展望記憶に関わる脳の領域について – 前頭葉、頭頂葉、海馬や視床など –

展望記憶は脳のどの領域が関わっているのでしょうか?
もちろん局所的に関わっているわけではないと思います。

ただし、展望記憶に関わっている脳の領域を理解することで、中枢疾患や脳損傷による記憶障害のクライアントへのリハビリに役立たせることができます。

そこで本記事では、展望記憶に関わっている脳の領域について解説します。

展望記憶の脳の支配領域について

では、展望記憶は脳のどの部分が関わっているのでしょうか?
ここでは脳の…

  • 前頭葉
  • 頭頂葉
  • 海馬
  • 海馬傍回領域
  • 視床
  • 帯状回(前帯状回と後帯状回)
  • …についてそれぞれ解説します。

    前頭葉

    展望記憶は、エピソード記憶、宣言的記憶、遡及的記憶、監督実行機能を含む記憶の機能であり、前頭葉によって制御されています。
    これはPETスキャンによる検査で、展望記憶課題を実行する際に、前頭葉の血流が少し増加することが確認されています。
    ちなみにこの活性化は、右の背外側、腹外側、内側領域、正中前頭葉の前頭前皮質があげられます。
    前頭前皮質は、意図を保持し他の思考を抑制する役割を持ちます。

    ちなみに前頭前皮質は、時間基盤型の展望記憶とは対照的に、主に事象基盤型に関与しているようです。

    頭頂葉

    頭頂葉は脳の上部に位置し、感覚情報を処理する領域です。
    頭頂葉は展望記憶において、特に視覚や空間の手がかりを認識することに関与します。
    また、頭頂葉は意図した行動に注意を向け、他の活動を抑制する役割も担っています。

    PET を使用した研究では、参加者が一連の数字を覚えるなどの視覚情報を含む展望記憶課題に従事すると、頭頂葉が活性化されることが示されています。
    参考:A fronto-parietal network for rapid visual information processing: a PET study of sustained attention and working memory

    海馬

    海馬は内側側頭葉にあり、記憶の検索において広範な役割を果たしています。
    展望記憶においては、海馬は他の記憶の中から意図した行動を探す役割を担っています。

    2008年のAddaらの研究によると、左側海馬への損傷のほうが展望記憶に悪い影響を与えることが示されています。
    もちろん海馬全体が展望記憶に関与している可能性がありますが、左側がより支配的な役割を果たしているということがわかります。
    参考:Prospective memory and mesial temporal epilepsy associated with hippocampal sclerosis

    PETを使用した研究では、事象基盤型および時間基盤型の展望記憶課題中の海馬の活性化が示されています。

    海馬傍回領域

    海馬傍回領域は海馬を囲む領域で、感覚情報が皮質領域から海馬に伝わります。
    この領域も展望記憶課題で活性化されますが、ここでは意図したアクションの実行をトリガーする役割を果たすようです。
    つまり、海馬傍回は、対連合の展望記憶課題で活性化される…ということになります。

    参考:The episodic memory system: neurocircuitry and disorders

    また海馬傍回は、提示された刺激の目新しさの監視にさらに関与していると考えられています。
    適切に監視しないと、本来行うべき予定などの意図を思い出そうとするときに、新しい刺激によって気が散ってしまう可能性があります。

    視床

    視床は海馬の近くにあり、感覚情報を仲介し、注意要求と細胞の応答を調整する役割を果たしています。
    視床は、意図の提示に応じて活性化され、合図の出現を期待する状況でのみ動作する可能性があります。
    つまり視床は「これから〇〇したい」という意図を維持し、適切な時期にのみ意図を実行することに関わる…と考えられます。
    参考:Brain regions involved in prospective memory as determined by positron emission tomography

    帯状回(前帯状回と後帯状回)

    帯状回は、海馬に関連する別の構造です。
    記憶機能におけるその役割は、海馬と皮質領域の間で情報を中継することです。
    前帯状回と後帯状回は、展望記憶の初期段階である意図の計画と作成に関与しているようです。
    参考:The pathophysiology of prospective memory failure after diffuse axonal injury – Lesion-symptom analysis using diffusion tensor imaging

    まとめ

    本記事では、展望記憶に関わっている脳の領域について解説しました。

    頭部外傷や脳卒中、さらには認知症などの疾患でも展望記憶の障害が確認できることがあります。
    脳のどの領域が関わっているかを知り、理解することで作業療法などのリハビリプログラムに役立たせることができるのかと思います。

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