脳卒中や脊髄損傷のリハビリの臨床でみられる”痙縮”という症状。
本記事ではこの痙縮について解説します。
痙縮とは?
痙縮(spasticity)とは、筋肉が無意識的に収縮し、持続的な筋力の増加を引き起こす状態です。
これは、中枢神経系の障害や神経筋接合部の異常な刺激によって引き起こされることがあります。
痙縮は、筋肉の硬直や運動の制限、痛みなどの症状を引き起こすことがあります。
痙縮のメカニズム
ではこの痙縮はどのようなメカニズムで生じるのでしょうか?
ここでは…
- 上位運動ニューロンによる影響
- 筋紡錘による影響
- 拘縮による影響
…について解説します2)
上位運動ニューロンによる影響
上位運動ニューロンによる影響では、視蓋脊髄路と赤核脊髄路、皮質脊髄路、網様体脊髄路、前庭脊髄路が関与しています。
筋紡錘による影響
筋紡錘による影響では、筋紡錘の感度の変化が原因とされています。
拘縮による影響
拘縮による影響では、筋の弾性が低下することで、筋紡錘の感度が低下し、過剰に反応することで適応しようとします。
その結果、痙縮のような筋緊張が高まった状態が起こります。


痙縮の原因
痙縮は、脳からの信号の乱れによって引き起こされ、脳卒中、外傷性脳損傷、多発性硬化症、脊髄損傷、脳性麻痺などの状態に関連します
これらの疾患によって、筋肉の収縮と弛緩を自動的に調整する脳と脊髄のアンバランスが引き起こされ、痙縮が生じることがあります。
痙縮の種類
痙縮はいくつかの種類にわけられます。
- 局所性痙縮
- 全身性痙縮
- 痙攣性痙縮
- 強直性痙縮
以下にそれぞれ解説します。
局所性痙縮
局所性痙縮とは、特定の筋肉群に限局した痙縮のことです。
例えば、書痙、音楽家のジストニアなどがあります、
局所痙縮は、良性特発性の下肢痙攣、運動に伴う筋痙攣、筋骨格系の異常、末梢神経系の異常、または非対称性となりうる早期の変性疾患(運動ニューロン疾患など)を示唆することがあります2)>。
全身性痙縮
全身性痙縮とは、全身の筋肉に及ぶ痙縮のことです。
身体が捻じ曲がったり、反り返ったりするなどの姿勢の異常などが見られます。
この全身性痙縮は、さらに間代性痙攣と強直性痙攣に分けられます。
間代性痙攣は、筋肉が収縮と弛緩を反復するもので、四肢は伸展と屈曲を繰り返します。
強直性痙攣は、筋肉の収縮が持続し、緊張してこわばった状態になるため、四肢は強く伸展したまま、あるいは屈曲したままとなります。
痙攣性痙縮
痙攣性痙縮とは、筋肉が痙攣するように収縮する痙縮のことです3)>。
例えば、片麻痺性痙攣、痙性斜頚などがあります。
強直性痙縮
強直性痙縮とは、筋肉が硬直するように収縮する痙縮のことです。
例えば、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症などが挙げられます。


参考
1)Francisco, Angulo-Parker., Joshua, M., Adkinson. (2018). Common Etiologies of Upper Extremity Spasticity.. Hand Clinics, 34(4):437-443. doi: 10.1016/J.HCL.2018.06.001
2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/42/4/42_205/_pdf
3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/50/7/50_505/_pdf/-char/ja