上腕二頭筋は腕の主要な筋肉で、肩と肘の動きを司り、日常生活や運動で重要な役割を果たします。
本記事では上腕二頭筋について解説します。
上腕二頭筋の起始・停止
起始 | 短頭:肩甲骨の烏口突起の頂点 長頭:肩甲骨の関節上結節 |
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停止 | 橈骨の橈骨結節 前腕の深部筋膜 |
上腕二頭筋は、その名前が示す通り、2つの頭部…
- 長頭
- 短頭
…から成る腕の筋肉です。
それぞれ解説します。
長頭
上腕二頭筋の長頭は肩甲骨の関節窩の上…関節上結節から始まります。
この腱は、肩の関節内に位置しつつも、滑膜の外側にあります。
これは、腱が滑膜嚢内にあるということですが、実際には滑膜外に残るという特殊な配置をしています。
また、腱は上腕骨頭で急に曲がり、二頭筋溝(結節間溝)を通って進みます。
この転換点は、上腕二頭筋滑車と呼ばれる靭帯によって安定化されます。
上腕二頭筋は腕の大きくて厚い筋肉で、長頭、短頭の2つから構成されています。
短頭
上腕二頭筋の短頭は肩甲骨の烏口突起の頂点から生じます。
この部分は烏口腕筋の起始部の腱と部分的に融合します。
長頭、短頭の両方の頭部は、上腕骨の前面で一つの大きな筋腹に結合し、橈骨結節に停止します。
また、上腕二頭筋の遠位部分にある繊維膜である二頭筋腱膜(lacertus fibrosus)は、前腕の深部筋膜に停止します。
上腕二頭筋の神経支配
神経支配 | 筋皮神経 (C5-C6) |
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上腕二頭筋は、腕神経叢の枝の一つである筋皮神経(C5-C6由来)によって支配されます。
腕神経叢は、首の領域にある一連の神経のネットワークで、脊髄の頚部神経根(C5からT1まで)から発生します。
筋皮神経はこのネットワークから分岐し、腕と肩のいくつかの筋肉を動かすための指令を運びます。
上腕二頭筋の血液供給
血液供給 | 上腕動脈の枝 |
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上腕二頭筋への動脈血供給は、主に上腕動脈から発する最大8本の血管によって行われます。
上腕動脈は、肩の近くで腋窩動脈から分岐し、腕を下降するにつれて前腕に向かって走行します。
この動脈は、腕全体に酸素と栄養を運ぶ重要な役割を果たしますが、特に上腕二頭筋への血液供給においても重要です。
上腕動脈からの血管枝は、上腕二頭筋の長さにわたって分布し、特に筋肉の中央3分の1の部分に集中しています。
これらの血管は筋肉に必要な酸素、栄養素、およびその他の代謝産物を供給し、また使用済みの血液を心臓に戻す役割も担います。
上腕二頭筋へのこのような豊富な血液供給は、筋肉が高い代謝活動を維持し、特に運動時には重要なエネルギー要求を満たすことができるようにするために不可欠です。
上腕二頭筋の主な働き
機能 | 肘関節:屈曲および回外 肩関節:外転・内旋(長頭)・内転(短頭) |
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上腕二頭筋は、その構造と機能において非常にユニークな筋肉です。
この筋肉は二関節筋として、肩関節と肘関節の両方に作用することができます。
つまり…
- 肘関節の屈曲および回外
- 肩関節の外転・内旋(長頭)
- 肩関節の内転(短頭)
- 肩関節内での上腕骨頭の固定
…になります。
それぞれ解説します。
肘関節の屈曲および回外
肘関節における主な機能は屈曲と回外です。
屈曲は、前腕を上腕に近づける動きを指し、これによって腕を曲げることができます。
回外は、前腕を外側に回転させることで、手のひらが上向きになる動きを意味します。
この動きは特に肘が曲がった状態で最も効果的になり、日常生活で物を掴むや書き物をする際に重要な役割を果たします。
肩関節の外転・内旋(長頭)
肩関節における上腕二頭筋の機能は、その二つの頭が異なる動きに寄与することで複雑です。
長頭は主に肩の外転と内旋に関与します。
外転は腕を体の側面から持ち上げる動きであり、内旋は腕を体の中心に向かって回転させる動きです。
これらの動きは、肩関節の可動範囲を広げ、様々な方向への腕の動きを可能にします。
肩関節の内転(短頭)
一方、短頭は腕の内転に作用し、腕を体の中心に引き寄せる役割を果たします。
この内転の動きは、腕を体幹に密着させる際や物を体に引き寄せる際に重要です。
肩関節内での上腕骨頭の固定
さらに、上腕二頭筋は肩関節内で上腕骨頭の安定性を支える役割も担っています。
この筋肉が収縮することで、上腕骨頭は肩甲骨の関節窩にしっかりと固定され、肩関節の脱臼や不安定性を防ぐ助けとなります。
この機能は、特に肩に負担がかかる運動や重い物を持ち上げる際に重要です。