斜視や複視といった眼球運動、視力・視野の障害の一つに”第4脳神経(滑車神経)”の麻痺があげられます。
本記事では、その定義や原因、症状や治療法について解説します。
第4脳神経とは?
第4脳神経は、眼球を上下に動かすための筋肉を支配する神経で、滑車神経とも呼ばれています。
第4脳神経(滑車神経)麻痺の原因
滑車神経麻痺の原因ですが、主に…
- 頭部外傷によるもの
- 虚血性によるもの
…があります。
外傷による滑車神経麻痺
交通事故などがきっかけで頭部外傷を起こし、その結果滑車神経麻痺が起こることを外傷性滑車神経麻痺と呼びます。
この場合、側頭骨や眼窩壁を骨折した際の滑車神経へのダメージによるものが原因の場合が多いようです。
虚血性による滑車神経麻痺
滑車神経への栄養血管の閉塞によって起こる麻痺は、虚血性滑車神経麻痺と呼ばれます。
これは脳幹の血管障害が背景にある場合が多いようです。
第4脳神経(滑車神経)麻痺の症状
ではこの滑車神経が麻痺することで生じる症状とはなにがあげられるでしょうか?
主なものとしては…
- 眼球の内下方への運動障害
- 複視
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
眼球の内下方への運動障害
第4脳神経である滑車神経は、上斜筋の支配神経です。
この上斜筋は主に眼球を内側(鼻側)に沿って下に向けるときに作用する筋です。
つまり、この滑車神経が麻痺すると、自分の鼻を見ることができなくなります。
複視
そのため滑車神経麻痺が生じると、片方の像がもう片方の像より情報と少し横にずれるため、二重に像が見える”複視”が生じます。
動眼神経麻痺でも複視は生じますが、滑車神経麻痺による複視のほうが頑固な場合が多いようです。
滑車神経麻痺への治療法
滑車神経麻痺の治療法としては…
- プリズム眼鏡の使用
- 疾患そのものに対しての手術
- 上直筋への手術
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
プリズム眼鏡の使用
プリズム眼鏡は、光の屈折を利用して、視力の異常を補正する眼鏡です。
眼鏡のレンズにプリズムを取り付けることで、光の屈折角度を変えることができます。
滑車神経麻痺の複視に対しての一般的な治療としては、このプリズム眼鏡を用いた視力の補正が行われます。
ただしこのプリズム眼鏡の使用はあくまで対処療法的な治療であるため、原因疾患そのものに対しての治療も必要になります。
疾患そのものに対しての手術
滑車神経麻痺の原因疾患に対してはCTやMRIで判別されます。
また、その疾患そのものに対しての手術等の治療も必要になります。
上直筋への手術
滑車神経麻痺による症状である複視への改善のために、上直筋の下方の筋肉の縫合手術が行われる場合もあるようです。
この手術によって、9割の確率で正面視での複視が消失する…という意見もあります。
滑車神経麻痺の予後について
滑車神経麻痺でも、後天性である外傷性滑車神経麻痺や、虚血性滑車神経麻痺の場合、1か月から3か月で自然に回復する場合が多いようです。
しかし、半年経っても複視などの症状が残る場合には上記のような手術の対応が必要な場合もあります。