高次脳機能障害のひとつである”注意障害”の責任病巣とはどこになるのでしょうか?
本記事では注意障害の原因、そして責任病巣について解説します。
注意障害の原因
高次脳機能障害としての”注意障害”は脳の損傷によって引き起こされると考えられています。
主な原因としては…
- 脳卒中
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 頭部外傷
…などがあげられます。
注意障害の責任病巣
さらに注意障害の責任病巣としては…
- 脳幹網様体
- 視床
- 基底核
- 中脳上丘
- 辺縁系
- 大脳皮質
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
脳幹網様体
脳幹網様体は中脳被蓋に存在し、覚醒と意識の維持に関連しています。
痛覚や深部知覚などの情報を脊髄から受け取り、脳幹網様体を通じて大脳皮質へ情報を伝達する役割を担います。
注意障害との関連ですが、Kinomura(1996)は、中脳網様体と視床層内核が注意を必要とする作業中に活性化されることを発見し、覚醒と警戒における役割を示唆しています1)。
視床
視床は脳幹被蓋に位置し、非特異核群や網状核が知覚情報の大脳皮質への伝達や運動の準備に関与しています。
これも1996年のKinomuraらによって視床層内核が注意力と関連していることが報告されています。
基底核
基底核は行動における知覚と運動の選択機能に関与し、左半側空間無視などの症状が基底核の病変によって報告されています。
注意障害との関連ですが、Ravizza(2001)の研究では、大脳基底核の損傷が注意の喚起に問題を引き起こすことがあり、この問題は単に運動要求の課題だけでは説明できないことが明らかになっています2)。
一方、Schouwenburg(2010)の研究では、大脳基底核が注意を移動させる際に前頭葉の後部との連携を調節する役割を発見しました3)。
中脳上丘
中脳上丘は周囲視野からの刺激に対する注意に関与しています。
ここでは周辺視野から入ってくる刺激に注意を向ける役割を担っています。
辺縁系
辺縁系は扁桃体、海馬、帯状回などから構成されています。
ここでは刺激情報の価値判断、情動の処理などにも関与しています。
大脳新皮質
大脳新皮質は注意の対象となる情報処理の中心になります。
前頭葉が高次神経機能に関する情報処理に関与し、知覚情報を選択し、目的に向かって行動を実現する選択機能や実行機能に重要です。
また、作業記憶モデルの中央制御部やSASの機能には前頭葉が関係していると推定されます。
参考
- 1)Activation by Attention of the Human Reticular Formation and Thalamic Intralaminar Nuclei
- 2)Comparison of the Basal Ganglia and Cerebellum in Shifting Attention.
- 3)The Human Basal Ganglia Modulate Frontal-Posterior Connectivity during Attention Shifting