注意プロセストレーニング (Attention Process Training :APT)とは?

用語

注意障害の作業療法訓練の一つとして、”注意プロセストレーニング (APT)”があげられます。
本記事ではこのAPTについて解説します。

注意プロセストレーニング (APT)とは?

注意プロセストレーニング(Attention Process Training:APT)は、注意の4つの主要な機能(持続、選択、転換、分配)に焦点を当てた訓練プログラムです。
このトレーニングは、個人の注意の機能を向上させ、日常生活での課題に対処する能力を向上させることを目的としています。

1986年と1987年に、Sohlbergらによって開発されました。

APTの方法


APTは、以下の4つの特性に分けて注意力を訓練します。

  • 持続性注意の訓練(Sustained Training)
  • 選択的注意の訓練(Selective Attention)
  • 代替性注意の訓練(lternating training)
  • 分割性注意の訓練(divided attention)

それぞれ解説します。

持続性注意の訓練(Sustained Training)

一定の時間にわたって注意を維持する能力の訓練です。
この訓練には…

  • number canceliation
  • attenntion tapes
  • serial number

…という方法があります。

Number Cancellation(数字の取り消し)

Number Cancellationは、一連の数字が含まれたリストやグリッドが提供され、特定の数字を見つけて取り消す課題です。
通常、被験者は指定された数字(例: 7)を見つけて線で取り消す作業を行います。

Number Cancellationの目的としては、被験者の視覚的な注意力と集中力を向上させることです。
数字を見つけ、取り消す作業は持続的な注意が必要であり、これにより注意力の訓練が行われます。

Attention Tapes(注意テープ)

Attention Tapesは、オーディオ録音を使用した訓練プログラムです。
被験者は指示に従い、特定の音や課題に注意を集中します。
指示には音声や音楽、語りかけなどが含まれることがあります。

この訓練プログラムの目的は、聴覚的な持続的な注意力を養成し、外部刺激に対する集中力を高めることです。
被験者は指示に従い、特定の音に反応する練習を行います。

Serial Number(連番の数字)

Serial Numberは、数字が連続して提示される課題です。
被験者は数字の連番を追跡し、特定の条件を満たす数字(例: 偶数だけ)に注意を払います。

この課題の主な目的は、数字の連番を追跡し、一貫した注意を保つ能力を向上させることです。
特定の条件を満たす数字に注意を集中することで、持続性のある注意力が鍛えられます。

これらの持続性注意訓練課題は、被験者が持続的な注意を維持し、外部刺激に対処するスキルを向上させるのに役立ちます。
APTの一環として使用され、注意障害を持つ個人の日常生活での注意力の向上を支援します。

選択的注意の訓練(Selective Attention)

目的に関係する刺激に注意を向ける能力の訓練です。
この訓練には…

  • shape cancellation with distractor overlay
  • number cancellation with distractor overlay
  • attention tapes (with background noise)

…という課題があります。

Shape Cancellation with Distractor Overlay(選択的注意の形状取り消し課題 with ディストラクターオーバーレイ)

この課題では、被験者に複数の図形(通常は特定の形状、例: 円や四角)が描かれたリストやグリッドが提示されます。
被験者の仕事は、特定の形状(目標)を見つけて取り消し、同時に他の形状(ディストラクター)を無視することです。
ディストラクターは、目標を見つける際に邪魔になる要素です。

この課題の主な目的は、選択的な視覚的な注意力を向上させることです。
被験者は目標形状に焦点を合わせ、同時にディストラクターを無視するトレーニングを行います。

Number Cancellation with Distractor Overlay(選択的注意の数字取り消し課題 with ディストラクターオーバーレイ)

この課題は、数字のリストやグリッドが提示され、被験者に特定の数字(目標)を見つけて取り消す作業を行います。
しかし、ディストラクターとして他の数字も同時に表示され、それらは目標の発見を困難にします。

この課題の主な目的は、選択的な注意力と集中力を高めることです。
被験者は目標数字を特定し、ディストラクターを無視する能力を向上させます。

Attention Tapes (with Background Noise)(選択的注意の音声テープ with バックグラウンドノイズ)

この訓練プログラムでは、オーディオ録音が使用され、被験者は特定の指示に従って注意を集中します。
このバリエーションでは、バックグラウンドノイズ(例: 騒音、雑音)が追加され、被験者が指示に集中する際に外部刺激が存在します。

この課題の主な目的は、選択的な聴覚的な注意力を向上させることです。
被験者は指示に集中し、バックグラウンドノイズを無視して作業を行う練習をします。

これらの選択的注意の訓練課題は、被験者が特定の情報に焦点を当て、同時に他の情報を無視するスキルを養成するのに役立ちます。
APTの一環として使用され、注意力の向上と注意障害の管理を支援します。
ディストラクターやバックグラウンドノイズの導入により、現実的な環境での注意力の強化が可能となります。

代替性注意の訓練(lternating training)

刺激や課題に応じて注意を切り替える能力の訓練です。

  • flexible shape cancellation
  • flexible number cancellation
  • odd and even number identification
  • addition subtraction flexibility
  • set dependent activity

…という課題があります。

Flexible Shape Cancellation(柔軟な形状取り消し)

この訓練では、被験者は柔軟なアプローチを用いて、指定された形状を取り消す課題を行います。
柔軟性を養うため、形状や色などが変化する場合があります。

この課題は、柔軟性を持った注意と判断力を向上させることを目的としています。
被験者は状況に応じて異なる形状を取り消すスキルを養います。

Flexible Number Cancellation(柔軟な数字取り消し)

この課題では、柔軟なアプローチを使用して、指定された数字を取り消す作業が行われます。
数字の位置や順序が変化する場合があります。

この課題は、被験者が柔軟な注意力を発展させ、数字の取り消しに関する柔軟性を向上させることを意図しています。

Odd and Even Number Identification(奇数と偶数の識別)

被験者は数字のリストから奇数と偶数を識別し、それらを分類します。
この課題では数字の識別と分類が行われます。

この課題は被験者の数字に関する識別力と分類能力を向上させ、柔軟な注意力を鍛えます。

Addition Subtraction Flexibility(加算減算の柔軟性)

被験者は数学的な計算を行いますが、計算方法(加算または減算)が柔軟に変化します。
被験者は指示に従って正しい計算方法を選択します。

この課題は被験者の計算スキルと柔軟性を向上させ、数学的な注意力を養います。

Set Dependent Activity(集合依存型アクティビティ)

この課題は、被験者が特定の集合に関する情報を扱います。
被験者は集合に関するタスクを実行し、集合内のアイテムを識別します。

この課題は被験者の集合に関する注意力と識別力を向上させ、集合の特性を理解する能力を養います。

これらの代替性の注意の訓練課題は、柔軟な注意力と認知機能を向上させるのに役立ちます。
個々の課題は異なる注意プロセスや認知スキルを対象としており、被験者に異なるタイプの認知的挑戦を提供します。
APTの一環として使用され、注意力の向上と注意障害の管理をサポートします。

分割性注意の訓練(divided attention)

複数の刺激や課題に同時に注意を分ける能力の訓練です。

  • dual tape and cancellation task
  • card sort

Dual Tape and Cancellation Task(二重テープと取り消しタスク)

この訓練では、被験者は二つの異なる課題を同時に実行します。
一方の課題はテープの配置に関連し、もう一方の課題は取り消しタスクに関連します。
被験者は二つの異なる情報を同時に処理する必要があります。

この課題は、被験者の分割性注意を向上させることを目的としています。
彼らは複数の課題を同時に管理し、注意のリソースを適切に割り当てる方法を学びます。

Card Sort(カードソート)

この課題では、被験者は一連のカードをさまざまな基準に基づいてソートする必要があります。
基準はタスクごとに異なり、被験者はカードを適切なカテゴリに割り当てる必要があります。

この課題は被験者の柔軟性、分割性注意、認知切り替えの能力を向上させることを意図しています。
被験者は異なる基準に従ってカードをソートする際に、注意力と判断力を鍛えます。

これらの分割性注意の訓練課題は、複数のタスクや情報を同時に処理する能力を向上させるのに役立ちます。
注意の分割性を高め、認知の柔軟性を促進するために使用されます。
APTの一環として、注意プロセスの改善と注意障害の管理をサポートします。

あくまで机上での訓練だから、いかにこの基礎的な注意力を日常生活に汎化させるか?も重要だね!
そのためにも、その患者さん自身の生活情報が必要になりますね!

参考

注意障害に対するAttention process trainingの紹介とその有用性
注意障害の臨床

関連文献

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