痙縮と固縮、拘縮は似ているようですがそれぞれ定義も特徴も異なります。
本記事ではこれらの違いについて解説します。
痙縮(Spasticity)
まずは”痙縮(Spasticity)”における…
- 定義
- 生理学的特徴
- 筋電図の特徴
…について解説します。
定義
痙縮は、筋緊張の亢進状態であり、伸張反射が亢進している状態…と定義されます。
これは一般的に中枢神経系の障害による上位中枢の抑制解放現象から生じ、脳性麻痺、脳血管障害、脊髄損傷などの錐体路障害の兆候であり、上位運動ニューロン障害を示唆します。
生理学的特徴
痙縮の生理学的特徴ですが、基本的に休息時は筋は弛緩していますが、急速な他動的伸張に抵抗を示すことが多いようです。
伸張が最大になると、筋緊張が急激に減少し、「折りたたみナイフ現象」が見られます。
筋電図の特徴
痙縮を筋電図で測定すると伸張中に筋放電が増強し、一定の筋長を維持しても筋放電が持続することが観察されます。
伸張を加えても筋の放電量は変わらず、伸張速度の変化に反応しないのが特徴ともいえます。
固縮(Rigidity)
では固縮(Rigidity)とはどんな説明になるのでしょうか?
定義
固縮は、錐体外路障害に起因する状態で、他動的伸張に対して持続的な抵抗があり、伸張速度によらず抵抗が一定であると定義されます。
例えば、パーキンソン病やパーキンソン症候群などが該当します。
生理学的特徴
固縮の生理学的特徴ですが、伸張に対して持続的な抵抗があり、伸張速度の変化に反応しないということがあげられます。
関節を屈曲・伸展する際に一様な抵抗を示す「鉛管現象」やリズミカルな抵抗を感じる「歯車様現象」が見られます。
筋電図の特徴
固縮を筋電図で測定すると、反射性インパルスが増強し、伸張を中止しても一定の筋長を維持しても筋放電が持続するということが観察されます。
拘縮(Contracture)
最後に拘縮(Contracture)についてです。
定義
拘縮は、関節周囲の軟部組織の異常な収縮によって引き起こされる症状と定義されます。
通常は廃用症候群などで発生することが多いようです。
特徴
拘縮の特徴ですが、関節の可動域が制限され、関節が固定されることで生じます。
主に長期の不動状態や制限された動きによって発生します。
痙縮と固縮、拘縮の違い
では、これらのことを踏まえたうえで、痙縮と固縮、拘縮の違いについて表にまとめてみます。
特徴 | 痙縮 (Spasticity) | 固縮 (Rigidity) | 拘縮 (Contracture) |
---|---|---|---|
定義 | 筋緊張の亢進状態で、伸張反射が亢進 | 他動的伸張に対して持続的な抵抗があり、一定 | 関節周囲の軟部組織の異常な収縮 |
生理学的特徴 |
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筋電図の特徴 |
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なし |
痙縮、固縮は徒手検査だけでは難しい?
痙縮と固縮は、徒手検査だけで区分が難しいことがあります。
痙縮は、筋肉が収縮し、カチカチになった状態が続く症状です。
固縮は、関節を他の人の力により動かした時に抵抗を感じる状態で、関節の癒着によって起こることがあります。
しかし、痙縮と固縮は同時に存在することがあり、徒手検査だけでは区分が難しいことがあります。
このような場合、痙縮と固縮を合わせた「固・痙縮 (rigido-spasticity)」と呼ばれる状態になります。
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