大菱形筋は肩甲骨の動きと安定性に重要で、肩の健康と機能的な動作を支える筋肉です。
本記事では大菱形筋について解説します。
起始・停止
起始 | 椎骨棘突起 T2-T5 |
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停止 | 肩甲骨内側縁(肩甲骨棘の下角から付け根まで) |
大菱形筋は背中の深層にある筋肉で、第2胸椎から第5胸椎の棘突起から起始し、肩甲骨の内側縁に停止します。
特に、肩甲骨の下角と棘の根元の間に挿入するこの筋肉は、肩甲骨を内側に引くことで肩の安定性を高める役割を果たします。
斜めに下外側方向へ伸びる形状から、肩甲骨の動きを助けると同時に、背中の姿勢を維持するのにも寄与します。
大菱形筋は僧帽筋に覆われており、その下部縁には「聴診三角形」と呼ばれる特定の領域があり、医療現場では肺の聴診に重要な役割を担います。


支配神経
神経支配 | 肩甲背神経(C4-C5) |
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両方の菱形筋、つまり大菱形筋と小菱形筋は、腕神経叢の一部である肩甲背神経(C4-C5からの神経繊維)によって神経支配されています。
腕神経叢は首から出て腕へと繋がる一連の神経のネットワークで、肩や腕の筋肉への運動指令や感覚情報の伝達に重要な役割を果たしています。


栄養血管
血液供給 | 肩甲背動脈、頚横動脈深枝、上部5~6後肋間動脈背側枝 |
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大菱形筋は…
- 肩甲背動脈(Dorsal Scapular Artery)
- 頸横動脈の深部枝
- 後肋間動脈の背側枝
…から血液供給を受けています。
以下にそれぞれ解説します。
肩甲背動脈(Dorsal Scapular Artery)
肩甲背動脈は甲状頚幹から分岐し、特に肩甲骨周辺の筋肉に対して重要な栄養源を提供します。
この動脈は、肩甲骨を内側に引き寄せる大菱形筋の活動を支えるために必要な酸素や栄養素を運びます。
頸横動脈深枝(Deep Branch of the Transverse Cervical Artery)
頸横動脈の深部枝もまた、甲状頚幹から分岐し、肩や首の後部に位置する筋肉への血流を確保します。
この深部枝は大菱形筋にとっても重要な血液供給源の一つであり、筋肉の持久力や回復力を高めるのに役立ちます。
血液供給が豊富であることは、筋肉の健康と機能維持には欠かせません。
上部5~6後肋間動脈背側枝(Dorsal Branches of the Upper 5 to 6 Posterior Intercostal Arteries)
最後に、後肋間動脈の背側枝は、胸部大動脈から分岐し、背中の上部にある筋肉、特に上位5〜6本の肋間に位置する筋肉に血液を供給します。
大菱形筋への血液供給においてもこの枝は重要であり、筋肉の効率的な動作と回復に寄与します。


機能
機能 | 肩甲骨を上内側に引き、関節窩を下方に回転させる。肩甲骨の位置をサポート |
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大菱形筋の主要な機能は、肩甲骨の内転とわずかな下方回旋、および肩甲骨の拳上です。
この筋肉が収縮することで、肩甲骨の下角が内側に回転し、肩甲骨を体の中心軸に引き寄せることができます。
この動きは、肩甲骨を安定した位置に保持し、腕の動きに対する強固な基盤を提供します。
特に、肩の複雑な動きを支援し、上肢の運動範囲を最大化するのに役立ちます。
さらに、大菱形筋による肩甲骨の拳上は、肩甲骨をわずかに持ち上げることで、上肢の持ち上げや引っ張り動作をサポートします。
この筋肉の活動は、肩の動きを滑らかにし、上肢の機能的な範囲を広げることに寄与します。
また、肩甲骨を適切な位置に保つことで、肩関節の不安定性や痛みのリスクを減少させることができます。
大菱形筋と小菱形筋の協働による肩甲骨の安定化は、日常生活やスポーツ活動での効率的な肩の使用を可能にします。

