褥瘡になりやすい疾患とは? – リスクが高い疾患について

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褥瘡は、特定の健康状態や疾患を持つ人々においてより発生しやすい状況を生み出すことが知られています。
本記事では褥瘡になりやすい疾患について解説します。


褥瘡になりやすい疾患について

褥瘡を併発しやすい疾患については様々ですが、代表的なものとしては…

  • うっ血性心不全
  • 骨盤骨折
  • 脊髄損傷
  • 糖尿病
  • 脳血管疾患
  • 慢性閉塞性肺疾患

…があげられます。

以下にそれぞれ解説します。

うっ血性心不全

うっ血性心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、体内の血液が適切に循環しない状態を指します。
この疾患により、体液のうっ滞が起こり、特に下肢において浮腫みが生じやすくなります。
浮腫みや循環不良は皮膚の健康に悪影響を与え、特定の部位への持続的な圧力により褥瘡が発生しやすくなります。

また、体位変換の困難さや長期臥床も褥瘡リスクを高める要因となります。

骨盤骨折

骨盤骨折は、転倒や事故によって生じる深刻な怪我で、特に高齢者に多く見られます。
骨折により長期間の臥床や安静が必要となるため、体位の変更が困難になり、一定の体部に持続的な圧力がかかります。
これが褥瘡の主要な発生原因となり、痛みや運動制限も褥瘡のリスクを高めます。

骨折部位の治癒に時間がかかることもあり、長期にわたる対応が必要になる場合があります。

脊髄損傷

脊髄損傷は、外傷や病気により脊髄が損傷を受けることで起こります。
この損傷により、感覚障害や運動障害が引き起こされ、患者は体位変更や自分の体を動かす能力を失いやすくなります。
感覚の喪失は、皮膚に圧力がかかっていることを認識しにくくし、褥瘡の発生リスクを高めます。

また、長期臥床や車椅子の使用も、特定の体部に持続的な圧力を与え、褥瘡を引き起こしやすくします。

糖尿病

糖尿病は、血糖レベルが異常に高くなる慢性疾患で、血流不良や神経障害を引き起こすことがあります。
これらの合併症は、皮膚の感覚を低下させ、小さな傷や圧力に対する反応を鈍くします。
また、糖尿病患者は傷の治癒が遅れやすく、小さな皮膚損傷が深刻な褥瘡へと進行しやすい傾向にあります。

血糖コントロールの悪化はこれらのリスクをさらに高めます。

脳血管疾患

脳血管疾患、特に脳卒中は、脳への血流障害により起こります。
この疾患により片麻痺や認知機能の低下が生じることが多く、これが体位変更の困難さにつながります。
長時間同じ姿勢でいることが多くなり、これが褥瘡のリスクを高めます。

また、感覚障害も褥瘡発生の要因となり得ます。

慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺の機能が長期的に損なわれる病気で、呼吸困難や持続的な咳が特徴です。
この疾患により全身の酸素供給が不足し、組織の修復能力が低下します。
これが褥瘡の発生や悪化を促進する原因となります。

また、長期間の臥床や活動制限も、特定部位への圧力を増加させ、褥瘡リスクを高めます。

褥瘡発生のリスクが高まる可能性がある疾患について

加えて高度ではないものの、褥瘡発生のリスクが高まる可能性がある疾患としては…

  • 悪性腫瘍
  • アルツハイマー病
  • 関節リウマチ
  • 骨粗鬆症
  • 深部静脈血栓症
  • パーキンソン病
  • 末梢血管疾患
  • 尿路感染症

…などがあげられます。
これらについても以下にそれぞれ解説します。

悪性腫瘍

悪性腫瘍は、がん細胞が体内で異常増殖する状態です。
がんによる全身状態の悪化や治療の副作用(化学療法や放射線治療など)は、栄養不良や免疫力の低下を招き、褥瘡のリスクを高めます。

また、がんによる疼痛や治療後の回復過程で長時間の臥床が必要になることもあり、これが圧力点に対する持続的な負荷となり、褥瘡発生のリスクを増加させます。

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が徐々に破壊されることで進行する認知症の一種です。
この病気による記憶力や判断力の低下は、自己ケア能力の喪失につながり、褥瘡予防における適切な体位変更や皮膚ケアが困難になる可能性があります。

さらに、不適切な栄養摂取や不十分な水分補給も、褥瘡の発生リスクを高める要因となります。

関節リウマチ

関節リウマチは、免疫系の異常により関節に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患です。
炎症による痛みと関節の変形は、体位変更の困難さを引き起こし、特定の部位への圧力が持続することで褥瘡のリスクが高まります。

また、炎症の管理のための長期的な薬物治療は、副作用として皮膚の脆弱性を引き起こす可能性があります。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨密度と骨質の低下により骨がもろくなる状態です。
骨の脆弱性が高まることで、軽微な圧力でも骨折のリスクが増加し、これが長期臥床を必要とする可能性があります。

長期臥床は、特定部位への圧力が持続することにより褥瘡のリスクを高めます。

深部静脈血栓症

深部静脈血栓症は、主に下肢の深部静脈に血栓が形成される病状です。
血栓による血流の障害は、皮膚への酸素と栄養素の供給を低下させ、褥瘡のリスクを高めます。

また、この疾患により運動制限が必要になることがあり、長期臥床による圧力が褥瘡発生のリスクを増加させます。

パーキンソン病

パーキンソン病は、脳内のドーパミン産生細胞が減少することにより進行する神経変性疾患です。
運動障害、特に固縮や震えが、体位変更の困難さや不自由さを引き起こし、これが褥瘡の発生リスクを高めます。

また、この病気による活動の低下は、皮膚への持続的な圧力を引き起こす要因となります。

末梢血管疾患

末梢血管疾患は、主に下肢の血管が狭窄することにより起こります。
この血管の狭窄は、皮膚への血液供給を低下させ、褥瘡のリスクを高めます。

また、狭窄による痛みや運動制限は、長期臥床や特定部位への圧力を増加させる要因となります。

尿路感染症

尿路感染症は、尿路系に細菌が感染することにより引き起こされます。
頻繁な排尿や不快感により、適切な体位変更が困難になることがあり、これが褥瘡のリスクを増加させます。

また、感染による全身状態の悪化も、褥瘡の発生リスクを高める要因となります。

患者さんの疾患を把握しておくことは、褥瘡発生の予防にもつながるってことだろうね!
疾患そのものの特徴を知識として身に着けておくことも重要でしょうね!

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