第4次産業革命と医療 【IoTが医療・介護・リハビリ分野へもたらす3つの恩恵について】

IoTという言葉、ご存知ですか?
ここ最近ではニュースや雑誌などでも目にすることが多くなってきたこの単語ですが、実はこれ今後の医療や介護、リハビリ業界においても非常に重要なキーワードになってきます。

そこで今回はこのIoTの概要と、どのように医療、介護、リハビリの業界に関わってくるか、作業療法士としての視点から考えてみます。

IoTとは?

IoT(アイオーティー)とは“Internet of Things”の略称で、「モノ(製品等)のインターネット化」のことを指します。
つまり「身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながる」仕組みのことです。
元々は主にパソコンやサーバー、プリンターといったIT関連機器が接続されていたインターネットにそれ以外の様々なモノを接続することを意味します。

またこのIoTに関連するキーワードでは、「AI」や「ロボット」、「ビッグデータ」というものがあげられます。

第4次産業革命について

そもそもなぜここ最近このIoTという技術が注目されるようになったのでしょうか?
その理由としては、まず2011年にドイツ政府が、その4年後の2015年に日本が打ち出した競争力強化に向けた政策である「Industry4.0(第4次産業革命)」が背景にあるようです。
この第4次産業革命によって人工知能(AI)やIoTといった技術革新を進めることで、日本経済の発展につなげていく…ということが国の方針としてまとまっています(ざっくりとした説明ですがw)。
ちなみにこのAIやIoTによる総合的な経済価値は日本経済の4倍もの規模になるとも試算されています。

IoT技術が生かされる分野について

さてこのIoT技術ですが、インターネットの利用が主流になっている現代だからこそ、様々な分野において活用される技術といえます。
有力分野としては…

  • ものづくり・流通・小売
  • 金融
  • 住宅・エネルギー(スマートハウス等)
  • 医療・健康・介護
  • 教育
  • 農業
  • 観光

…などがあげられます。

医療・健康・介護×IoT技術の可能性について

ここでは上記の分野の中でも、リハビリテーションが関わる中心分野である『医療・健康・介護』の分野におけるIoT技術の可能性についてまとめてみます。
現段階で考えられる可能性としては…

  • 個人に合わせた健康支援サービスが提供できる
  • データに基づいた介護予防サービスができる
  • 疾患の早期発見ができる

…と言った項目があげられます。
以下に詳しく解説します。

個人に合わせた健康支援サービスが提供できる

IoT技術をつくっている要素としては、様々な事例によって蓄積された大量のデータ(ビッグデータ)の利用があげられます。
健康支援といってもその範囲は広いので、何をもってそのデータを有益なものとし集積するかにもよりますが、代表的な例としてはウェアラブル機器による毎日のバイタルのデータに基づいた健康支援サービスなどが思いつきますね!
加えて、象印マホービン「みまもりホットライン」のようにその対象の毎日の行動(この場合はポットで給湯するetc)データから一日の行動パターンを分析し、習慣改善につなげる…なんてのも可能になると思います!

データに基づいた介護予防サービスができる

IoT技術は「予防」の分野でも非常にその能力を発揮できると思います。
IoTリハビリアプリ、『モフトレ』といったウェアラブル機器がすでに実用化されていることからも、介護予防分野においてのIoT技術の活用が始まっているといえます。
これはただ単に動きと画面が連動するだけでなく、その運動データを蓄積しデータ化することでフィードバックに役立てることができる点が非常に効果的とも言えます。
こういった技術によって、対象を選びますが「オンラインリハビリ」「オンライン介護予防」といった事業やサービスも増えていく可能性があります。

疾患の早期発見ができる

『サイマックス』というベンチャー企業がサービスを始める便器にセンサーを取り付け、それをインターネット接続することで尿検査を行うことでビッグデータ化し体の不具合を早期に発見する…というIoT技術、サービスが注目されています。
もちろんその結果だけで『診断』はできませんが、自分で早期に体の不調や疾患の発症をチェックすることができ、重篤な状態になることを防ぐことができます。

作業療法士が考えるIoT・AI×医療・介護の恩恵

IoT技術は作業療法士の専門領域である『医療・健康・介護』の分野に恩恵をもたらすものではありますが、上記のその他の分野は最終的にはすべて「生活」に関わる分野なので、広義で考えればすべて作業療法が関わる分野と言っても過言ではありません。
そうなると各分野それぞれを作業療法と掛け合わせることも可能…となってきます。

以下は現段階で思いつく例として挙げてみます。

IoT×ものづくり=職業リハ

IoTはものづくりの仕組みそのものを変えていきます。
障害者の雇用のためにはSOHOの活用も必要と考えていますが、この“ものづくり”…つまり製造や商品開発における作業分析やデータ管理といったニッチ分野に障害者の雇用が生まれれば…なんても考えられます。

IoT×金融=詐欺予防

金融におけるIoT技術のキーワードとしては『Fintech』というものがあげられます。
FinTechとはFinance(金融)× Technology(技術)ということで、金融とITを掛けあわせた領域のことを指します。
つまり金銭管理や資産運用といったものも範疇に含まれます。

近年、高齢者をターゲットとした詐欺は社会問題としてあげられていますが、この問題に対してFintechが有効になってきます。
実例としては、「True Link」という家族や後見人が高齢者の個人資産を見守ることができるサービスがあります。

これは高齢者が持っているクレジットカードやATMの使用状況をシステムが常に管理し、異常な決済や引き出し、振り込みなどがあれば家族にメッセージがいく…というサービスです。
高齢者の独り暮らしを支援することが多い作業療法士にとっては、直接的にではなくてもこのような知識を持っていて損はないと思います。

IoT×住宅=事故予防

IoT技術を使用する住宅で、通称『スマートハウス』というものがあります。
住宅にIoT技術を活用することで、ベランダやドアのカギを開けて外に出ようとしたときに家族に知らせがいくシステムや、一人で入浴しようとするとセンサーが働き、入れないように浴室のドアがロックする…といった『事故予防』に活用することができます。

IoT×農業=作業療法そのもの!

個人的にはこの農業分野においてのIoT技術の貢献にも期待しています!
IoT技術の導入において身体的負担の多い農業の管理が軽くなり、その結果障害を持ったとしてもまた農家として参加できる…といったことが可能になるかもしれません!

IoT×観光=外出機会の向上

障害を持つ方や高齢者の方は、その身体的な能力の低下によって外出する機会が非常に減ってしまうケースが多くあります。
ましてや遠方に旅行に行く…ということも難しくなってしまいます。

IoT技術が観光分野に入り込むことは、地方の活性化や新たな観光地の立ちあげになる…と『観光地側』のメリットのみ注目されがちですが、逆を言えば観光地の発展、そこにいくまでのインフラの整備が進むことで、非常に「行きやすい観光地」が増えてくると予想できます。
その結果、障害を持っていても、高齢であっても負担なくその観光地に行く手段が増え、外出の機会が増える…ということが考えられます!

まとめ

本記事では、医療や介護、リハビリ分野におけるIoTについて解説しました。
テクノロジーの進歩は今後ますます目まぐるしく発展していきます。
最初はコストが高い技術も、数年もしたら個人が利用できる価格まで下がってる…なんてこともよくある話です。

早いうちにどんなテクノロジーがあるのかをチェックしておき、アイディアを練っておくのも必要かもしれませんね。

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