三角筋(さんかくきん)- 起始・停止・支配神経・血液供給・主な働きや作用

三角筋(さんかくきん)- 起始・停止・支配神経・血液供給・主な働きや作用 解剖学

三角筋は肩の運動と安定性を司る主要筋肉で、腕の様々な動きを支援し、日常生活やスポーツに不可欠です。
本記事ではこの三角筋について解説します。

三角筋の起始・停止

起始 前部(鎖骨部):鎖骨外側1/3
中部(肩峰部):肩峰
後部(肩甲棘):肩甲棘
停止 上腕骨の三角筋粗面

三角筋の起始・停止
三角筋の起始ですが、次の3つからなります。

  • 前部(鎖骨部):鎖骨外側1/3の上面と前縁
  • 中部(肩峰部):肩甲骨の肩峰の外側縁と上面
  • 後部(肩甲棘):肩甲棘の外側1/3

起始部は上記の3つが全体として三角形をなして外方へ走り、肩関節を被って下方に向かいます。
それぞれの粗大な筋束が集まり、上腕骨の中央外側面にある三角筋粗面に付着(停止)します。

三角筋は起始部が非常に広く、停止部が狭いことから三角形を形成する筋なんだ!
鎖骨と肩甲骨を起始としているんですね!

三角筋の位置

三角筋は肩の一番表面にある筋肉で、その下には広頸筋と皮膚しかありません。
そのため三角筋は簡単に観察や触診ができます。

三角筋は他のいくつかの筋肉構造の上に存在しています。
ローテーターカフの筋肉(上棘筋、下棘筋、小円筋、肩甲下筋)、大胸筋と小胸筋の腱、さらには腕根腱、上腕二頭筋の両頭、そして上腕三頭筋の長頭と外側頭の腱もその上にあります。
また、三角筋は肩の領域の烏口突起や近位上腕骨などの骨構造、肩峰棘下靭帯、肩甲下滑液包、さらには肩の神経血管構造(腋神経と前後円筋動脈)を覆っています。

三角筋は触診しやすい筋肉でも有名だね!
また肩の重要な構造を覆って保護するように位置しているんですね!

三角筋の神経支配

神経支配 腋窩神経(C5、C6)

三角筋の神経支配
三角筋は、腕神経叢から出る上腕部に走行する腋窩神経(C5、C6) によって支配されます。

腋窩神経は、主に三角筋と小円筋への運動神経支配を提供しているんだ!
また、三角筋の下部を覆う皮膚への感覚神経支配も行っているんですね!

三角筋の血液供給

血液供給 胸肩峰動脈の三角筋および肩峰枝、肩甲下動脈、前上腕回旋動脈および後上腕回旋動脈、深上腕動脈の三角筋枝

三角筋は大きいことから、複数の供給源から血管供給を受けます。
主には…

  • 胸肩峰動脈
  • 腋窩動脈枝
  • 肩甲下動脈
  • 上腕骨前回旋動脈
  • 上腕骨後回旋動脈
  • 深上腕動脈の三角筋枝

…が三角筋への血液供給動脈としてあげられます。
それぞれ解説します。

胸肩峰動脈(Thoracoacromial artery)

この動脈は腋窩動脈から分岐し、肩峰枝および三角筋枝を通じて三角筋へ血液を供給します。
肩の表面部分に対する主要な血液供給源の一つです。

腋窩動脈枝(Branches of the axillary artery)

腋窩動脈は多くの小枝を持ち、これらが直接または間接的に三角筋に血液を供給します。

肩甲下動脈(Subscapular artery)

これも腋窩動脈の大きな枝の一つで、三角筋の背面に血液を供給する役割を果たします。

上腕骨前回旋動脈(Anterior circumflex humeral artery)

上腕の前部を回り込む形で、三角筋の前面および側面に血液を供給します。

上腕骨後回旋動脈(Posterior circumflex humeral artery)

上腕の後部を回り込む形で、三角筋の後面に血液を供給します。
この動脈は特に重要で、肩関節の周囲に広範な血流を提供します。

深上腕動脈(Deep brachial artery)の三角筋枝

深上腕動脈は上腕動脈の主要な枝であり、三角筋枝を通じて三角筋に直接血液を供給します。
この動脈は特に上腕部に深く位置する筋肉への血液供給に重要ですが、三角筋へも重要な役割を果たします。

三角筋のように大きな筋肉ほど、複数の血管から血液や栄養供給を受けるんだ!
効果的、かつ効率的な構造になっているんですね!

三角筋の機能・作用・働き

機能 鎖骨部:腕の屈曲と内旋
肩峰部:最初の15°を超えた腕の外転
脊椎部:腕の伸展と外旋。

三角筋は主に…

  • 肩関節の外転機能
  • 肩甲上腕関節の安定化
  • 腕の屈曲と内旋
  • 腕の伸展と外旋

…の機能を担います。
それぞれ解説します。

外転機能

三角筋(特に肩峰部)は肩の主な外転筋です。
これは、腕が15度以上外転された後の動きを担います。
外転の初期段階は棘上筋が引き起こし、その後で三角筋が引き継ぎます。
この協調動作により、腕はさらに外に移動することができます。
三角筋は肩の動きをスムーズにし、特定の角度からの腕の持ち上げに必要な力を提供することで、日常生活の動作やスポーツ活動において重要な役割を果たします。

この機能により、肩関節は幅広い動きを実現し、物を持ち上げたり、手を伸ばしたりする際の基盤となります。

肩甲上腕関節の安定化

三角筋は、回旋腱板の筋肉と共に肩甲上腕関節の安定化に貢献します。
腕が内転した状態で重い物を持つ時、三角筋は静的収縮を行い、肩関節が下方に変位するのを防ぎます。
この収縮は、関節の不意の動きや負傷から肩を守り、肩の健康と機能を維持します。
また、腕を下げる動作や内転時には、三角筋は偏心性収縮を行い、動きを制御し、滑らかにすることができます。

このように、三角筋は肩関節の動きを安定させ、支えるために不可欠です。

腕の屈曲と内旋

三角筋の前部線維は、大胸筋と協力して腕の屈曲を促します。
これは、歩行や走行時に特に顕著です。
また、この線維群は上腕骨を内側に(内旋させる)動かす際にも活動します。
この機能は、腕の前方への移動や、物を引き寄せる動作など、前方向への力を必要とする多くの日常活動に役立ちます。

三角筋のこの部分は、特に前方への動きや持ち上げにおいて、腕の動きを支援し、強化します。

腕の伸展と外旋

三角筋の後部線維は、広背筋と連携して腕の伸展を助けます。
これは、特に歩行中に重要です。
さらに、この線維群は上腕骨の外旋を補助します。
三角筋の後部線維の強化は、姿勢不良による肩の内旋傾向を補正し、肩関節の健康を維持する上で重要です。

この機能は、肩と腕の運動能力を高め、特に背面への動作や物を押し離す際の力を強化します。

脳卒中による片麻痺の亜脱臼にはこの三角筋が原因の一つともいわれているね!
肩甲上腕関節の安定化に働く重要な筋のひとつですからね!

参考

ヒトの三角筋の動脈分布について

関連文献

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