痛覚の伝達メカニズムについて

痛覚はどのように伝わり感じるのでしょうか?
本記事ではこの痛覚の伝達メカニズムについて解説します。

痛覚の伝達メカニズムのステップ

痛覚の伝達メカニズムは、以下のステップによって成り立っています。

  1. 受容体刺激と興奮
  2. 神経信号の伝達
  3. 脊髄での処理
  4. 脳への伝達
  5. 痛覚の知覚

以下にそれぞれ解説します。

受容体刺激と興奮

最初に体の組織が損傷や刺激を受けると、化学物質が痛覚受容器を刺激し、神経終末が興奮して神経興奮電位が生成されます。

このステップには”侵害受容器”が重要な役目を果たします。
侵害受容器とは、一次求心性神経の自由神経終末で、熱刺激、化学刺激、機械刺激や炎症などの侵害性の刺激に反応する感覚受容器です。
この侵害受容器は皮膚や内臓に多く分布しており、組織の損傷を感知して痛みを生じさせます。

侵害受容器には以下の4種類あり、それぞれ異なる役割を持ちます。

Aδ線維機械侵害受容器
鋭い切り傷などの急性の機械的刺激に反応する受容器。

Aδ線維熱侵害受容器
高温(45℃以上)の刺激に反応する受容器。

C線維多形性侵害受容器
低温(10℃以下)、高温(45℃以上)、化学物質などの多種類の刺激に反応する受容器。

C線維沈黙侵害受容器
通常は活動しないが、組織の損傷や炎症によって活性化される受容器。

神経信号の伝達

次に、興奮した神経終末から神経信号(アクションポテンシャル)が伝わり、”痛覚神経線維”を通じて脊髄へ送られます。
このステップで重要な”痛覚神経線維”とは、痛みや温冷感覚を感知する神経線維のことです。
この神経線維は主に…

  • Aδ線維
  • C線維

…の2種類があります。

Aδ線維
有髄神経で伝導速度が速く、チクッとするような鋭い痛み(一次痛)に関係しています。

C線維
無髄神経で伝導速度が遅く、ズゥーンとするような鈍い痛み(二次痛)に関係しています。

また、痛覚神経線維を伝わる”神経信号(アクションポテンシャル)”は、神経細胞が電気的な変化や化学物質を用いて情報を伝達する仕組みを指します。
この神経信号は、中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系(体の他の部分)の間で感覚や運動などの情報をやりとりします。
神経信号は、神経系の構造や機能に応じていくつかの異なる分類があります。

脊髄での処理

そして神経信号は脊髄では、痛覚情報が他の神経情報と統合され、迅速な反応を促すために優先的に処理されます。
脊髄内で情報の選別や変更が行われることがあります。

このステップでは”脊髄後角”が重要になります。

脊髄後角は、末梢神経からの痛覚や温度覚などの感覚信号を受け取り、これを脳へ伝達する役割を果たす部位です。
この領域には多くの神経細胞や”内因性オピオイドペプチド”が存在し、感覚信号の処理や統合に関与しています。
感覚信号はここで解析され、それに基づいて痛みや温度などの感覚が脳で知覚されます。

脊髄後角に異常が生じると、慢性的な疼痛の原因となることがあります。
これは、感覚信号の処理や調整が妨げられることで、正常な感覚が歪められたり過度に強調されたりすることに起因します。
このような状態は、慢性疼痛症候群や神経障害性疼痛の一因となることがあります。

脳への伝達

脊髄での初期処理が終わった痛覚情報は、上行性伝達路を通じて脳へ送られます。
脊髄背角から視床下部や脳幹、脳皮質へ伝わる経路が含まれます。

このステップで重要な器官は”視床”になります。

視床は、脳の構造の中で間脳の一部を占める領域であり、主に感覚入力を中継して大脳新皮質に伝える重要な役割を果たしています。
この視床は第三脳室の背側部に位置し、卵形をした構造を持っています。

痛覚の知覚

痛覚を感知する最後のステップとして重要なのが”大脳皮質”になります。

大脳皮質は、大脳の表面に広がる神経細胞の灰白質から成る薄い層です。
この大脳皮質では、痛みの強さや性質、位置や意味などが認知されます。

痛覚のメカニズムを知ることで、感覚障害の場合どのステップに問題があるのかを見当つけることができるからね!
痛覚過敏を考えるときも、このメカニズムを理解していないといけませんね!

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