ホーン・ヤール(Hoehn-Yahr)の重症度分類【意味や改訂版との違いなどについて】

難病であるパーキンソン病の病状を把握するための基準として“ホーン・ヤールの分類”があります。
そのクライアントのパーキンソン病の程度が、現段階ではどこにあるのか?
これを知ることは、多職種が関わる医療、介護の現場では必要な知識になります。

そこで今回はこのホーン・ヤールの分類の意味や、改訂版との違い、そして生活機能障害度との関連性などについて解説します。

ホーン・ヤールの分類とは?

“ホーン・ヤールの分類”とは、パーキンソン病の症状を評価するための基本であり、パーキンソン病の進行度(重症度)を示す指標として扱われています。
「Hoehn-Yahr重症度分類」や「ホーン・ヤールの分類」などと表記されたり、呼ばれることもあります。

ホーン・ヤールの分類は英語で何と言うか?

発表者の2人の名前が使われているので、ホーン・ヤールの分類を英語では“Hoehn-Yahr stage”や“Hoehn and Yahr stage”という表記になります。

ホーン・ヤールの分類の評価法

基本的にパーキンソン病であるクライアントの症状観察によって行います。
現段階で顕在化している症状とホーン・ヤールの分類のステージ別の特徴を照らし合わせていく…という形になります。

ホーン・ヤールの分類と改訂版の違いについて

ホーン・ヤールの分類については1967年に「Neurology」という神経学の雑誌に“Melvin Yahr”と“Margaret Hoehn”が発表したものが最初のようです。
最初はステージ1~5の5段階でしたが、その後改定が加わり、ステージ1.5と2.5が追加された7段階の改訂版が用いられることもあります。

ステージ ホーン・ヤールの分類 改訂版
1 一側性の障害がないor軽微 一側性の障害のみ
1.5   一側性の障害+体幹障害
2 両側性の障害・姿勢保持障害なし 両側性の障害・姿勢保持障害なし
2.5   軽度両側性障害・後方突進症状あるも立ち直り可能
3 軽~中等度両側性障害+平衡障害 軽~中等度両側性障害+平衡障害
4 重度両側性障害+平衡障害・歩行は可能 重度両側性障害+平衡障害・歩行は可能
5 車いす、寝たきりの状態 車いす、寝たきりの状態

ホーン・ヤールの分類と生活機能障害度

パーキンソン病の症状の進行度を把握するためには、ホーン・ヤールの分類だけでなく「生活機能障害度」も一緒に用いることでよりわかりやすく把握することができます。
この生活機能障害度はパーキンソン病のクライアントの生活機能がどの程度障害されているのか?に応じて1~3度の3段階に分類されています。

  • 1度:日常生活、通院にほとんど介助を要さない
  • 2度:日常生活に介助を要する
  • 3度:日常生活に全面的な介助を要し、歩行・起立が不能

ステージ間の時間について

パーキンソン病695例で、どの程度の時間で病状が進行していくか、ステージ進行の時間についての研究結果が2010年に発表されました。
この結果の中央値は、

ステージ 経過時間(ヶ月)
1
2 20
2.5 62
3 25
4 24
5 26

(平均年齢:65.2、男性:57.3%)
…となっています。
参考論文:Progression of Parkinson’s disease as evaluated by Hoehn and Yahr stage transition times.

ホーン・ヤールの分類を用いる“意味”について

では、この“ホーン・ヤールの分類”を臨床で使用する“意味”とはどのようなものになるのでしょうか?

考えるに、パーキンソン病を羅漢し、何かしらの障害を有して生活するには家族をはじめ様々な医療職、介護職といった方が関わることになります。
ここで「Aさんはパーキンソン病の方」という医療情報があったとしても、パーキンソン病でもその進行度によって症状も障害も異なりますし、それに合わせた対応も異なってきます。

つまり、パーキンソン病の症状進行に合わせた“基準”が共通言語として必要になってきます。
その共通言語が「ホーン・ヤールの分類」ということになるんですね。

ホーン・ヤールの分類は看護師も知っていないといけない?

上述したように、ホーン・ヤールの分類はリハビリセラピストのみ知っていても意味がありません。
その分類による障害の基準を看護師や介護福祉士などもスタッフもしっかり把握しておくことで、クライアントの情報共有が可能になってくるのだと思います。

ホーン・ヤールの分類と特定疾患について

パーキンソン病でホーン・ヤールの分類Ⅲ度以上、生活機能障害度2度以上の場合は特定疾患医療費補助制度を受ける事ができます。
これによって受診や薬代といった医療費の助成を受けることができます。

医療ソーシャルワーカー(MSW)が把握しておく知識かもしれませんが、セラピストだって知っておいて損はありません!

ホーン・ヤールの分類の覚え方

学生用ってわけではないですが、臨床でも「このクライアントはホーン・ヤールの分類でどのくらい?」って聞かれたときパッと答えられないとまずいので覚え方について。
そこで5段階のものですが、

  • 1:片側
  • 2:両側
  • 3:姿勢反射・歩行障害
  • 4:一部介助
  • 5:全介助

というように大まかにでも覚えておくとよいかもしれませんね。

「ホーン・ヤールの分類」についてのよくある質問

ここでは、ホーン・ヤールの分類についてよく新人作業療法士や学生から出た質問についてまとめておきます。

Q1.ホーン・ヤールの分類の使い方がわかりません

ホーン・ヤールの分類を実際の臨床や現場でどのように使うか?ということについてですが、やはり“情報共有”のために使うってことが重要なのかと思います。
前述したように、そのクライアントの症状把握のためには基準が必要ですからね。

あと、そのクライアントの“病状の進行の把握”に使用することが多いですかね?

Q2.ホーン・ヤールの分類はパーキンソン症候群にも適応でしょうか?

結論から言えば「クライアントの症状のイメージとしては使える」と思ってます。
というのも、パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いって、疾患や発生機序から大きく異なるってのもありますが、なにより「症状が進行するか、進行しないか」にあると思うんです。
パーキンソン病は症状が日によって進行していきますが、パーキンソン症候群がその症状は進行せず固定的です。

つまり、ホーン・ヤールの分類はあくまで「パーキンソン病の進行度」を示す指標ですから、パーキンソン症候群のクライアントの状態をホーン・ヤールの分類で示すってことは正確にはしません。
ただし、イメージとしてパーキンソン症候群の方の病状を伝える際に「ホーン・ヤールの分類でいえばⅢ度に近い病状」というように便宜的に使用することはありますけどね。

まとめ

今回はホーン・ヤールの分類の意味や、改訂版との違い、そして生活機能障害度との関連性などについて解説しました。
パーキンソン病は月日が経過するにつれて病状が進行していく難病です。

現段階の病状が重症度分類においてどのステージなのか?というのを明確にすることで共通言語化できることでそのクライアントに関わる様々なスタッフの適切な対応に繋がっていくのだと思います。

進行性の疾患だとなおさら経時的な基準で表現されることが多いから、標準言語として理解しておく必要があるからね!
関わる機関やスタッフが多ければ多いほど、情報共有の必要性が高まりますからね。

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