ノッティンガム感覚評価(NSA) – 対象疾患・目的・方法について

検査

標準化された感覚検査としてノッティンガム感覚評価(NSA)があげられます。
本記事ではこの検査の対象や目的、方法について解説します。


ノッティンガム感覚評価(NSA)とは?

ノッティンガム感覚評価(NSA)は、は、患者の触覚、温度、運動感覚、立体視などの感覚機能を評価するための標準化された方法です。
NSAは、患者の状態と特性に敏感に対応しながら検査を計画・実施することが重要になります。

対象疾患

NSAは主に脳卒中患者を対象としています。

目的

NSAは検査対象である脳卒中患者の…

  • 感覚障害の評価
  • 回復プロセス

…を評価することを目的に使用されます。

検査時間

患者の感覚障害によってはNSAが完了するまでに最大60分かかる場合があります。

時間がかかる分、事前に患者さんの状態把握や説明をしておく必要があるだろうね!
検査後半の疲労度などにも注意を払っておくことも重要でしょうね!

検査方法

NSAはその検査対象感覚を大きく分けると…

  • 触覚
  • 運動覚
  • 立体感覚

…の3つになります。
それぞれ解説します。

触覚

NSAにおける触覚検査の方法ですが、それぞれポイント別に解説します。

準備物

NSAの触覚検査では、目隠し、綿毛ボール、ニューロチップ、試験管2本、温水と冷水、タルカムパウダーを使用します。

採点基準

NSAの触覚検査の採点基準は以下の通りになります。

0(消失):3回認識できない場合
1(低下):テストの感覚を識別できるが3回すべてではない場合
2(正常): 3回すべてで正しく回答可能な場合
9(評価不能):テスト不可の場合

検査方法

NSAでの触覚の項目では次のような方法で検査します。
回数はそれぞれ3回繰り返します。

  • ライトタッチ:綿球で皮膚を軽く触る。
  • 圧迫:人差し指で皮膚の輪郭が変形する程度に皮膚を押す。
  • ピンプリック:神経針で皮膚を均等な圧力で刺す。
  • 温度:熱湯と冷水を入れた2本の試験管の側面で皮膚を触る。熱い試験管と冷たい試験管をランダムに順番に当てる。
  • 触覚の定位:圧力の項目で2点を獲得した部位のみをテストする。タルカムパウダーを塗った人差し指の指先で圧テストを繰り返し、触られた場所に印をつけ、患者に触られた場所を正確に指差すように指示する。
  • 両側検査:体の片側または両側の対応する部位を指先で触る。患者が圧力の項目で2を獲得した項目にのみ触れる。それ以外は「9」と記録する。

運動覚

次にNSAにおける運動覚の検査方法ですが、ここでは運動感覚、方向感覚、正確な関節位置感覚の3つの側面が同時に評価されます。

準備物

NSAの運動覚検査では、目隠しを使用します。

採点基準

NSAの運動感覚の採点基準は以下の通りになります。

0(消失): 動作が行われていることがわからない。
1(感覚がある): 患者は動作のたびに、動作が行われていることを示すが、動作の方向が正しくない。
2(方向がある): 患者はテスト動作の方向を認識し、そのたびにテスト動作の方向をミラーリングできるが、新しい位置では不正確である。

検査姿勢

上肢は座位で、下肢は仰臥位で検査します。

検査方法

検査者が患側の手足を支え、一度に一つの関節を様々な方向に動かします。
患者はもう片方の手足で動きの変化を映すように指示されます。

動作練習

目隠しをする前に3回の動作練習を行います。

立体感覚

NSAにおける立体感覚の項目について解説します。

準備物

準備物として目隠し、2ペンス硬貨、10ペンス硬貨、50ペンス硬貨、ペン、鉛筆、くし、はさみ、スポンジ、布、コップ、グラス

採点基準

NSAの立体感覚の項目の採点基準は以下の通りになります。

0 (消失): いかなる方法でも対象物を識別できない。
1 (障害): 対象物の特徴がいくつか識別されるか、対象物の説明が試みられる。
2 (正常): 物体の名称が正しいか、照合されている。
9 (不可): テストが不可能な場合。

検査方法

最初に麻痺側を検査し、その後非麻痺側を検査します。
対象物を最大30秒間、患者の手の中に置きます。
手の中の対象物の名称、説明、マッチングを行います

検査者は患側の手で物体を動かしてもよいとされています。

NSAは触覚、運動覚、立体覚を主に体系的に検査する方法ってことだね!
でも感覚は患者さんの主観によるものですから、標準化、体系化が難しいでしょうね。

関連研究

ここではノッティンガム感覚評価の関連研究について解説します。

NSAとFMA(感覚検査項目)が実用的

ConnellとTyson (2012) による研究では、神経学的疾患における感覚の測定方法の包括的なレビューを行っています。
彼らは、ノッティンガム感覚評価のエラスムスMC修正版とFugl-Meyer評価の感覚セクションが、臨床的実用性と測定特性のバランスが最も良いことを発見しました 1)

イタリア語版NSAも信頼性が高い

Baroniら (2022) の研究では、ノッティンガム感覚評価のエラスムスMC修正版のイタリア語版に関する研究が行われています。
この研究ではこのツールが脳損傷を受けた患者の主要な感覚障害を評価するための信頼性の高いスクリーニングツールであることが示されています2)

ブラジルでの脳卒中患者の感覚機能評価にNSAが適切なツールである

Limaら (2010) は、ブラジル版のノッティンガム感覚評価の信頼性、合意性、妥当性を調査しました。
その結果、このツールが脳卒中患者の感覚機能評価に有効であると結論付けています3)

参考

  • 1)Connell, L., & Tyson, S. (2012). Measures of sensation in neurological conditions: a systematic review. Clinical Rehabilitation, 26, 68 – 80. https://doi.org/10.1177/0269215511412982.
  • 2)Baroni, A., Bassini, G., Marcello, E., Filippini, F., Mottaran, S., Lavezzi, S., Crow, J., Basaglia, N., & Straudi, S. (2022). The Italian version of the Erasmus MC modifications to the Nottingham Sensory Assessment for patients following acquired brain injury: Translation and reliability study. Clinical Rehabilitation, 36, 1655 – 1665. https://doi.org/10.1177/02692155221111920.
  • 3)Lima, D., Queiroz, A., Salvo, G., Yoneyama, S., Oberg, T., & Lima, N. (2010). Brazilian version of the Nottingham Sensory Assessment: validity, agreement and reliability.. Revista brasileira de fisioterapia (Sao Carlos (Sao Paulo, Brazil)), 14 2, 166-74 . https://doi.org/10.1590/S1413-35552010005000006.

関連文献

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