義務化された“合理的配慮”を知ることは、自分たちにとってもメリットがあるんです。

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“合理的配慮”ってご存知でしょうか?
これは法律で義務化されていることですが、調べていくと本当にごく当たり前なことだってわかります。
そしてこの合理的配慮の具体例を知ることは、自分たちにとっても非常にメリットが多いこともわかりました。

今回はこの「合理的配慮」についての概念や原理原則、具体例といったものについて解説します。

合理的配慮とは?

合理的配慮(ごうりてきはいりょ)とは、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のことである。
引用:wikipedia

定義としては、障害者権利条約第2条にあるのが一般的のようですが、もともとはリハビリテーション法の施行規制(1977年)での文言が最初とされています。
その際の目的としては「障害者に対する差別を防止する意図」として用いられたようです。

その後“障害を持つアメリカ法”で明確化され、さらに障害者権利条約で採用され一般的に浸透していきました。
日本では2016年4月に施行された『障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)』により、この合理的配慮をできる限り提供することが行政・学校・企業などの事業者の義務として求められるようになりました。

合理的配慮の具体例

ではこの合理駅配慮の具体例としてはどのようなものになるのでしょうか?
結論から言えば、次の4点が大枠の例としてあげられます。

  • 読み書きへの配慮
  • 移動への配慮
  • 指示理解への配慮
  • 休憩への配慮

以下にそれぞれ解説します。

読み書きへの配慮

文字の読み書きが困難な場合、その代替手段を提供する配慮が必要です。
手段の例としてはタブレットや音声読み上げソフトなどがあげられます。

移動への配慮

肢体不自由によって自力で自由に移動が困難な場所にスロープやエレベーターを設置するといった配慮が必要になります。

指示理解への配慮

複雑な指示理解が困難な場合、指示の出し方に工夫が求められます。
例としては1つずつ分け噛み砕いた表現で指示をする、イラストを利用する…などがあげられます。

休憩への配慮

個人によっては疲れやすかったり、緊張しやすいためこまめに休憩が必要な場合があります。
そのため休憩スペースを設けたり、時間の調整を行ったりすることが必要になります。

合理的配慮は義務

これらの配慮は前述したように『障害者差別解消法』によって義務化されました。
その義務を果たすのは法律上は行政・学校・企業などの事業者を対象としていますが、「すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげること」を目的としている点を考えれば、個々人にも求められる義務になると考えられます。

合理的配慮を言葉から考える

ではそもそもなぜ「合理的配慮」という文言になるのでしょうか?
少し分析的にこの文言を考えてみます。

“合理的”って?

“合理的”の意味としては

1.道理や論理にかなっているさま。
2.無駄なく能率的であるさま。
引用:goo辞書

とあります。
ちなみに“道理”とは、

1.物事の正しいすじみち。また、人として行うべき正しい道。ことわり。
2.すじが通っていること。正論であること。また、そのさま。
引用:goo辞書

となっています。

“配慮”って?

では“配慮”ってどのような意味になるのでしょうか?

心をくばること。心づかい。
引用:goo辞書

と表現されています。

つまり、“合理的配慮”とは…

人として行うべき正しい心配りこと

という解釈がぴったり当てはまるのではないでしょうか?

合理的配慮を英語では?

合理的配慮は英語では“Reasonable accommodation”となります。
Reasonableは“合理的”としての意味の他に“当たり前の”という意味も含んでいます。

accommodationは“配慮”という意味解釈がされていますが、実際はそれよりも具体的な意味を持つ“便宜・助け”という解釈がわかりやすいです。
ただ本来は“収容・適応・融通”といった意味になります。

そうなると、“Reasonable accommodation”は

  • 当たり前の助け
  • 当然のように行われる融通

…という解釈ができます。

「人として当たり前のように行われるべき、融通さを含んだ心配り」というイメージ解釈でしょうね!

合理的配慮は社会生活に必要な要素

この合理的配慮を考えると、法律の上では障害者を対象としていますが、社会生活を送る上では当たり前のことなんですよね!

目が不自由な人が道に迷って困っているなら、声をかけ道を教えること。
手が不自由な人が店のドアを開けられず困っているなら、そっと開けるのを手伝うこと。
妊婦の方が電車で座れず立っているなら、席を譲ってあげる…。
デパートで迷子になって泣いている小さな子供を、迷子センターに連れて行ってあげる…なんてことだって、広義では合理的配慮ではないでしょうか?

個人的には「人として当然」のことを法で定めないといけないという点で、なんだか寂しい気持ちすら感じてしまいますけどね。

合理的配慮は“心のユニバーサルデザイン”という解釈

ユニバーサルデザインは障害の有無関係なしにすべての人が“初めから”使いやすくなるようにしておくことですが、これって合理的配慮の原理原則とリンクするのではないでしょうか?
バリアフリーのように“後付けの配慮”ではなく、始めから提供できる配慮ということが理想なのかもしれません。

私見ですが、“合理的配慮=心のユニバーサルデザイン”であると同時に、“ユニバーサルデザイン=環境における合理的配慮”というような相関性があるのかな?なんて解釈もしています。

合理的配慮等具体例データ集について

内閣府がウェブ上で公開している合理的配慮等具体例データ集』には、障害の種別からと生活場面からの2つの方向から、その合理的配慮の具体例を公表しています。
“心のユニバーサルデザイン”を考えるうえで非常に参考になるのでチェックしておくといいかもしれません。

まとめ

今回、“合理的配慮”という文言を分析的かつ私見も交えながら解説しました。
改めて考えると、これって至って当たり前のことなんですよね。

ただ対象が障害を持つ人であることから、その障害の種類や程度によって特性が様々なこと。
そして多種多様な障害特性に対しての具体的な配慮の方法を国や行政が公式に提示できるという点では、この“人として当たり前なこと”を法律で義務化するメリットがあるのかもしれません。

もっと生活しやすい社会にするには、この合理的配慮という概念を広く認知させることも必要なのかもしれませんね!

【参考記事】
合理的配慮とは?考え方と具体例、障害者・事業者の権利・義務関係、合意形成プロセスについて
障害者差別解消法の施行によって、障害者は配慮される側だけではなく、配慮する側にもなる
障害者差別解消法リーフレット

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