レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)- 目的・方法・解釈や採点、平均・カットオフ値について

レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)- 目的・方法・解釈や採点、平均・カットオフ値について 検査

臨床で簡単にできる知的検査の一つである”レーブン色彩マトリックス検査”。
今回はこの目的や方法、結果の解釈や採点から平均値、そしてカットオフ値などについて解説します。


レーブン色彩マトリックス検査とは?


レーブン色彩マトリックス検査(RCPM:Raven’s Colored Progressive Materices)はイギリスの心理学者である“John C. Raven”によって開発された知的機能検査です。
簡単に検査実施ができること、短時間で可能なこと、採点や分析も行いやすい点からもスクリーニング検査として有用となります。

レーブン色彩マトリックス検査開発の経緯について

レーブン色彩マトリックス検査(RCPM)の開発の経緯について
開発の経緯としては、スピアマンの”一般知能g因子”を測定するために開発されたようです。

一般知能"g因子"とは? - 特徴と反論について
g因子は多様な認知タスクでのパフォーマンスに影響する知能の全体的な能力を示す概念です。本記事では一般知能g因子について解説します。

主な対象


基本は45歳以上の成人を対象にしています。
しかし、小児用知能検査として活用することを目的とした検証も行われており、有用という報告もあります。1)

所要時間


概ね、10~15分程度と言われています。

特徴


レーブン色彩マトリックス検査の問題は36問で構成されておりどれも言語でのやりとりを必要とせずに答えられる検査になっています。
また、前述したようにこの検査自体が簡単、かつ短時間で実施することができるため、被験者に過度な負担をかけることなく知的機能…特に推理能力を測定することができます。

加えて文化的な背景に影響されない点も特徴としてあげられます。

目的や理由について


レーブン色彩マトリックス検査を実施する目的、理由としては…

  • 被験者が失語症のため他の認知機能検査が実施できないから
  • 知的機能の中でも“視空間知覚能力”と“類推能力”とに基づく非言語的知能を検査するため
  • 加齢によって影響を受けやすい非言語性、流動性の知的能力を検査するため

…などがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。

被験者が失語症のため他の認知機能検査が実施できないから

失語症の被験者にとって、言語に依存しない認知検査は非常に重要です。
レーブン色彩マトリックス検査は言語を使用せず、視覚的なパターンを理解し、それらを完成させることに焦点を当てています。
このため、言語能力に影響を受けずに認知機能を評価することが可能です。

失語症の人々は言葉を理解したり話したりする能力が損なわれているため、このような非言語的アプローチは、彼らの残された認知能力を正確に評価するのに役立ちます。

知的機能の中でも“視空間知覚能力”と“類推能力”とに基づく非言語的知能を検査するため

レーブン色彩マトリックス検査は、特に視空間知覚能力と類推能力を測定するのに適しています。
このテストでは、被験者は一連の視覚的パターンや図形を解釈し、それらに基づいて論理的な推論を行う必要があります。
これらのスキルは、日常生活での問題解決や複雑な情報の処理に不可欠であり、言葉に依存しない知能の側面を示します。

したがって、レーブンテストは、これら特定の認知能力のレベルを評価するための効果的な手段となります。

加齢によって影響を受けやすい非言語性、流動性の知的能力を検査するため

加齢に伴う認知機能の変化を理解するために、レーブン色彩マトリックス検査は有用です。
加齢により特に影響を受けるとされるのが、非言語性や流動性の高い知的能力です。
これらの能力は、新しい情報を処理し、柔軟な思考を行う能力に関連しています。

レーブンテストは、これらの能力を評価し、加齢による認知機能の変化を検出するのに役立つため、特に高齢者の認知評価において重要な役割を果たします。

失語症の方でも対象なのは非常に臨床向きですね!
そういう意味では脳血管障害を扱うSTは特に使う機会が多いでしょうね!

レーブン色彩マトリックス検査のセットについて


レーブン色彩マトリックス検査はA~Cの3セットに区分されます。
各セットと検査上求められる能力としては…

  • セットA:連続した模様の同一性と変化についての理解
  • セットB:個々の図の空間的に関連している全体としての理解
  • セットC:空間的にあるいは論理的に関連している図の相似の変化についての理解

…となります。

教示方法ややり方について


レーブン色彩マトリックス検査は、標準図案の欠如部に合致するものを6つの選択図案の中から1つだけ被検者に選ばせる…というやり方の検査です。
検査でもA1の検査はデモンストレーション的に行うのですが、以下のような教示の方法になります。

「(上方の図を指して)これを見てください。
穴が空いていて、一部が白くなっています。(下方に並んでいる6つの図形を順次指して)これらは白い部分を埋める“形”としては正しいのですが、こられの中のひとつだけが正しい模様です。
1番は正しい形ですが、正しい模様ではありません。2番は何も模様がありません。3番は違います。6番はほぼ正しいのですが、(白い部分を指して)ここが違います。ひとつだけが正しいのですが、正しいものを指してください。」

このような教示方法で検査方法が理解できるまで説明を続けます。

被験者が理解できたら、問題2(A2)を提示して…

「それでは、この模様が完成するように、正しいものを指してください」

基本的な教示の方法はこのようなものになります。

レーブン色彩マトリックス検査の点数結果について


レーブン色彩マトリックス検査の点数結果について解説します。
ここでは石本らの報告を参考にしてみます。2)

年齢群別の平均得点

年齢 平均得点 標準偏差
45~49歳 34.0点 2.030
50~59歳 34.2点 2.127
60~69歳 29.2点 5.398
70~79歳 26.9点 5.396
80~89歳 24.9点 5.273

カットオフ値について


レーブン色彩マトリックス検査において、24点以下の場合は知能低下ありと判断されます。

レーブン色彩マトリックス検査の評価用紙などを手に入れるには?

レーブン色彩マトリックス検査の評価用紙や手引き、記録用紙などは心理検査の販売代理店にて購入することができます。

サクセスベル

参考

1)健常児におけるレーヴン色彩マトリックス検査
2)痴呆老人におけるレーブン色彩マトリックス検査成績と作業活動との関係

患者さんの知的機能を評価することは、指導や自己管理などがどこまで認識できるか?ということにもつながるから、しっかりと評価するべき項目だろうね!
リハビリの臨床では、患者さん自身の行動につなげることが重要ですからね!

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