Dunnの感覚処理モデルとは? – 感覚刺激に対する反応の違いを理解する

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感覚刺激に対する反応の違いは様々です。
本記事ではDunnの感覚処理モデルを軸にして解説します。


Dunnの感覚処理モデルとは?

Dunnの感覚処理モデルは、心理学者ウィニー・ダン(Winnie Dunn)によって開発された、個人の感覚処理の違いを理解するための理論的枠組みです。
このモデルは、感覚刺激に対する個人の反応の違いを説明するために用いられ、特に作業療法や感覚統合療法の分野で重要視されています。

このモデルを基に、感覚プロファイル(Sensory Profile)が作成されました。
Dunnの感覚処理モデルは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の研究にも用いられています。

構成する2つの軸

Dunnのモデルは主に…

  • 感覚のしきい値(Sensory Threshold)
  • 自己調整の戦略(Self-Regulation Strategy)

…という2つの主要な軸で構成されています。
以下にそれぞれ解説します。

感覚のしきい値(Sensory Threshold)

この軸は、個人が特定の感覚刺激に反応するまでに必要な刺激の量を示します。
低い感覚しきい値を持つ人は、少ない刺激でも容易に反応する傾向があり、一方で高い感覚しきい値を持つ人は、より多くの刺激が必要です。

例えば、カフェといった背景音楽や周囲の会話がある中で、低い感覚しきい値を持つ人は、わずかな音も気になり、集中できないかもしれません。
一方で、高い感覚しきい値を持つ人は、周囲の騒音に気付かず、普通に活動を続けることができます。

自己調整の戦略(Self-Regulation Strategy)

この軸は、個人が感覚刺激にどのように反応し、自己を調整するかを表します。
ある人は刺激に対して積極的に行動することで反応(探求的行動)、他の人は刺激から避けることで反応(回避的行動)することがあります。

例えば、ある人がストレスを感じたとき、積極的な自己調整をする人は、音楽を聴く、散歩に出るなど、積極的に行動してストレスを解消しようとします。
これに対して、受動的な自己調整をする人は、静かな部屋に閉じこもって周囲から離れ、刺激を避けることで落ち着こうとするかもしれません。

感覚のしきい値、自己調整の戦略の違いによって感じ方も行動も変わるってことだね!
入力される感覚情報は同じでも、2つの軸の違いで大きく変わってしまうんですね!

感覚処理の4つの象限

これらの軸に基づいて、Dunnは感覚処理を…

  • 低登録
  • 感覚探求
  • 感覚過敏
  • 感覚回避

…という4つの象限に分類しました。
それぞれ解説します。

低登録(Low Registration)

低登録は、感覚入力に対する反応が弱い状態を指します。
これは、個人が感覚刺激に気づかないか、またはそれに反応しないことを意味しています。

例えば、部屋の温度の変化や衣服の感触に鈍感であることがあります。
これらの人々は、周囲の環境からの刺激に対して意識的ではないため、他の人が気づくような変化を見逃すことがあります。

低登録の状態の人は、情報を処理するためにより強い感覚入力を必要とすることがあり、日常生活において追加の刺激を求めることがあります。

感覚探求(Sensory Seeking)

感覚探求は、一般的に高いレベルの感覚入力を求める傾向を指します。
これらの人々は、常に動き回り、物事を触り、新しい経験を求めることが多いです。
彼らは、刺激的な環境やアクティビティに引き寄せられ、退屈を感じやすいという特徴があります。

感覚探求者は、多くの感覚入力を受けても過負荷になりにくいという特性を持っていますが、一方で、彼らの高いエネルギーレベルと刺激への渇望は、集中力の欠如や衝動性の原因になることもあります。

感覚過敏(Sensory Sensitivity)

感覚過敏は、通常の感覚刺激に対して過剰な反応を示す状態を指します。
これらの人々は、周囲の環境の小さな変化にも過敏で、例えば、明るい光、大きな音、特定の味や臭いに対して強い不快感を感じることがあります。
感覚過敏の人々は、過剰な感覚入力に対して圧倒されやすく、これが不安やストレスの原因となることがあります。
彼らは、日常生活において、感覚入力を減らすような戦略を採用することが多いです。

また、感覚過敏は集中力を妨げることがあり、特に騒がしい環境や忙しい場所では、機能するのが難しくなることがあります。

感覚過敏とは? - 定義や原因、具体例や治療方法について
感覚過敏は、日常の刺激に対する過剰な反応を示す状態です。本記事では感覚過敏の定義や原因、具体例や治療方法について解説します。

感覚回避(Sensory Avoidance)

感覚回避は、特定の感覚入力や状況を積極的に避ける行動を指します。
これらの人々は、感覚刺激に対して強い不快感を持ち、その刺激から逃れようとします。
例えば、騒がしい場所を避けたり、特定の食物の質感や味を拒否したりすることがあります。
感覚回避の行動は、日常生活において制限をもたらすことがあり、社会的相互作用や新しい経験に対して消極的になることがあります。

感覚回避の人々は、過剰な感覚入力から身を守るために、静かでコントロールされた環境を好むことが多いです。

感覚処理の4つの象限の具体例

では、さらにこれら4つの具体例をそれぞれみてみます。

低登録(Low Registration)の具体例

  • 通勤中の音楽: バスや電車で隣の人が大音量で音楽を聴いていても、全く気にならない。
  • 会話の見落とし: 会話中に他人がさりげなく言ったジョークやヒントを見逃すことがよくある。
  • 締め切りの忘れ: 仕事や学校の締め切りを忘れがちで、他人からのリマインドが必要。

感覚探求(Sensation Seeking)の具体例

  • 冒険的な旅行: 急な計画で刺激的な旅行に出かけることが好き。
  • 新しい料理の試行: 珍しい食材や変わったレシピを試すのが好き。
  • スリルのあるスポーツ: スカイダイビングやサーフィンのようなアドレナリンが出るアクティビティに魅力を感じる。

感覚過敏(Sensory Sensitivity)の具体例

  • タグの不快感: 衣服のタグが肌に触れると不快で、切り取ることがよくある。
  • 明るい光への過敏: 日中の強い日差しや蛍光灯の下での作業が困難。
  • 騒音への反応: 周囲の小さな音(時計のカチカチなど)が気になり、集中を妨げる。

感覚回避(Sensory Avoidance)の具体例

  • 混雑した場所の避け: ショッピングモールや市場のような混雑した場所を避ける。
  • 特定の食品の回避: 特定の質感や味が苦手で、それらを含む食品を避ける。
  • 予期せぬ変更への抵抗: 日常のルーティンが急に変わることに強い抵抗感を示す。

具体例から、感覚処理の個々の違いがどのように日常生活に影響を与えるかが理解できるだろうね!
これらの理解は、個人の感覚処理の特性に合わせたサポートを提供する上で重要になりますね!

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