SIAS(脳卒中の機能障害評価法)- 目的・評価項目・方法・点数配点・カットオフ値などについて

目的・評価項目・方法・点数配点・カットオフ値などについて 検査

脳卒中の機能を総合的に評価するツールとして脳卒中機能障害評価セット(stroke impairment assessment set: SIAS)があげられます。
本記事では、このSIASの目的・評価項目・方法・点数配点・カットオフ値などについてなどについて解説します。


SIAS(脳卒中の機能障害評価法)とは?

SIAS(脳卒中の機能障害評価法)の定義
SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)は、1989年に開発された脳卒中による機能障害を定量化するための総合評価指標です。
SIASは、麻痺側運動機能、筋緊張、感覚障害、関節可動域、疼痛、体幹機能、視空間認知、言語機能、非麻痺側機能の9種類の機能障害に分類される22項目から構成されており、それぞれの項目は3点または5点満点で評価されます。
障害の程度が軽いほど得点が高くなり、評価は短時間で簡便に行えるため、脳卒中を発症して間もない患者の初期評価やリハビリテーションの効果を評価するために繰り返し実施することができます。
特別な道具を必要とせず、ベッドサイドでの実施も可能なため、定期的にSIASを用いた評価を行い、多面的に機能障害の変化を把握することが大切です。

このように、SIASは臨床現場での迅速かつ効果的な評価手法として広く利用されています。

目的

SIAS(脳卒中の機能障害評価法)の目的

SIAS(脳卒中機能障害評価法)による評価の主な目的として…

  • 初期評価
  • 機能障害の定量化
  • リハビリテーションの効果評価
  • 機能障害の変化の追跡

…があげられます。
それぞれ解説します。

初期評価

SIASは、脳卒中を発症して間もない患者さんの初期評価に用いられます。
発症直後は、患者の状態が急激に変化することが多く、迅速かつ正確な評価が求められます。
SIASは22項目から構成されており、各項目は3点または5点満点で評価されるため、短時間で簡便に実施できる特徴があります。
これにより、医療スタッフは患者の現状を迅速に把握し、適切な治療計画を立てることが可能です。

初期評価を通じて、個々の患者に最適なリハビリテーションプランを策定する基礎データを提供します。

機能障害の定量化

SIASは脳卒中による機能障害を定量化し、その程度を評価するためのツールです。
具体的には、麻痺側運動機能や筋緊張、感覚障害など、9種類の機能障害を22項目に分けて詳細に評価します。
この定量的評価により、障害の程度を客観的に把握することができ、治療の進行や効果を明確に示すことが可能となります。
定量化されたデータは、医療チーム間での情報共有を円滑にし、一貫したケアを提供する基盤となります。

また、定量化された評価は、患者や家族に対する説明をわかりやすくする助けにもなります。

リハビリテーションの効果評価

SIASは、繰り返しの実施によりリハビリテーションの効果を評価することができます。
リハビリテーションの過程で、患者の機能障害がどのように変化しているかを定期的に評価することで、治療の効果を具体的に把握することが可能です。
これにより、リハビリテーションプランの適切な修正や調整が行えるため、最適な治療を提供することができます。
評価結果は、患者のモチベーション向上にも寄与し、リハビリテーションに積極的に取り組む姿勢を促進します。

効果的なリハビリテーションは、患者の早期社会復帰を支援する重要な要素です。

機能障害の変化の追跡

定期的にSIASを用いた評価を行うことで、機能障害の変化を追跡することができます。
患者の状態は時間と共に変化するため、継続的な評価が不可欠です。
SIASは簡便に実施できるため、定期的な評価が容易であり、患者の回復状況を継続的にモニタリングできます。
例えば、リハビリテーションの初期段階と数ヶ月後の評価を比較することで、具体的な進展や課題を明確にすることができます。
これにより、医療スタッフは患者の状態に応じた適切な治療計画を策定し、効果的なリハビリテーションを提供することが可能となります。

SIASは、脳卒中患者の長期的な回復過程を支える重要なツールとして機能します。

これらの目的を達成するために、SIASはベッドサイドでの実施も可能であり、10分程度と短時間で簡便に行えるという特徴があるんだ!
これにより、リハビリセラピストは患者さんの状態を効率的に把握し、適切な治療計画を立てることが可能となるんですね!

使用物品

SIAS(脳卒中の機能障害評価法)の使用物品
SIASを実施する際に必要な物品としては、

  • 評価用紙
  • 打鍵器
  • 握力計
  • メジャー

…などがあげられます。
それぞれ解説します。

評価用紙

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)の評価用紙は、評価結果を記録するための重要なツールです。
この用紙には各項目の評価スコアを記入するための欄が設けられており、評価者が観察した結果を迅速かつ正確に記録できます。
評価用紙を使用することで、評価結果を一目で把握できるようになり、患者の機能状態を体系的に整理できます。
また、評価用紙は過去の評価結果と現在の結果を比較する際にも便利であり、機能障害の変化を追跡するためのデータベースとしても機能します。

さらに、評価用紙に基づいたデータは、医療チーム全体で情報を共有し、統一した治療方針を策定するための基礎資料となります。

打鍵器

打鍵器は、神経反射を評価するために使用されるツールです。
SIASの評価項目の中には、筋緊張や神経反射を測定する項目が含まれており、打鍵器を用いることでこれらの評価が正確に行えます。
具体的には、打鍵器を用いて特定の筋肉や腱を軽く叩き、その反応を観察します。
この反応に基づいて、患者の神経系の機能状態を評価することができます。

打鍵器を使用することで、医療スタッフは神経反射の異常や筋緊張の程度を客観的に評価し、リハビリテーションの効果を判断するための重要な情報を得ることができます。

握力計

握力計は、握力を測定するための装置であり、SIASの評価においても使用されます。
握力の測定は、麻痺側の運動機能を評価する上で重要な要素となります。
握力計を使用することで、患者の握力を定量的に評価し、その結果を評価用紙に記録します。
握力の測定結果は、リハビリテーションの進捗を評価する際にも重要な指標となり、治療の効果を客観的に把握することができます。
また、握力の変化は患者の全体的な筋力や回復状態を反映するため、定期的な測定が推奨されます。

握力計は、簡便かつ正確に握力を測定できるため、臨床現場で広く使用されています。

メジャー

メジャーは、関節の可動域を測定するために使用されるツールです。
SIASの評価項目には、関節可動域の評価も含まれており、メジャーを用いて正確な測定を行います。
具体的には、メジャーを使って関節の角度を測定し、その結果を評価用紙に記録します。
関節可動域の測定は、リハビリテーションの進捗を評価するための重要な要素であり、患者の動作能力や柔軟性を把握するために不可欠です。
メジャーを使用することで、関節の動きを正確に測定し、患者の状態に応じた適切な治療計画を立てることができます。

メジャーは、軽量で持ち運びが容易なため、ベッドサイドでの評価にも適しています。

これらの道具は、特別なものではなく、一般的な医療現場で容易に手に入るものなんだ!
これにより、SIASはベッドサイドで簡便に実施でき、患者さんの状態を効率的に把握することが可能となるんですね!

SIASの評価項目について

SIASの評価項目について
SIASは以下の9種類の機能障害に分類される、22項目から構成されています。

  • 麻痺側運動機能(5項目)
  • 筋緊張(4項目)
  • 感覚障害(4項目)
  • 関節可動域(2項目)
  • 疼痛(1項目)
  • 体幹機能(2項目)
  • 視空間認知(1項目)
  • 言語機能(1項目)
  • 非麻痺側機能(2項目)

また各項目ともに3点or5点満点で評価され、障害の程度が軽い程得点は高くなります。
以下にそれぞれ解説します。

麻痺側運動機能

麻痺側運動機能では…

  • 上肢近位(knee-mouth test)
  • 上肢遠位(finger-function test)
  • 下肢近位(股)(hip-flexion test)
  • 下肢近位(膝)(knee-extension test)
  • 下肢遠位(foot-pat test)

…を評価します。
それぞれさらに深掘りして解説します。

上肢近位(knee-mouth test)

評価方法としては…

  • 座位にて、麻痺側の手を非麻痺側の膝(大腿)上より挙上し、手を口まで運ぶ(肩は90°外転)させる。
  • 膝上まで戻す×3回
  • 肩、肘関節に拘縮が存在する場合は可動域内での運動をもって課題可能と判断する。

…になります。

点数配点とそれぞれの内容ですが…

  • 0点:全く動かない。
  • 1点:肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない。
  • 2点:肩肘の共同運動があるが手部が口に届かない。
  • 3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
  • 4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
  • 5点:健側と変わらず、正常。

…となります。

上肢遠位(finger-function test)

評価方法としては…

  • 手指の分離運動を、母指~小指の順に屈曲、小指~母指の順に伸展する

点数配点とそれぞれの内容ですが…

  • 0点:全く動かない
  • 1点:1A:わずかな動きがある。または集団屈曲可能
  • 1B:集団伸展が可能
  • 1C:分離運動が一部可能
  • 2点: 全指の分離運動可能なるも屈曲伸展が不十分である
  • 3点: 課題可能(全指の分離運動が十分な屈曲伸展を伴って可能)。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
  • 4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり
  • 5点:健側と変わらず、正常

…となります。

下肢近位(股)(hip-flexion test)

評価方法としては…

  • 座位にて股関節を90°より最大屈曲させる。
  • 3回くりかえす

点数配点とそれぞれの内容ですが…

  • 0点:全く動かない
  • 1点:大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
  • 2点:股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
  • 3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
  • 4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり
  • 5点:健側と変わらず、正常

…となります。

下肢近位(膝)(knee-extension test)

評価方法としては…

  • 座位にて膝関節を90°屈曲位から十分伸展(-10°程度まで)させる
  • 3回繰り返す

点数配点とそれぞれの内容ですが…

  • 0点:全く動かない
  • 1点:下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
  • 2点:膝関節の伸展運動あり、足部は床より離れるが、十分ではない
  • 3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
  • 4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり
  • 5点:健側と変わらず、正常

…となります。

下肢遠位(foot-pat test)

評価方法としては…

  • 座位または臥位、座位は介助しても可
  • 踵部を床につけたまま、足部の背屈運動を協調しながら背屈・底屈を3回繰り返し、その後なるべく早く背屈を繰り返す。

点数配点とそれぞれの内容ですが…

  • 0点:全く動かない
  • 1点:わずかな背屈運動があるが前足部は床から離れない
  • 2点:背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない
  • 3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり
  • 4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり
  • 5点:健側と変わらず、正常

…となります。

この項目では麻痺側の上肢近位、上肢遠位、下肢近位(股)、下肢近位(膝)、下肢遠位の運動機能を評価するんだ!
これらの項目は、肩、肘、膝、足の関節の動きや手指の動きを評価しますね!

筋緊張

筋緊張では…

  • 上肢筋緊張(U/E muscle tone)
  • 下肢筋緊張(L/E muscle tone)
  • 上肢健反射 U/E DTR(biceps or triceps)
  • 下肢反射 L/E DTR(膝蓋腱反射:PTR orアキレス腱反射:ATR)

…の4項目があげられます。
これらについても深掘りして解説します。

上肢筋緊張(U/E muscle tone)

評価方法としては、

  • 肘関節を他動的に伸展屈曲させ、筋緊張の状態を評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:上肢の筋緊張が著明に亢進している
  • 1点:1A:上肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している
    1B:他動的筋緊張の低下
  • 2点:上肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している
  • 3点:正常、非麻痺側と対称的

…となります。

下肢筋緊張(L/E muscle tone)

評価方法としては、

  • 膝関節の他動的伸展屈曲により評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:下肢の筋緊張が著明に亢進している
  • 1点:1A:下肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している
    1B:他動的筋緊張の低下
  • 2点:下肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している
  • 3点:正常、非麻痺側と対称的

…となります。

上肢健反射 U/E DTR(biceps or triceps)

評価方法と点数配点は、

  • 0点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が著明に亢進している。あるいは容易にクローヌス(肘、手関節)が誘発される
  • 1点:1A: “上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が中等度(はっきりと)に亢進している
  •     

  • 1B: “上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射がほぼ消失している
  • 2点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が軽度(わずかに)亢進
  • 3点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射とも正常。健側と対称的

…となります。

下肢反射 L/E DTR(膝蓋腱反射:PTR orアキレス腱反射:ATR)

評価方法と点数配点は、

  • 0点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が著明に亢進している。あるいは容易にクローヌス(膝、足)が誘発される
  • 1点:1A:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が中等度(はっきりと)に亢進している。unsustained clonusを認める
      1B:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”がほぼ消失している
  • 2点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が軽度(わずかに)亢進
  • 3点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”とも正常。健側と対称的

…となります。

この項目では上肢と下肢の筋緊張と反射を評価するんだ!
これは、筋肉の張りや反射の反応を評価することで、筋肉の状態を理解するためのものですね!

感覚障害

感覚障害は…

  • 上肢触覚 U/E light touch(手掌)
  • 下肢触覚 L/E light touch(足底)
  • 上肢位置覚 U/E position(母指or示指)
  • 下肢位置覚 L/E position(母趾)

…の4項目があげられます。

上肢触覚 U/E light touch(手掌)

評価方法と点数配点は、

  • 0点:強い皮膚刺激もわからない
  • 1点:重度あるいは中等度低下
  • 2点:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり
  • 3点:正常

…となります。

下肢触覚 L/E light touch(足底)

評価方法と点数配点は、

  • 0点:強い皮膚刺激もわからない
  • 1点:重度あるいは中等度低下
  • 2点:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり
  • 3点:正常

…となります。

上肢位置覚 U/E position(母指or示指)

評価方法としては、
指を他動的に運動させる
点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:全可動域の動きもわからない
  • 1点:全可動域の運動なら方向がわかる
  • 2点:ROMの1割以上の動きなら方向がわかる
  • 3点:ROMの1割未満の動きでも方向がわかる

下肢位置覚 L/E position(母趾)

評価方法としては、
趾を他動的に運動させる

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:全可動域の動きもわからない
  • 1点:全可動域の運動なら方向がわかる
  • 2点:ROMの5割以上の動きなら方向がわかる
  • 3点:ROMの5割未満の動きでも方向がわかる

この項目では上肢と下肢の表在感覚と深部感覚を評価するんだ!
これは、患者さんが触覚や位置感覚をどの程度感じることができるかを評価するためのものですね!

関節可動域

関節可動域では…

  • 上肢関節可動域 U/E ROM
  • 下肢関節可動域 L/E ROM

…の2項目があげられます。

上肢関節可動域 U/E ROM

評価方法としては、

  • 他動的肩関節外転を行う。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:60°以下
  • 1点:90°以下
  • 2点:150°以下
  • 3点:150°以上

下肢関節可動域 L/E ROM

評価方法としては、

  • 膝伸展位にて他動域足関節背屈を行う。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:-10°以下
  • 1点:0°以下
  • 2点:10°以下
  • 3点:10°以上

ここでは上肢と下肢の関節可動域を評価するんだ!
これは、関節がどの程度自由に動くことができるかを評価するためのものですね!

疼痛

疼痛の評価方法と点数配点は、

  • 0点:睡眠を妨げるほどの著しい疼痛
  • 1点:中等度の疼痛
  • 2点:加療を要しない程度の軽度の疼痛
  • 3点:疼痛の問題がない

*脳卒中に由来する疼痛の評価にて行うので、既往としての整形外科的(腰痛など)、内科的(胆石など)疼痛は含めない点が注意。
また過度でない拘縮伸長時のみの痛みも含めない。

ここでは疼痛の有無とその程度を評価するんだ!
これは、患者が痛みを感じているかどうか、そしてその痛みの程度を評価するためのものですね!

体幹機能

体幹機能では…

  • 垂直性
  • 腹筋

…の2項目があげられます。

垂直性 verticality test

評価方法と点数配点は、

  • 0点:座位がとれない。
  • 1点: 静的座位にて側方性の姿勢異常があり、指摘・指示にても修正されず、介助を要する。
  • 2点: 静的座位にて側方性の姿勢異常(傾で15°以上)があるが、指示にてほぼ垂直位に修正・維持可能である。
  • 3点:静的座位は正常。

腹筋 abdominal MMT

評価方法としては、

  • 車椅子または椅子に座り、臀部を前にずらし、体幹を45度後方へ傾け、背もたれによりかかる。
  • 大腿部が水平になるように検者が押さえ、体幹を垂直位まで起き上がらせる。
  • 抵抗を加える場合には、胸骨上部を押さえる点に注意

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:垂直位まで起き上がれない。
  • 1点:抵抗を加えなければ起き上がれる。
  • 2点:軽度の抵抗に抗して起き上がれる。
  • 3点:強い抵抗に抗して起き上がれる。

この項目では垂直性(座位保持能力)と腹筋力を評価するんだ!
これは、患者が自身の体幹をどの程度制御できるかを評価するためのものですね!

視空間認知

評価方法としては、

  • 50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示させる
  • これを2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:15cm以上
  • 1点:5cm以上
  • 2点:3cm以上
  • 3点:3cm未満

ここでは視空間認知の障害を評価するんだ!
これは、患者が視覚的な情報をどの程度理解し、それを空間的な認識に変換できるかを評価するためのものですね!

言語機能

評価方法と点数配点は、

  • 0点:全失語症。まったくコミュニケーションがとれない
  • 1点:1A: 重度感覚性失語症(重度混合性失語症も含む)
       1B:重度運動性失語症
  • 2点:軽度失語症
  • 3点:失語症なし

*失語症に関して評価する。構音障害はこの項目には含めない。

この項目では言語の理解と発話能力を評価するんだ!
これは、患者が言葉を理解し、それを使ってコミュニケーションを取ることができるかを評価するためのものですね!

非麻痺側機能

健側機能は…

  • 握力
  • 健側大腿四頭筋力

…の2項目があげられます。

握力 gripstrength

評価方法としては、

  • 座位で握力計の握り幅を約5cmにして計測する。
  • その際非麻痺側の具体的kg数を記載すること

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:握力0kg
  • 1点:握力10kg以下
  • 2点:握力10~20kg
  • 3点:握力25kg以上

健側大腿四頭筋力 quadriceps MMT

評価方法としては、

  • 座位における健側膝伸展筋力を評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

  • 0点:重力に抗しない
  • 1点:中等度に筋力低下
  • 2点:わずかな筋力低下
  • 3点:正常

ここでは非麻痺側の上肢と下肢の機能を評価するんだ!
これは、非麻痺側の肢体がどの程度正常に機能しているかを評価するためのものですね!

SIASのカットオフ値について

SIASのカットオフ値
SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)は、脳卒中による機能障害を評価するためのスコアリングシステムで、その得点範囲は0から76点です。
最高点である76点に近いほど、患者の機能障害は軽度であると判断されます。
一方、最低点である0点に近い場合、患者の機能障害は重度であると評価されます。

SIASは脳卒中のリハビリテーションにおいての予後予測としても活用される点から、その点数によって歩行が自立できるか否か先行研究も多くされています。
しかし、論文によってそのカットオフ値には変動があり、明確なカットオフ値は設定されていないというのが事実のようです。

参考値の一つとしてあげるならば以下のような値が参考になります。

SIAS項目 カットオフ値
SIAS総点 59点
SIAS-LE(運動機能・下肢) 9点
SIAS Trunk(体幹機能) 3点
SIAS-S(感覚機能) 9点

*参考論文:脳卒中患者の退院時歩行自立のための入棟時 SIAS カットオフ値の算出

これらのカットオフ値は、患者のリハビリテーションの進行状況を評価し、治療計画を立てる際の参考となるんだ!
ただし、これらの値はあくまで一般的な目安であり、個々の患者の状態や進行度により異なることがありますね!

SIASのエビデンスグレードについて

SIASのエビデンスグレード
日本理学療法士協会が発表している『推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類』によれば、SIASは推奨グレードAであり、信頼性、妥当性のあるものとして決定されており、Motricity IndexBrunnstrom stageNIHSS よりも反応性がよいともされています。

脳卒中の発症時より、その機能を点数化し予後予測を立てることは、患者さんの生活再建、社会参加支援まで行う作業療法士にとっては非常に必要なことだろうね!
ある程度の予測を立てたることで、早期の段階でその患者さんに必要な環境設定や代替手段の“準備”をしておくことも重要なんだと思います!

SIASの注意点

SIASを使用する際の注意点は以下の通りです。

  • 評価の一貫性
  • 評価の繰り返し
  • 個々の患者の状態の考慮
  • 評価項目の理解
  • 評価の時間

それぞれ解説します。

評価の一貫性

SIAS(脳卒中の機能障害評価法)は、患者の機能障害についての共通言語を提供するため、評価の一貫性が非常に重要です。
評価者間で評価項目や評価方法が一致していない場合、評価結果にばらつきが生じ、信頼性が低下します。
したがって、評価者全員が同じ基準と手順に従って評価を行うことが求められます。
これを確保するためには、評価者への適切なトレーニングと教育が必要です。

一貫した評価により、患者の状態を正確に把握し、適切な治療計画を立てることが可能となります。

評価の繰り返し

SIASは、機能障害の変化を捉えるために定期的な評価が推奨されます。
患者の状態は時間と共に変化するため、定期的な評価を行うことで、機能障害の改善や悪化を継続的にモニタリングできます。
これにより、治療の効果を正確に把握し、リハビリテーションプランを適宜調整することができます。
繰り返し評価を行うことで、治療の進捗を客観的に評価し、最適な介入を提供することが可能です。

評価の頻度やタイミングは、患者の状態やリハビリテーションの目標に応じて設定されるべきです。

個々の患者の状態の考慮

SIASの評価結果は、個々の患者の状態や進行度に応じて異なることがあります。
したがって、評価結果を解釈する際には、患者の個別の状況を十分に考慮することが重要です。
例えば、同じ評価スコアであっても、患者の背景や具体的な症状により、必要な治療や介入が異なる場合があります。
専門家の判断が必要となるため、具体的な評価と治療計画の策定は、経験豊富なセラピストに任せるべきです。

このように、患者の個別性を重視した評価と治療が求められます。

評価項目の理解

SIASは22の評価項目から構成されており、各項目は0から3または0から5の範囲で点数化されます。
評価者は各評価項目の意味と評価基準を正確に理解することが重要です。
評価項目の誤解や誤った評価基準の適用は、評価結果の信頼性を損なう可能性があります。
評価者が各項目の内容を深く理解し、一貫した基準に従って評価を行うことで、正確な評価結果を得ることができます。

定期的なトレーニングや教育を通じて、評価者の知識とスキルを維持・向上させることが重要です。

評価の時間

SIASは約10分で評価が可能なため、評価の時間を適切に管理することが重要です。
評価時間の短縮は、臨床現場での効率的な作業を支える要素の一つです。
しかし、短時間で正確な評価を行うためには、評価者が評価手順を熟知している必要があります。
時間を適切に管理することで、複数の患者の評価を迅速に行うことができ、リハビリテーションの進行を円滑に進めることができます。

評価の効率性と正確性を両立させるためには、日常的な練習と評価手順の確認が重要です。

これらの注意点を理解し、適切に評価を行うことで、SIASは脳卒中患者の機能障害の評価に非常に有用なツールとなるんだ!
患者さんに負担をかけないようにする配慮も必要でしょうね!

関連文献

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