健康関連QOLを調査するために用いられ方法の“SF-36″。
本記事ではこのSF-36の特徴や項目について解説します。
SF-36とは?
SF-36(The 36-item short form of the Medical Outcome Study Questionnaire)とは、包括的尺度に分類されるQOLを評価する方法のひとつ
…になります。
1990年にRAND CorporationとJE Wareによって発表され、1996年に改訂されています。
特に健康関連QOLを評価する方法としては、最も頻繁に使用されている方法といわれています。
SF-36の特徴
QOLの評価である“SF-36”の特徴については次の3つがあげられます。
- 包括的尺度であること
- 国民標準値との比較が可能
- 国際的に最も普及している健康関連QOL尺度であること
以下に詳しく解説します。
包括的尺度であること
SF-36は、健康関連QOLを測定する包括的尺度といわれています。
つまり、どれか特定の疾患や障害に対してのみ適応される評価法とは異なり、様々な疾患の健康関連QOLを測定することができます。
その結果、疾病の異なる対象者間のQOLの比較が可能になっています。
国民標準値との比較が可能
SF-36v2は2007年度に調査された国民標準値が公開されています。
つまり、対象者のスコアを評価した後に性別や年代別の標準値との比較検討が可能になっています。
また、SF-36v2日本語版マニュアルには、スコアリングプログラムが掲載されているためより簡単に比較ができるようになっています。
国際的に最も普及している健康関連QOL尺度である
SF-36は健康状態を測る調査票として、世界中で最も普及している評価法の一つになります。
ここまで広く利用されている理由としては、
- シンプルかつ有用であること
- 計量心理学的に十分な特性を持つこと
- 入手方法が容易であること
- 十分な量のデータの蓄積があること
…などがあげられます。
SF-36のエビデンスについて
SF-36は、エビデンスの推奨グレードAの信頼性が高い評価方法です。
SF-36の8つの項目
SF-36は、次の8つの健康概念からなり、36項⽬から構成されています。
- 身体機能(PF)
- 日常役割機能(身体)
- 身体の痛み
- 全体的健康感
- 活力
- 社会生活機能
- 日常役割機能(精神)
- 心の健康
以下に詳しく解説します。
身体機能
身体機能(PF:Physical functioning)の項目では、
- 低い:入浴または着替えなどの活動を自力で行うことが,とてもむずかしい
- 高い:激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能である
…と、得点の解釈がされます。
日常役割機能(身体)
日常役割機能(身体)(RP:Role physical)の項目では、
- 低い:過去1ヵ月間に仕事やふだんの活動をした時に身体的な理由で問題があった
- 高い:過去1ヵ月間に仕事やふだんの活動をした時に,身体的な理由で問題がなかった
身体の痛み
身体の痛み(BP:Bodily pain)では、
- 低い:過去1ヵ月間に非常に激しい体の痛みのためにいつもの仕事が非常にさまたげられた
- 高い:過去1ヵ月間に体の痛みはぜんぜんなく,体の痛みのためにいつもの仕事がさまたげられることはぜんぜんなかった
…と、得点の解釈がされます。
全体的健康感
全体的健康感(GH:General healthの項目では、
- 低い:健康状態が良くなく,徐々に悪くなっていく
- 高い:健康状態は非常に良い
…と、得点の解釈がされます。
活力
活力(VT:Vitality)の項目では、
- 低い:過去1ヵ月間,いつでも疲れを感じ,疲れはてていた
- 高い:過去1ヵ月間,いつでも活力にあふれていた
…と、得点の解釈がされます。
社会生活機能
社会生活機能(SF:Social functioning)の項目では、
- 低い:過去1ヵ月間に家族,友人,近所の人,その他の仲間とのふだんのつきあいが,身体的あるいは心理的な理由で非常にさまたげられた
- 高い:過去1ヵ月間に家族,友人,近所の人,その他の仲間とのふだんのつきあいが,身体的あるいは心理的は理由でさまたげられることはぜんぜんなかった
…と、得点の解釈がされます。
日常役割機能(精神)
日常役割機能(精神)(RE:Role emotional)の項目では、
- 低い:過去1ヵ月間,仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題があった
- 高い:過去1ヵ月間,仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題がなかった
…と、得点の解釈がされます。
心の健康
心の健康(MH:Mental health)の項目では、
- 低い:過去1ヵ月間,いつも神経質でゆううつな気分であった
- 高い:過去1ヵ月間,いつも神経質でゆううつな気分であった
…と、得点の解釈がされます。
SF-36の注意点
SF-36を使用する際、次のような注意点に気を付ける必要があります。
- クライアント一人一人のQOL評価として完璧ではないということ
- セラピストに重要なのは、点数ではなくその点数になった背景を考える事
SF-36のメリット・デメリット
ではQOLを評価する際にこのSF-36を使用するメリット・デメリットとはどのようなものになるでしょうか?
以下にそれぞれ羅列してみます。
メリット
- 疾患に左右されない
- 比較検討しやすい
- ビッグデータがあり、標準との比較しやすい
デメリット
- 時間がかかる
- SF-36を使用して調査を行う場合は、使用登録申請が必要
SF-36を使用するには?
SF-36を使用するには使用登録申請が必要になります。
SF-12・SF-8について
質問数が多く、それがデメリットになっていたSF-36ですが、質問数を12項⽬や8項⽬に減らしたSF-12やSF-8も開発されています。
この評価方法は、質問数が多すぎる対象でも調査が可能なことや、⼤規模調査などに簡便に⽤いることができる点がメリットとされています。

