの注意点について

Modified Ashworth Scale(MAS)を行う際の注意点としては…

  • 評価の一貫性
  • 速度の調整と総合的な判断
  • 複数回の評価と患者の姿勢
  • 速度依存性
  • 評価前の準備

…などがあげられます。
それぞれ解説します。

評価の一貫性

Modified Ashworth Scale(MAS)を使用する際には、評価の一貫性が非常に重要です。
関節運動の速度が筋緊張の評価に大きく影響するため、評価は常に一貫した速度で行われるべきです。

一貫性を欠くと、異なる評価者間や同一評価者でも異なる結果が出ることがあり、痙縮の正確な評価が困難になります。

速度の調整と総合的な判断

痙縮の評価において、関節運動の速度を調整し、引っかかる角度を特定することが推奨されます。
速度を変えて評価することで、痙縮の程度が異なる反応を示すことがあり、これらの情報を総合して痙縮の実際の状態をより正確に把握することができます。

複数回の評価と患者の姿勢

痙縮の評価は一度ではなく、複数回実施して最も一貫した結果を用いることが望ましいです。
また、患者の姿勢が評価結果に大きく影響するため、患者はリラックスした状態で安楽な姿勢を取っている必要があります。

不適切な姿勢は筋緊張を誤って高く評価する原因となり得ます。

速度依存性

痙縮の特性として、速度依存性があります。関節を速く動かすほど、痙性が強く現れる傾向にあります。
この特性を理解し、評価中に適切な速度で関節を動かすことが、痙縮の正確な評価には不可欠です。

評価前の準備

MASの評価を行う前には、可動域テストを先に行うことが一般的ですが、ストレッチによる短期的な効果がMASのスコアに影響を与える可能性があります。
そのため、最も正確な評価を得るためには、MASは可動域評価の前に行うことが推奨されます。

MASを使用する際は、評価の一貫性と正確性を確保するために、一定の速度での運動実施や患者の姿勢の適正化が非常に重要なんだ!
正しい手順と注意点を守ることで、痙縮の評価がより信頼性のあるものとなり、適切な治療計画の策定に役立ちますね!

MASのエビデンスグレードについて

Modified Ashworth Scale(MAS)のエビデンスグレードとしては“B”になります。
ここでは…

  • エビデンスグレード“B”の意義
  • 評価者内信頼性と評価者間信頼性
  • 評価の標準化と訓練の重要性

…という観点から解説します。

エビデンスグレード“B”の意義

MASがエビデンスグレード“B”とされていることは、この評価ツールが一定の科学的根拠に基づいて中枢神経系の疾患における痙縮の程度を測定するために広く用いられていることを示しています。
このグレードは、MASが痙縮の評価において信頼できるツールであり、治療介入の決定に有効であることを意味していますが、最も高い信頼性を示すエビデンスグレードではないため、臨床での適用にあたってはさらなる検証が必要です。

評価者内信頼性と評価者間信頼性

異なる患者グループにおけるMASの評価者内信頼性が中程度から良好であることは、同一評価者が一貫して信頼性のある結果を提供できることを示しています。
しかし、評価者間信頼性が低程度から中程度であるという点は、異なる評価者が同じ患者を評価した場合に結果に一定のばらつきが生じる可能性があることを意味しており、これは評価の標準化と評価者の訓練が不可欠であることを強調しています。

評価の標準化と訓練の重要性

MASを使用する際の評価者の訓練と経験が重要であるとされる理由は、評価者間の信頼性を向上させることができるからです。
正確な評価を行うためには、標準化されたプロトコルに従い、評価者が一貫した方法で評価を実施することが必須です。
このアプローチにより、MASの臨床的な有用性を最大限に活かし、患者の適切な治療計画の策定に寄与することができます。

MASはエビデンスグレード”B”に位置づけられ、痙縮の評価に一定の科学的根拠があることが認められていますが、評価者間の信頼性にばらつきがあるため、評価の標準化と評価者の適切な訓練が不可欠なんだ!
これにより、MASを用いた痙縮の正確な評価が可能となり、治療介入の質を向上させることができますね!

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