胸痛の原因疾患について

講座

胸が痛くなる状態である”胸痛”の原因は様々です。
本記事では、この胸痛の原因疾患について解説します。

胸痛の原因と要因

胸痛の原因としては主に…

  • 心臓血管由来の胸痛
  • 非心臓性胸痛(NCCP)

…に分けることができます。
以下にそれぞれ解説します。

心臓血管由来の胸痛

まず、心臓血管由来の胸痛ですがこれもさらに…

  • 狭心症
  • 心筋梗塞
  • 急性大動脈解離
  • 心膜炎

…などの原因によって分けられます。
以下にそれぞれ解説します。

狭心症

狭心症は、心筋の酸素需要と供給のバランスが崩れることで、心筋虚血が起き、その結果代謝産物が痛覚神経末端を刺激し、胸痛が生じます。
“労作性狭心症”では、身体活動時に胸の中央や左胸部などで胸痛を感じるだけでなく、胸痛が左肩や首、下顎、みぞおち、または肩から腕へ広がることがあります(放散)。

また、”不安定狭心症”では身体活動とは関係なく胸痛が現れることがあります。
不安定狭心症は、Braunwaldが提唱した不安定狭心症の分類によって、リスクの程度に応じた層別化が行われます。

心筋梗塞

心筋梗塞は、左前胸部または胸骨中央部で30分以上持続する激しい絞扼感や圧迫感が特徴で、しばしば顎や左肩、左腕にも広がる疼痛を伴います。
その他にも腹痛、吐き気、呼吸困難、動悸、失神、心不全、ショック、心停止などの症状も一緒に現れることがあります。

一般的に、心筋梗塞を患っている人の約60%は、典型的な胸痛を経験するようです。
しかし、年齢とともに胸痛を感じない心筋梗塞(無症候性心筋梗塞)の割合が増えていきます。

急性大動脈解離

急性動脈解離は、大動脈の内膜に亀裂が生じ、血液が内部に侵入して内壁を引き裂く疾患です。
この病態は心筋梗塞と似ていますが、急性大動脈解離では突然引き裂くような胸部の激痛に加え、背部~肩甲骨周囲に症状が現れることが特徴です。

心筋炎

心膜炎による胸痛は、心膜の炎症や心囊液貯留によって心膜が伸展することに起因します。
心膜炎による胸痛は主に左側に限定され、体位の変化、呼吸、咳嗽によって胸痛が悪化する特徴があります。

非心臓性胸痛(NCCP)

非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain:NCCP)は、心臓由来以外の胸痛をまとめて指します。
NCCPの中で最も頻度が高いのは、胃食道逆流症(gastro-esophageal reflex disease: GERD)や食道運動障害を含む、食道疾患です。

欧米ではNCCPの6割がGERDであったとの報告もあるようです1)

ちなみに他の疾患としては…

  • 呼吸器疾患(気胸、膿胸、肺癌)
  • 血管疾患(肺血栓塞栓症、肺梗塞)
  • 消化器疾患(食道破裂、急性膵炎、胆嚢炎)
  • 胸膜疾患(胸膜炎、胸膜腫瘍)

…など多岐にわたります。

胸痛の原因が心臓血管由来なのか、それとも非心臓性なのかを判別することも重要だろうね!
それによって対処も予防方法も変わってきますからね。

参考

1)Yunju, Jo. (2010). Noncardiac chest pain in young patients.. Journal of Neurogastroenterology and Motility, 16(3):345-345. doi: 10.5056/JNM.2010.16.3.345

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