重量覚の伝達メカニズムについて – 感覚受容体・運動ニューロン・脳の関係

講座

識別感覚の一つである”重量覚”。
本記事ではこの重量覚の伝達メカニズムについて解説します。


重量覚の伝達メカニズム

重量覚はどのように脳が感じるのでしょうか?
そのプロセスですが…

  1. 感覚受容体の活動
  2. 運動ニューロンへの信号伝達
  3. 中枢神経系への信号伝達
  4. 運動ニューロンの反射活動
  5. 脳による感知

…にわけて解説します。

感覚受容体の活動

まず、重量覚は主に皮膚や筋肉、関節にある機械感受性の感覚受容体によって開始されます。

これらの受容体は、外部からの力や圧力、筋肉の伸縮といった機械的な刺激に反応し、この情報を電気信号に変換します。
このプロセスは、物体の重さや質感を認識するのに不可欠であり、物理的な刺激を生物学的な信号に変える重要な役割を果たします。

Kappers and Tiest (2015) は、皮膚、筋肉、関節、腱に埋め込まれたメルケル神経終末、マイスナー小体、パチニ小体、ルフィニ終末などの機械感受性受容体が触覚と運動覚を媒介し、圧力、振動、皮膚の伸張などの刺激に対する人間の感度の幅広い範囲を担っていることを説明しています1)

運動ニューロンへの信号伝達

そして感覚受容体からの信号は、次に運動ニューロンへと伝達されます。
これにより、筋肉への指令が発生し、物体を持ち上げたり動かしたりする際の筋肉の動きが調節されます。

運動ニューロンはこれらの信号を解釈し、適切な筋肉収縮を引き起こすために中枢神経系と連携します。
この過程は、物体の重さに応じた適切な筋力の調整を可能にします。

ちなみにPiezo2は、マウスでの固有感覚の主な機械伝達チャネルであり、筋紡錘およびゴルジ腱器官を支配する固有感覚受容器の感覚終末に発現していると報告されています2)

中枢神経系への信号伝達

感覚受容体からの信号は、脊髄を経由して脳、特に感覚情報を処理する脳の領域へと伝達されます。

中枢神経系は、これらの感覚情報を統合し、物体の重さや把持の方法に関する詳細な認識を生成します。
このプロセスは、物体を操作する際の精度と繊細さを高めるために不可欠です。

運動ニューロンの反射活動

重量感覚には運動ニューロンの反射活動も関係しています。
これは、筋肉が伸ばされたときに自動的に反応する神経回路です。

例えば、予想よりも重い物を持ち上げた時、この反射はより強い筋肉の収縮を引き起こし、物体を支えるのに必要な追加の力を提供します。
この反射活動は、重量の変化に迅速に反応し、持ち物の安定性を保つのに役立ちます。

脳による感知

重量感覚、つまり物体の重さを感じる能力に関与する脳の部位は次の通りです。

  • 一次体性感覚野
  • 補足運動野
  • 小脳
  • 基底核

以下にそれぞれ解説します。

一次体性感覚野(Primary Somatosensory Cortex)

この領域は、皮膚、筋肉、関節からの感覚情報を最初に受け取ります。
重量感覚においては、手や指に感じる圧力や筋肉の伸縮に関する情報がここで処理されます。
物体の重さに対する基本的な感覚は、この領域で初めて認識されます。

補足運動野(Supplementary Motor Area)

これらの領域は、計画された運動や動作の調整、意思決定に関わります。
重量感覚においては、物体の重さを基にした適切な筋力の調整や持ち方の計画が、これらの領域で行われます。

小脳(Cerebellum)

小脳は、運動の調整と平衡感覚に重要な役割を果たします。
重量感覚において、小脳は物体の重さを感じながら行う精密な運動や動作の調整を支援します。
特に、予期しない重さの変化に対する迅速な調整は小脳で処理されることが多いです。

基底核(Basal Ganglia)

基底核は、運動の開始と制御に関与します。
重量感覚においては、物体を持ち上げたり移動させたりする際の滑らかな運動パターンの生成に寄与します。

重量覚の場合は、求心性の信号だけでなく筋肉の収縮に関与する遠心性の信号にも影響を与えることが特徴的といえるね!
視覚情報も加わると、そのメカニズムもまた変化しそうですね!

参考

1)Kappers, A., & Tiest, W. (2015). Tactile and haptic perceptual organization. , 621-638. https://doi.org/10.1093/OXFORDHB/9780199686858.013.002.
2)Woo, S., Lukacs, V., Nooij, J., Zaytseva, D., Criddle, C., Francisco, A., Jessell, T., Wilkinson, K., & Patapoutian, A. (2015). Piezo2 is the principal mechanotransduction channel for proprioception. Nature neuroscience, 18, 1756 – 1762. https://doi.org/10.1038/nn.4162.

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