TMT(トレイルメイキングテスト)- 目的・評価方法・カットオフ値・平均値・注意点・中止基準などについて

TMT(トレイルメイキングテスト)- 目的・評価方法・カットオフ値・平均値・注意点・中止基準などについて 検査

“TMT(トレイルメイキングテスト)”は高次脳機能障害である視覚的注意や視覚運動協調性に対して使われる検査の一つです。
臨床や現場で非常によく使用される検査ですが、方法は知っていても、どう解釈したらよいのか?…なんて作業療法士が多いようです。

そこで本記事では、注意障害の評価、検査方法である“TMT”の…

  • 概要
  • 対象疾患
  • 実施する目的
  • 具体的な検査方法や教示方法
  • 実施する際の注意点
  • 点数のカットオフ値や平均値

…などについて解説します。


TMT(トレイルメイキングテスト)とは?

TMT(トレイルメイキングテスト)とは?
TMTは“Trail Making Test(トレイルメイキングテスト)”の略称であり、高次脳機能障害である“注意障害”に対して使用される注意検査の一つです。
リハビリテーション医療でも特に作業療法や精神、心理領域で広く使用されています。

TMT検査の開発背景

TMT検査の開発背景
TMTはそもそも1944年にアメリカ陸軍の「Army Individual Test Battery」の一部として開発されました。
“ハルステッド・レイタン神経心理学的検査バッテリー(HPNB:Halstead-Reitan neuropsychological test battery)”を構成するテストの1つとしても用いられています。

TMTの目的について

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TMTによる検査を実施する目的としては以下のとおりです。

  • 注意機能(持続性、選択性、配分性)
  • 遂行機能(前頭葉機能)
  • ワーキングメモリ

また、主な目的ではないもののその検査方法から以下の能力についての情報も得ることができます。

  • 視覚的探索機能
  • 視覚運動協調性
  • 精神的な柔軟性
  • 実行機能
  • タスクの切り替え

TMTの対象疾患

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TMT検査の対象としては以下のような疾患があげられます

  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
  • 頭部外傷
  • 水頭症
  • 認知症

また、転倒リスクが高い高齢者や、そして最近では自動車運転能力の評価のために実施される場合もあります。

TMTの適応年齢

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20~89歳

所要時間

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約15分

準備物品について

TMT検査を行う際に必要な物品は以下の通りです。

  • 鉛筆
  • 消しゴム
  • ストップウォッチ
  • 検査用紙

TMTのA検査、B検査について

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TMT検査は“TMT-A”と“TMT-B”の2つで1セットとして扱います。
おなじTMTの検査でも“TMT-A”と“TMT-B”はそれぞれ評価するポイントが異なってきます。

TMT-Aの概要と検査方法について

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用紙サイズ

A4用紙

記載内容

1~25まで数字がランダムに配置されている

検査方法

被験者は1から順番に1-2-3と鉛筆で線を結んでいく

教示方法

TMT-Aにおける教示方法は以下のようにガイドラインにて決められています。

TMT-A検査の練習

TMT-A練習用用紙を被験者に見せながら,

「今から,検査のための練習をします。
この用紙に書かれている数字の1から2,3というように数字の順番に,できるだけ早く,線で結んでください。
最後の8まで結ぶのにかかる時間を測定します。
途中で結ぶ順番を間違ったときには,『間違っています』といいますので,すぐに訂正して次に進んでください。
また最後の数字を結ぶまで鉛筆を紙から浮かさないでください。
もしも浮いてしまったときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字の順に,線で結んでください。
ではどうぞ」
…と教示をし、終わったと同時にストップウォッチをスタートします。

TMT-Aの本検査

TMT-A本検査用紙を被験者に見せながら,

「今度は本番です。
数字が多くなっていますが,やり方は一緒です。
この用紙に書かれている数字の①から順に,できるだけ早く,線で結んでください。
最後の数字まで結ぶのにかかる時間を測定いたします。
途中で結ぶ順番を間違ったときには,『間違っています』と言いますので,すぐに訂正して次に進んでください。
また最後の数字を結ぶまで鉛筆を紙から浮かさないでください。
もしも浮いてしまったときには,『鉛筆が浮いています』と言いますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字の順に,線で結んでください。
ではどうぞ。」

…と練習同様、教示が終わったと同時にストップウォッチをスタートします。

計測

“25”をゴールにし、そこまで到達するまでの所要時間を計測します

TMT-Bの概要と検査方法について

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用紙サイズ

A4用紙

記載内容

1~13までの数字「あ」から「し」までの平仮名がランダムに配置されている

検査方法

被験者に数字と平仮名を交互に順番通りに線で結んでいく(1→あ→2→い→3…)

教示方法

TMT-Bにおける教示方法は以下のようにガイドラインにて決められています。

TMT-B検査の練習

TMT-B練習用用紙を被験者に見せながら,

「今度は少し違うことをしていただきます。
最初はまた練習です。
今度は『1-あ-2-い-3-う』というように数字と仮名とを交互に,順番に,結んでいっていただきたいのです。
もし途中で数字と仮名が交互でなかったり,順番を間違ったりしたときには,『間違っています』といいますので,すぐ訂正して次に進んでください。
また,鉛筆が紙から離れたときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字と仮名を交互に,順番に,線で結んでいってください。
いいですか,ではどうぞ」

と教示をし、終わったと同時にストップウォッチをスタートします。

TMT-Bの本検査

TMT-B本検査用紙を被験者に見せながら,

「今度は,本番です。
数字と文字が多くなっていますが,やり方は一緒です。
今度も『1-あ-2-い-3-う』というように数字と仮名とを交互に,順番に,結んでいっていただきます。
もし途中で数字と仮名が交互でなかったり,順番を間違ったりしたときには,『間違っています』といいますので,すぐ訂正して次に進んでください。
また,鉛筆が紙から離れたときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字と仮名を交互に,順番に,線で結んでいってください。
いいですか,ではどうぞ」

…と練習同様、教示が終わったと同時にストップウォッチをスタートします。

計測

“13”をゴールまで到達するまでの所要時間を計測します(制限時間は300秒)

TMT-AとTMT-Bで共通する点、異なる点

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“TMT-A”、“TMT-B”それぞれの共通する点、また異なる点については以下のとおりになります。

共通点

“TMT-A”、“TMT-B”の両者に共通する点としては、

  • 視覚性の探索能力
  • 注意機能の選択性注意

があげられます。

異なる点

また、異なる点としては、
“TMT-B”は“数字と平仮名を順番に交互に線で結ぶ”という課題のため、

  • ワーキングメモリ
  • 分割的(分配)注意機能

を検査することができます。
つまり“TMT-A”、“TMT-B”の両方とも著しく低い検査結果の場合は「視覚性の探索能力」「注意機能の選択性注意」の障害としてみるのが妥当ですし、
“TMT-B”のみに著しく低い検査結果の場合は、「ワーキングメモリ」「分割的注意機能」の障害…いわゆる前頭葉の機能低下として推測することができます。

TMTにおける注意点について

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TMTを実施する際には以下の点に注意が必要です。

  • 本番前には必ず練習問題を行う
  • 鉛筆は紙から浮かさない
  • B検査では制限時間が5分

以下にそれぞれ詳しく説明します!

本番前には必ず練習問題を行う(中止基準について)

“TMT-A”、“TMT-B”両者とも必ず練習用紙を用いた練習問題を行ってから本検査を行います。
この時点でしっかりと検査指示内容の理解ができているかどうかを把握することが検者には求められます。
ちなみにTMT-A,TMT-Bともに練習問題自体が施行できない場合は中止となります。

鉛筆は紙から浮かさない!

“TMT-A”、“TMT-B”ともスタートからゴールまで鉛筆を用紙から浮かさないようにして線を結んでいきます。
この点も練習問題を実施する段階で被験者に伝えておく必要があります。
また、教示内容でも触れたように、鉛筆が紙から離れたときには「鉛筆が浮いています」と注意することは認められていますが、検査上の観察ポイントとしてチェックしておく必要があります。

B検査では制限時間が5分!

“TMT-B”では制限時間が最大5分とされています。
制限時間内でゴール間で達成できなかった場合は「評価不能」と判断します。
もちろん作業療法士としては単純に「評価不能」で終わらせるのではなく、「なぜゴール達成ができなかったか?」を分析的に追求していく必要があります!

TMT適応外の例

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TMTを行うべきでない、いわゆる適応外の例については以下のとおりになります。

  • 鉛筆を使用できない場合
  • 指示理解困難の失語症の場合
  • 半側空間無視の場合

…などがあげられます。
以下それぞれ詳細について説明します!

鉛筆を使用できない場合

被験者が重度の運動障害で、鉛筆を把持し線を結ぶことができない場合はTMTの検査対象外とします。
ただし鉛筆の持ち方や使用方法については言及していない点から、自助具や補助道具を使用した上で鉛筆の使用が可能かどうかを試してみるのも作業療法士としては必要な評価といえます。
また片麻痺で利き手が麻痺手の場合でも、非利き手を使用し拙劣でも鉛筆を使用することができれば問題はありません。

指示理解困難の失語症の場合

被験者が重度の失語症などの指示理解が困難な場合は適応外とします。
ただしあくまで“指示理解困難”の場合ですから、ブローカ失語症といった言語理解に問題はない場合はTMTの適応対象になります。

半側空間無視の場合

被験者が軽度でも半側空間無視を有している場合も、その点数結果に大きな影響を及ぼす場合があるので適応外とします。

TMTの平均値、カットオフ値について

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“TMT-A”、“TMT-B”における検査結果における平均値、カットオフ値については様々な報告や研究が行われていますが「○○点」という明確な設定がされていないのが現状です。
以下に各論文や報告別に平均値や標準値、カットオフ値について記載します。

TMT-A(縦版)を行った男性被験者の標準値

年齢 中央値 75%範囲
65~69 52.27秒 (39.1~69.1)
70~74 62.88秒 (44.9~86.5)
75~79 61.43秒 (46.0~97.5)
80~ 105.09秒 (77.6~176.3)

TMT-A(縦版)を行った女性被験者の標準値

年齢 中央値 75%範囲
65~69 54.43秒 (36.6~92.1)
70~74 59.53秒 (46.7~77.6)
75~79 73.08秒 (57.4~117.6)
80~ 114.78秒 (68.3~174.7)

⊿TMT の性別による中央値

性別 中央値
男性 58.61秒
女性 65.67秒

参考論文:地域在住高齢者における注意機能と心身機能との関連性

TMT-A(横版)の年齢別平均値

年齢別 平均時間 標準偏差
20歳代 66.9秒 15.4
30歳代 70.9秒 18.5
40歳代 87.2秒 27.9
50歳代 109.2秒 35.6
60歳代 157.6秒 65.8

TMT-B(横版)の年齢別平均値

年齢別 平均時間 標準偏差
20歳代 83.9秒 23.7
30歳代 90.1秒 25.3
40歳代 121.2秒 48.6
50歳代 150.2秒 51.3
60歳代 216.2秒 84.7

TMTのカットオフ値について

TMT-A、TMT-Bそれぞれに対しての明確なカットオフ値を算出した文献や先行研究、論文は少ないのですが、上城らの研究によると認知機能状態を判別するためのTMT-Aのカットオフ値は117.5秒という結果がありますので、参考値とするとよいかもしれません。
参考論文:地域在住高齢者における注意機能と心身機能との関連性

TMTと自動車運転のカットオフ値について

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注意機能や遂行機能の検査として有用なTMT検査ですが、高次脳機能障害の方や高齢者の自動車運転再開、運転免許更新のための指標としての研究も行われています。
しかし現段階では自動車運転におけるTMT検査のカットオフ値は明確に指定はされていないものの、

  • TMT-A:168秒
  • TMT-B:244秒

…という暫定的なカットオフ値が算出されています。
参考論文:生活訓練利用者における実車運転評価と神経心理学的検査との関連性について

TMTの検査用紙(pdf)について

TMTの検査用紙はインターネット上でダウンロードできますが、著作権の関係、また検査の正確性などの観点から正規に販売しているものを購入することをおすすめします。

Q&A

Q.縦型と横型があるけど、どちらを使用したらよい?
A.国内で使用されているTMTは統一されておらず、Reitanの日本語改訂版や鹿島らの日本語版など複数の図版が用いられているのが現状です。また、両者ではその線の長さや軌跡の違いから遂行時間が異なる点で縦型と横型を比較することはできません。そのためTMTで検査した際は、縦型で行ったのか、横型で行ったのかを記載しておく必要があります。国際比較を前提として検査するには、Reitanらの図版のアルファベットを仮名文字に置き換えた改訂版を使用するほうがよいようです。

Q.被験者が順番を誤った数字(ひらがな)を結んでしまった場合は誤りを指摘すべきか?
A.被験者が順番を誤り数字やひらがなを結んでしまった場合は、その都度検者が指摘し修正することが求められます。その際ストップウォッチは止めず計時は継続したままで、最後まで到達した時点で所要時間(秒)を記録します。

TMTにはA検査、B検査があり、それぞれ方法や注意点が異なるから検査方法をしっかり把握しておく必要があるだろうね!
また平均値やカットオフ値は明確でなく、あくまで参考程度にすることが重要でしょうね!

関連文献

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