脳卒中は生活習慣病とも言われる病気で、2020年度には約10万人の方が脳卒中が原因で亡くなられています。
この10万人という数字は、その年の死亡者全体の7.5%になります。
また、亡くなってしまうという最悪の事態にまではいかなくても、体の麻痺や言語障害といった重い障害が残り、いままでの生活が一変してしまう…なんてことも多くあります。
実はこの恐ろしい病気である脳卒中に、前兆の症状があるということについては、意外にもあまり知られてはいません。
そこで今回は脳卒中の前兆として起こる6つの症状について解説します。
脳卒中の前兆として起こる6つの症状
ここでは、脳卒中の前兆症状として代表的な…
- 体の片側にしびれ、脱力感、違和感を感じる
- ろれつが回らなく、会話が成立しなくなる
- 突然歩けなくなったり、つまずいてしまう
- めまいや頭痛がひどくなる
- 片側の目がみえにくくなる
- 急にむせるようになる
…といった6つの症状について解説します。
体の片側にしびれ、脱力感、違和感を感じる
突然顔がしびれる、口の周りがしびれるという症状は、脳卒中の前兆として多くみられます。
また、急に手や足がしびれたり、力がうまく入らず脱力感が出現するという場合もあります。
物がつかみにくくなり、持っていた物を落としてしまうなんてこともあるようです。
特徴としてですが、右側もしくは左側といった片側に起こることが多い…という点があげられます。
これは脳卒中による片麻痺の症状の前兆とも捉えられますので、非常に危険な症状といえます。
また、しびれや脱力感はなくても、急に手足の震えや身に着けていないのに手袋や靴下を履いているような違和感を感じるときも注意が必要です。
ろれつが回らなく、会話が成立しなくなる
突然、舌がもつれ、呂律がまわらなくなりうまく話せなくなるというのも、多くみられる脳卒中の前兆です。
いままでなんの違和感もなく流暢に話せていたのが、急に話せなくなるという自覚もあるので、自分でも「おかしい」と思うことが多いようです。
また、頭では言葉がうかんでいるのに突然言葉がでてこなくなる、逆に相手の言葉が理解できなくなるというのも、脳卒中の前兆と言えます。
これは脳卒中を原因とする障害の一つである失語症の兆候とも言えます。
人によっては、計算ができなくなった、大声を出すと息切れするようになった…という兆候を示す人もいます。
突然歩けなくなったり、つまずいてしまう
今までなんともなかったのに、突然足がもつれるようになってうまく歩けなくなる…というのも脳卒中による運動障害の兆候と言えます。
「最近なんでもないところでつまずいて頻繁に転ぶんだよな」なんて言ってた人が、いざ病院で検査をしてみたら軽い脳卒中を起こしていた…なんてこともあるようです。
転びやすくなった、ちょっとした段差につまずいたり、階段で足をひっかけてしまい転ぶことが多くなった…という場合は注意が必要です。
めまいや頭痛がひどくなる
突然のめまいやふらつき、頭痛がある場合も脳卒中の前兆と言えます。
「突然バットで殴られたような激しい頭痛」となると、脳卒中の前兆というよりはすでに発症している状態なので、すぐに救急車を呼ぶことをお勧めします。
また軽い頭痛が数日続いている…という場合も、脳卒中の前兆の場合があります。
ただし、人によっては偏頭痛の場合があるので、「薬を飲んでしばらく様子をみておこう」なんて対応をしてしまうかと思います。
偏頭痛との違いですが、手足のしびれを伴う、いつもとは違う頭痛、頻度と程度が増していく頭痛…の場合は、一度受診をしてみることをお勧めします。
また、人によっては急に動悸が起こり冷や汗がでたり、肩こりがひどくなった…という前兆の場合もあるようです。
片側の目がみえにくくなる
突然片側の目がぼやけて見える、物が二重に見えるという症状も脳卒中の前兆と言えます。
ひどい人の場合は、突然片側の目が全くみえなくなる…という場合もあるようです。
また、急に片側の視力が落ちて、数秒から数分で回復するという場合もありますが、これは一過性黒内障とよばれる症状になります。
これも脳卒中の前兆とされる症状になります。
急にむせるようになる
いままで食事の際はなんともなかったのに、急に食べ物や飲み物が飲みこみにくくなり、むせるようになったという場合も、脳卒中の前兆と言えます。
当然と言えば当然なのですが、“飲みこむ”という動作も喉の筋肉の働きによるものです。
脳卒中による麻痺は、手や足が動かなくなる麻痺…というイメージが強いですが、この飲みこむ筋肉にも影響を及ぼします。
いつもよりなんだか飲み込みにくい…という場合は脳卒中の前兆と捉えたほうがよいかもしれません。
また、急に痰がからむようになったという場合もあるので、飲みこみにくさと同時に注意が必要です。
一過性脳虚血発作(TIA)とは?
実は、今回ご紹介したチェック項目の症状は、脳卒中の前兆である一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる症状に当てはまります。
このTIAは、手足のまひなど脳卒中と同じ前兆症状が一時的に続いて24時間以内に自然に消失する…という特徴になります。
また、TIAを起こした人の16~17%が90日以内に本格的な脳卒中を発症し、その半数以上が48時間以内という研究結果もあります。
「すぐにおさまったから大丈夫」と軽く考えるのではなく、「脳卒中の発症直前」と捉え、いち早く受診をする必要があると言えます。
脳卒中発症の早期発見のための“FAST”
また、脳卒中の発症時の代表的な症状を取り上げて“FAST”という標語があります。
これは米国脳卒中協会でつくられた標語で、脳卒中を疑う人がいたらこの3つのテストをするように…と推奨されているものです。
まとめ
今回は、脳卒中の発症に伴う前兆症状について解説しました。
脳卒中などの重篤な病気は予防することが最重要です。
でも発症しても早期発見、早期治療を行うことで後遺症を軽いものにすることも可能な病気です。
こういった”発症予防”だけでなく、”重篤化予防”という発想も必要でしょうね。