抑うつ状態の自己評価ツールのなかでも、一般的に多く使われている検査の一つがこの“SDS”かもしれません。
今回はSDSの方法や注意点、点数の解釈やカットオフについて解説します。
そもそも“抑うつ”とは?
抑うつ…とは精神的、心理的に気分が落ち込んでいて、なにか活動を行うことを避けるような状況を指します。
このためその人の思考や行動、感情や幸福感といったものに影響がでていることがほとんどです。
“うつ病”と混合されがちですが、あくまで“抑うつ”は症状のことを指します。
SDS検査について
うつ性自己評価尺度(Self-rating Depression Scale:SDS)は、1965年、米国デューク医科大学精神科教授W.Zung(ツアン)博士によって作成された自己評価尺度です。
クライアントの抑うつ状態の程度をみるために作成された検査スケールになります。
日本では心理テスト出版を扱う“株式会社三京房”が著作権を所有し販売しています。
特徴
SDSはうつ症状を簡便にかつ定量的に評価することをねらいとしていることから短時間で実施することができるようにつくられています。
また、質問数も20項目と比較的少ないことから、うつ状態でなにをするにも意欲的に取り組みにくい被験者にも負担が少なく簡単に実施することができます。
回答方法も「ない・ときどき・かなりのあいだ・ほとんど」の4つの選択肢から選ぶ方法になっています。
20項目のうち2項目は主感情、8項目は生理的随伴症状、10項目は心理的随伴症状を評価します。
その質問内容も陽性質問と陰性質問が10項目ずつの半々になっており、その順番もランダムなため答案パターンがわかりにくくつくられている点も特徴といえます。
もちろん多くのデータを背景にしていることもあって、正常、神経症、うつ病の3郡の平均値は危険率1%以下で有意差があり、妥当性が高いテストといわれています。
実施時間
概ね10~15分程度で実施可能です。
適応外
SDSは基本的に自己評価で行っていく検査のため、自分で解答用紙に記入するor選択肢を選ぶという能力がないと成立しません。
なので重度の意識障害やコミュニケーション障害のクライアントは適応外として扱われます。
注意点
SDSを実施する際の注意点は、GDSの検査の時同様、被験者の心理への配慮が必要になってきます。
回答する際の取り組み方や表情、しぐさ、会話の状態と言った点にまで注意を向ける必要があります。
方法
「ない」、「ときどき」、「かなりのあいだ」、「ほとんどいつも」の4段階に自己評価していきます。
また4段階の自己評価以外にも“Global Rating”の欄があるため、検者が検査時の被験者の印象を点数化し、SDSの点数結果と比較することができます。
*SDSの20の質問項目と配点については株式会社 三京房にお問い合わせください。
点数とカットオフ
20の質問を全部回答した時の最低得点は20点、最高得点は80点で、カットオフ値は40点になります。
また、点数とうつ状態の重症度については以下の通りになります。
抑うつ以外のスクリーニング検査として
SDSは抑うつ判定以外にも精神衛生の為の情意状態(感情と意志の状態)をスクリーニングする事にも応用することが出来ます。
SDSは様々な場所で使われている
SDSの検査をするのに特別な資格はありません。
もちろん解釈や結果に対しての対応などのためには専門的な知識や経験が必要になってきますが、あくまでもクライアントの抑うつ状態の把握をする、という場合に使用するには資格的な制限がないことから非常に多くの分野で使用されています。
病院、クリニックといった医療機関はもちろん教育機関や、産業医、産業カウンセラーといった労働者に対して行う場合もあるため一般企業でも実施される場合があるようです。
早期に抑うつ状態の程度を把握し対処することが様々な機関で必要とされているといえます。