CALMSモデルは、吃音のある子どもの評価に多次元的アプローチを採用し、個別化された支援計画の立案を目指す枠組みです。
本記事ではこのCALMSについて解説します。
CALMSとは?
CALMSは、吃音のある学齢期の子どもを対象とした多次元でデータに基づいた評価尺度です。
このモデルは、吃音の言語症状だけでなく、全般的な言語能力、口腔運動能力、吃音に対する知識・認識、心理・感情、社会性・社交性など、吃音に関わる様々な要因を多面的・包括的に評価し、その結果を臨床に生かすことを目的としています。
吃音とは?
吃音は、流暢性が乱れることによって特徴づけられる言語障害の一種です。
この障害は、言葉の流れが不自然に中断したり、音や音節を繰り返したり、音を延ばしたりすることで表れます。
吃音は個人によって発生の頻度や程度が異なり、緊張やストレス、特定の社会的状況では悪化することが一般的です。
CALMSモデルとは?
CALMSモデルは、吃音のある学齢期の子どもたちの評価と支援に向けて開発された多次元的アプローチです。
このモデルは、吃音に関連するさまざまな要因を包括的に評価し、個々の子どもに合わせた支援計画を立てるための枠組みを提供します。
CALMSは次の5つの構成要素から成り立っています。
- Cognitive (認知・知識面)
- Affective (感情面)
- Linguistic (言語能力面)
- Motor (運動能力面)
- Social (社会性・社交性面)
以下にそれぞれ解説します。
Cognitive (認知・知識面)
吃音に関する子ども自身の知識や認識、理解の深さを評価します。
これには、自身の吃音についてどれだけ知っているか、吃音がどのように生じるかについての認識が含まれます。
Affective (感情面)
吃音に対する子どもの感情や態度、自己評価を評価します。
これには、不安や恥、自己受容の度合いなどが含まれます。
Linguistic (言語能力面)
全般的な言語能力を評価します。
言語の理解と使用能力、語彙や文法構造へのアクセス、言語の複雑さなどが評価の対象となります。
Motor (運動能力面)
発話時の感覚運動制御能力を評価します。
ここでは、発話の流暢さを支える口腔運動能力や発声機構のコントロールが重視されます。
Social (社会性・社交性面)
社会的な状況やコミュニケーションの文脈における子どもの能力を評価します。
これには、会話の場面や聞き手のタイプによる吃音の変化、対人関係でのコミュニケーション能力などが含まれます。
CALMSの特徴について
CALMSモデルの特徴は、吃音のある学齢期の子どもを評価する際に、単に言語の流暢さだけでなく、吃音に関わる複数の側面を総合的に考慮する点にあります。
主な特徴として…
- 多次元的評価
- 個々のニーズに対応
- 段階評価システム
- 家族への支援
- 臨床実践への応用
…があげられます。
以下にそれぞれ解説します。
多次元的評価
CALMSは、吃音に関連する5つの主要な構成要素(認知・知識面、感情面、言語能力面、運動能力面、社会性・社交性面)を網羅しています。
これにより、吃音が子どもの日常生活に与える影響を多角的に理解することができます。
個々のニーズに対応
各構成要素を詳細に評価することで、吃音のある子ども一人ひとりの得意な面と苦手な面を明らかにし、その情報をもとに個別化された支援計画を立てることができます。
段階評価システム
各構成要素の下位項目(合計23項目)について、1から5までの段階評価を行います。
この評価は、子どものパフォーマンスや能力に関する懸念の程度に基づきます。
このシステムにより、臨床家は子どもの吃音のプロフィールをより正確に把握し、臨床計画を立案しやすくなります。
家族への支援
CALMSモデルは、臨床家が子どもの吃音に対する包括的な理解を深め、効果的な介入計画を立案するためのガイドラインを提供します。
さらに、家族や教育関係者とのコミュニケーションを促進し、子どもの支援体制の構築をサポートします。
臨床実践への応用
CALMSモデルは、吃音の評価だけでなく、その結果を臨床実践にどのように活かすかにも焦点を当てています。
吃音のある子どもが直面する具体的な課題に対する介入の方向性を提案し、実践的な指導策を提供します。