SRQ-DⅡは、18歳以上を対象に短時間でうつ病の可能性をスクリーニングする質問紙です。
本記事ではこの目的や特徴、方法などについて解説します。
SRQ‐DⅡとは?
SRQ-DⅡ(Self Rating Questionnaire for Depression Second Edition)は、うつ病スクリーニングのための質問紙検査です。
東邦大学心療内科SRQ-DⅡ研究会によって編纂されました。
この心理検査は、15項目の質問で構成されており、「いいえ」から「常に」までの4段階で回答します。
目的
SRQ-DⅡの目的として…
- うつ病のスクリーニング
- 専門医の診断評価への導入
- 結果の解釈のためのカットオフ値の使用
…があげられます。
それぞれ解説します。
うつ病のスクリーニング
SRQ-DⅡは、うつ病の可能性を迅速に評価するためのスクリーニングツールとして設計されています。
このツールの主要な目的は、短時間で簡便にうつ病の兆候を見つけ出すことにあります。
プライマリケアやメンタルヘルスの分野で活用されることが多く、患者自身が自分の状態を評価するための基準を提供します。
15項目の質問が含まれており、それぞれの質問は、「いいえ」から「常に」までの4段階で回答されます。
この質問紙は、患者が自身の心理的、感情的状態を自己報告するのを容易にし、早期介入や治療への道を開くことができます。
専門医の診断評価への導入
うつ病のスクリーニングを行う際、SRQ-DⅡは専門医によるより詳細な診断評価の必要性を判断するための基準として機能します。
このツールによる評価は、うつ病の兆候を示す人々を早期に識別し、必要に応じて精神医学的な専門家への紹介を容易にすることを目的としています。
これにより、専門的な診断と治療が早期に行われる可能性が高まり、回復のチャンスが向上します。
結果の解釈のためのカットオフ値の使用
SRQ-DⅡの結果はカットオフ値を用いて解釈されます。
このカットオフ値は、うつ病の可能性のあるレベルを定義するために使用され、検査結果をもとに、患者が専門的な診断や治療を受けるべきかどうかを判断する際のガイドラインとなります。
この目的は、不必要な専門家による評価を避け、一方で必要なケースでは迅速に対応を促すことにあります。
カットオフ値を用いることで、検査結果の客観性と信頼性が保証され、より効率的なメンタルヘルスケアが実現します。
特徴
SRQ-DⅡは、うつ病のスクリーニングを目的とした質問紙で次のような特徴があります。
- 短時間での評価可能性
- プライマリケアでの活用
- 専門医による診断への導き
- 広範な適用範囲
それぞれ解説します。
短時間での評価可能性
SRQ-DⅡは15項目から構成されており、回答時間は約5分、採点に2分程度という短時間で完了することができます。
この特徴は、忙しいクリニックや医療機関、企業や学校などでのメンタルヘルスチェックに最適です。
時間が限られている中でも、迅速にうつ病のスクリーニングを行いたい場合に有効であり、大勢の対象者を効率良く評価することが可能です。
プライマリケアでの活用
SRQ-DⅡはプライマリケアの設定で特に有用です。
一次医療提供者は、多様な健康問題に対応する中で、メンタルヘルスの問題を見逃しやすいことがあります。
この質問紙は、非精神科の医療従事者でも容易に使用でき、うつ病の早期発見に役立ちます。
患者が自身で回答することで、診察の際の会話の手がかりとなり、患者と医療提供者間のコミュニケーションを促進します。
専門医による診断への導き
このツールは、患者が専門医によるさらなる評価や治療を必要としているかどうかを判断するのに役立ちます。
スクリーニング結果に基づき、うつ病の疑いが高い個人を早期に特定し、適切な専門家への紹介を促進することが可能です。
これにより、必要な治療を受けられるまでの時間が短縮され、治療成績の改善に繋がることが期待されます。
広範な適用範囲
18歳以上の個人を対象としており、心療内科や精神科、心理相談機関だけでなく、内科、皮膚科、耳鼻科、歯科などのクリニック、病院の総合診療科、職場や学校でのメンタルヘルスチェック、福祉・介護の現場など、多岐にわたるシーンで利用されます。
これにより、多様な環境や状況においてうつ病のスクリーニングが可能となり、より広い範囲でのメンタルヘルスケアの向上が図れます。
適用範囲
SRQ-DⅡの適用範囲は18歳以上の個人です。
この心理検査は、特に次のような多様な場面や環境で利用されることを目的として設計されています。
- 心療内科や精神科、心理相談機関
- 内科、皮膚科、耳鼻科、歯科などのクリニック
- 職場でのメンタルヘルスチェック
- 福祉・介護の現場
- 大学、専門学校等の教育機関
以下にそれぞれ解説します。
心療内科や精神科、心理相談機関
これらの専門的な環境では、SRQ-DⅡがうつ病やその他の心理的不調の初期スクリーニングツールとして活用されます。
患者が自己評価を行うことで、医師や心理士が診断の手がかりを得ることができます。
内科、皮膚科、耳鼻科、歯科などのクリニック
これらの非精神科診療科でも、患者が抱えるメンタルヘルスの問題を初期段階で捉えるためにSRQ-DⅡが使用されることがあります。
これにより、必要に応じて専門医への迅速な紹介が可能になります。
職場でのメンタルヘルスチェック
企業や組織では、従業員のメンタルヘルスを定期的にチェックすることが重要です。
SRQ-DⅡは、職場におけるストレスやうつ病のリスクを評価するための簡便なツールとして活用できます。
福祉・介護の現場
高齢者や障害を持つ人々のケアを提供する現場では、ケアを受ける人々だけでなく、提供者自身のメンタルヘルスも重要な課題です。
SRQ-DⅡは、これらの環境でのストレスやうつ病のリスクを評価するのに役立ちます。
大学、専門学校等の教育機関
学生のメンタルヘルスは、学業成績や将来のキャリアに大きな影響を与えるため、教育機関でもSRQ-DⅡが利用されることがあります。
学生自身が自己評価を行い、必要に応じてサポートを受けることができます。
所要時間
SRQ-DⅡを完了するための所要時間は、回答に約5分程度、採点には約2分程度です。
この短時間で完了できる特性は、SRQ-DⅡが多忙な医療機関や職場、教育機関など、様々な環境で手軽に使用される理由の一つです。
短時間で効率的にうつ病のスクリーニングが可能であり、早期発見と早期介入を促進するための有効なツールとなっています。
方法
SRQ-DⅡの使用方法ですが…
- 配布と指示
- 回答の収集
- 採点と評価
- フィードバックと対応
…というステップ別で解説します。
配布と指示
SRQ-DⅡのプロセスは、対象者に質問紙を配布し、どのように回答するかについて明確な指示を与えることから始まります。
この段階では、対象者に質問紙の目的を説明し、各質問に対して「いいえ」から「常に」までの4段階で自分の状態を評価するよう求めます。
指示は、質問紙の回答に対する正直さと正確さが非常に重要であることを強調する必要があります。
このプロセスの目的は、対象者が自分自身の感情や症状を自己評価することにあり、そのためには安心して正直に回答できる環境を提供することが重要です。
指示の際には、回答にかかる時間(約5分)と、回答が個人情報を尊重する範囲内で扱われることを保証することも重要です。
回答の収集
対象者が質問紙に回答する際には、プライバシーを尊重し、落ち着いた環境を提供することが大切です。
回答時間は約5分と短いため、対象者はそれぞれの質問に対して直感的かつ素早く反応することが求められます。
このステップでは、対象者が各質問をどのように感じているか、現在の心理的状態を正確に反映させるよう励ます必要があります。
回答が集まった後、それらを慎重に収集し、次のステップである採点と評価の準備をします。
採点と評価
回答が収集された後、採点プロセスが始まります。
この採点は約2分程度で完了し、各回答に対して点数を割り当て、総得点を算出します。
SRQ-DⅡでは、カットオフ値を用いて結果を解釈します。
カットオフ値は、うつ病の可能性の有無を判断する基準点であり、この値以上の得点を示した場合、さらなる評価や専門医による診断が推奨されます。
採点と評価の過程は、専門知識を必要としないため、非精神科の医療従事者でも実施できます。
しかし、結果の解釈と対応策については、メンタルヘルスの専門家のアドバイスを求めることが重要です。
フィードバックと対応
最終ステップでは、評価結果に基づき、対象者に適切なフィードバックを提供し、必要な対応策を講じます。
高いスコアを示した個人には、専門医によるさらなる評価やカウンセリングサービスへの紹介が推奨されます。
このプロセスでは、対象者への配慮と支援の提供が重要です。
フィードバックを受けた対象者が、自分の状態について不安や疑問を持つことは自然なことです。
したがって、フィードバックは慎重に、かつ支援的な方法で行う必要があります。
フィードバックの際には、対象者が受けることになる可能性のある次のステップについての情報を提供し、必要なサポートやリソースについて案内します。
さらに、対象者が自身のメンタルヘルスについて積極的に関わり、適切な支援を求めることを奨励することが大切です。
この段階では、医療従事者やカウンセラーとの連携が非常に重要になります。
対象者がうつ病の可能性が高いと判断された場合、迅速に専門的な診断と治療を受けられるように手配する必要があります。
また、対象者のプライバシーと尊厳を守ることを最優先し、メンタルヘルスに関連する課題に対して社会的な偏見やスティグマを軽減するための努力も重要です。