半側空間無視の責任病巣とは?【一つだけではないんです】

半側空間無視ってリハビリの臨床や現場では非常に多くみられる高次脳機能障害の一つだと思います。
今回はこの半側空間無視の責任病巣について解説します。

半側空間無視とは

まず半側空間無視の定義ですが…
大脳半球病巣と反対側の刺激に対して、発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態
…となります。

脳梗塞や脳出血が大脳半球に生じた場合に起こることが多く、急性期を除けば右半球損傷後に生じる左半側空間無視がほとんどのようです。

半側空間無視の責任病巣について

半側空間無視の責任病巣について言及する場合、前提として半側空間無視の責任病巣については様々な意見・説があるのが実際のところ。
つまり、逆を言えばどこか一か所の決定的な責任病巣に依存するような症状ではないということを念頭に置かないといけません。

その上で…

  • 側頭-頭頂-後頭葉接合部付近
  • 空間性注意の神経ネットワーク関連部位(後部頭頂葉、前頭眼野、帯状回、視床、線条体、上丘)
  • 後大脳動脈領域支配部位(前頭葉・後頭葉・側頭葉)
  • 内包後脚
  • 白質病変

…といった部位が責任病巣としてあげられます。

以下にもう少し詳細に各責任病巣について触れてみたいと思います。

側頭-頭頂-後頭葉接合部付近

従来の半側空間無視の責任病巣として重要とされてきたのが、この“側頭-頭頂-後頭葉接合部付近”とされてきました。
もう少し詳細に述べると、

  • 側頭葉
  • 頭頂葉(下頭頂小葉)
  • 後頭葉(上側頭回、角回)

…の部位の接合部周囲となります。

しかし、後述する他の部位でも半側空間無視の症状が確認されています。
つまり、あくまでこの“側頭-頭頂葉(下頭頂小葉)-後頭葉接合部付近(上側頭回、角回)”は半側空間無視の責任病巣の一つとしてであって、全てではないと解釈したほうがよいことになります。

空間性注意の神経ネットワーク関連部位

空間性注意とは、外界と個体との空間的関係の中で、意識を適切な対象に集中し、また必要に応じて移動していく過程の総体…とされています。
現在では、半側空間無視はこの空間性注意の神経ネットワークの機能不全によるもの…という考えが主流になっています。

空間性注意の神経ネットワークを構成する部位としては、

  • 後部頭頂葉
  • 前頭眼野
  • 帯状回
  • 視床
  • 線条体
  • 上丘

…になります。

後大脳動脈領域支配部位

後大脳動脈の支配領域である

  • 前頭葉
  • 後頭葉
  • 側頭葉

…といった部位の損傷でも半側空間無視の症状がみられる場合があります。

内包後脚

内包後脚も半側空間無視の責任病巣の一つとしてあげることができます。

白質病変

近年、半側空間無視の発症との関連にこの白質病変が注目されてきています。
特に頭頂葉と前頭葉とを連絡する上縦束の重要性が指摘されています。

まとめ

今回は半側空間無視の責任病巣について解説しました。。
このように半側空間無視の責任病巣…といっても様々ってことですね。

もちろん責任病巣から症状を読み取っていくことも重要です。
でも作業療法士としては目の前のクライアントの症状と、生活において障害となる現象を改善していくための“要素”として捉える必要があると思います。

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